17日夜に発生した最大震度6弱の地震は、南海トラフ地震の想定震源域で起きた。今回は巨大地震の可能性が急激に高まっている状況ではないとされているが、もし今後、巨大地震の危機が迫ってきたら、わたしたちはどのように行動すればいいのか。

コンクリートがゆがむように揺れる橋に、名古屋城から真っ逆さまに落下する金のシャチホコ。内閣府が作成した、南海トラフ巨大地震のシミュレーション映像には甚大な被害の様子がシミュレートされている。

昨夜遅く、四国地方で発生した震度6弱の地震の震源地は、南海トラフ地震で想定される震源域内だ。ただし、気象庁は地震のメカニズムが違うことなどから、「南海トラフ地震が起きる可能性が、急激に高まったとは考えにくい」との認識を示している。

その一方で、地震を観測した地域の多くの住民は、「最初に震度4くらいかなっていう揺れが来て、そのあと一気に強い揺れが来て、ぐらぐらって来て南海トラフがきたのかなって思いました」、「南海トラフがそろそろ来るんじゃないか。ちょっと怖いですよね」と話す。

多くの住民が、南海トラフ地震を強く意識する地震となったのは確かだ。

実際に南海トラフ地震が起きた場合、どれほど大きな被害が出るのか。内閣府はCGを使用した映像で、詳細に被災予想を示している。

南海トラフ地震では、倒壊や焼失する建物は最大で240万棟近くとなり、家屋の倒壊などにより閉じ込められてしまい、早期の避難が困難になることが想定されている。

死者数は、最悪のケースで、東日本大震災の17倍に相当する32万3000人にのぼるとされている。それだけではない。

南海トラフ巨大地震では、震源域に近い中部圏や近畿圏、さらには離れた首都圏でも長周期地震動が強く発生すると推計されていて、超高層ビルの上層階では固定されていない多くの家具が転倒し、キャスター付きの家具は、大きく移動するなど危険な凶器となることが想定されている。

首都圏でもビルやマンションなどが大きな揺れに見舞われるなど、「超広域にわたる被害」が出ると想定されている。加えて、深刻なのが、甚大な被害が想定される交通インフラへの影響だ。実際に、きのう地震でも、愛媛・大洲市の国道に土砂や岩が散乱していた。愛媛県や高知県などで落石や土砂崩れが発生していたが、南海トラフ地震では、こうした道路への被害が、4万か所にも及ぶとみられている。

愛媛県今治市では、地震で列車が緊急停止し、乗客は深夜の車内での待機を余儀なくされた。もし電車の走行中に、南海トラフ地震が発生した場合、突然の激しい揺れのために、緊急停止をする前に脱線する恐れもある。

これまでの地震とは「桁違い」の被害が想定される南海トラフ巨大地震。中でも、最も警戒すべきは「津波」だ。津波による死者だけでも最悪23万人に達すると予測されている。

津波による死者は、地震全体の3分の2にも及ぶとみられていて、その大きな要因となるのが、津波の到達までの早さ。
南海トラフ巨大地震では震源域が陸に近いため、津波発生から到達までの時間が短いことも特徴。東日本大震災では最大波の到達が最短でも25分だったのに対し、南海トラフ巨大地震の場合は、数分での到達が想定される。

こうした南海トラフ地震による経済的被害は、215兆円にものぼると試算されている。