大阪公立大学で保管されていた「毒物」がなくなっていた事件で、警察は28日、「毒物」を盗んだ疑いで卒業生の男を逮捕した。男は「父親を殺害する目的で盗んだ」と話している。

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■約0.3グラムで成人がしに至る“青酸カリ”が大学から盗まれた 犯人は卒業生の男

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「青酸カリ」。
成人が、約0.3グラムで死に至る「毒物」だ。

大阪公立大学では5月、その「青酸カリ」と「青酸ソーダ」がなくなっていることが分かっていた。その量、合わせて50グラム。約160人分の致死量に相当する。

そして28日、警察は「青酸ソーダ」を盗んだ疑いで、滋賀県甲賀市の男(30)を逮捕。

警察によると、製薬会社に務めている男は、大阪公立大学の大学院をことし3月に修了したという。

大阪市 横山栄幸市長:使ってないものを長きにわたって放置して、確認していなかったというのは、ずさんな管理の面があったかなと思う。劇物だから万が一のことを考えると、本当に恐ろしい事態に発展しかねない。色んなところで今一度注意して、こういったことが起きないようにしないといけない。

男は一体、どうやって「毒物」を盗んだのか…。

大学によると、毒物は鍵付きの保管庫で保管され、特定の教員や学生のみが使用を許可されている。

警察によると男は保管庫を開けられる立場の大学院生だった、去年8月、「青酸ソーダ」が入ったビンからスプーンで2杯分を盗み、袋に入れて持ち帰ったという。

毒薬の存在が最後に確認されたのは、年に1回の棚卸し作業が行われた、去年6月。

大学が紛失に気づいたのは、ことしの棚卸しが行われた5月に入ってからだった。

しかし、警察によると、男が「自宅に持ち帰った」と話すのは、当時まだ大学院生だった去年8月のこと。紛失に気づくのに、約9カ月かかった。

記者リポート:警察は27日、自宅や実家などの関係先を捜索しましたが、いまだに発見には至っていないということです。

 調べに対し、男は「父親を殺害しようと思ったけど、思いとどまってやめた。使わなかったので捨てました」などと話しているということで、父親は、無事であることが確認されている。

大阪公立大学は27日、再発防止策として、「今後は、保管庫と鍵は責任者の教員が管理する」などと発表している。

■紛失した“毒物”は「青酸ソーダ」、「青酸カリ」の2種類 どちらも「捨てた」と男は供述

紛失した「毒物」の行方はどうなっているのだろうか。大阪府警で取材している泉谷記者に伝えてもらう。

泉谷賢一記者リポート:今回、大阪公立大学が紛失したと発表したのは、『青酸ソーダ』と『青酸カリ』の2種類の毒物です。警察によるとまず『青酸ソーダ』について、男は大阪公立大学大学院に在学していた去年8月、研究室で『青酸ソーダ』が入ったビンからスプーンで小さじ2杯分を盗み、袋に入れて持ち帰ったということです。動機については、『父親に就職のことでいろいろ言われるのが嫌だった。父親を殺害するため』などと話しているということですが、父親の殺害は『思いとどまってやめた』と話し、使わなかった『青酸ソーダは捨てた』ということです。しかし27日、警察が男の自宅や実家などの関係先を捜索しましたが『青酸ソーダ』は発見されておらず、行方が分からない状態です。

もう一方の「青酸カリ」については、行方は分かっているのだろうか?

泉谷賢一記者リポート:『青酸カリ』についても、大阪公立大学は紛失したと発表していますが、逮捕された男は『青酸カリ』については持ち帰っておらず、研究室内で捨てたと話していて、こちらについても、まだ発見されていません。警察は、いつ・どこで捨てたかなど、男の供述の裏付け捜査を急いでいます。

■「保管場所」「管理体制」「保管期間」で再発防止 一方で人員・予算不足も懸念

大阪公立大学では今回の件を受け、再発防止策をまとめた。

・これまでは、研究などでよく使う塩酸などの劇物と、毒性が高い青酸ソーダなどを同じ保管庫で管理していましたが、今後は、「毒物」と「劇物」は別々の保管庫で管理。

・登録していれば学生1人でも、毒物を取り出せる状態だったものを、鍵の管理や開け閉めを原則、専門知識のある教員が行う。

・毒物の保管期間に関して、これまで長期間使っていない毒物の廃棄する期間があいまいだったのを、3年以上使っていない毒物は原則廃棄処分にする。

毒物、劇物の管理のあり方について、大阪大学大学院の安田洋祐教授はこのように話す。

大阪大学大学院 安田洋祐教授:僕自身、分野は違いますが、大学で教えていて、皆さんひょっとしたらちょっとあんまり意識してないかもしれませんが、大学の学部生(大学生)と大学院生はだいぶ性質が違っていて、大学院生はかなり研究者に近いです。教授や講師・助教の人と近い立場にいると。したがって、大学院生がこういったところにアクセスしにくくするという対策を取るとはいえ、教員から鍵を預かって大学院生が取りに行くというシチュエーションも想像はできます。それを一切なくすというのは、あんまり現実的じゃないかもしれない。ある程度、性善説に基づいて大学の管理体制は成立しているので、このような形で管理を徹底したいのであれば、人員とか予算を増やさないと、ちょっと現実問題難しいのではないかと感じます。

今後の捜査のポイントは?

関西テレビ 神崎博報道デスク:いまの所、容疑者の供述頼みというか、それしかない状態で何も客観的な証拠がないので、まずこの『捨てた』と言われている、毒物をまず見つけることと、それ以外でも何らかの客観的な証拠がないと、今後、起訴や裁判を維持して行く上でそういったものが必要となってくるので、警察がその客観的なものをどのように見つけるのかが1つポイントになると思います。

捜査の進展が待たれる。

(関西テレビ「newsランナー」2024年5月28日放送)

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