逆転無罪の判決です。2015年、長野県佐久市で中学生の男子生徒が車にはねられて死亡した事故。「ひき逃げ」の罪に問われた被告の控訴審判決が東京高裁で開かれ、長野地裁の一審の判決を破棄し、無罪を言い渡しました。

■長野地裁 懲役6カ月の実刑判決

2015年3月、佐久市の横断歩道で当時中学3年生の和田樹生さんが車にはねられ死亡しました。

運転していた御代田町の会社員・池田忠正被告はすぐに救護しなかったとして、救護義務違反・「ひき逃げ」の罪に問われ、2022年11月、長野地裁が懲役6カ月の実刑判決を言い渡しました。

■被告側が控訴「無罪」主張

被告は事故を起こした後、飲酒運転を隠そうと近くのコンビニ店で口臭防止剤を買っていました。

被告側はすぐに戻り救護したとし、「ひき逃げに当たらない」と主張していましたが、長野地裁は「飲酒運転の発覚を回避しようとした行為は救護とは対極にある」としました。

判決を不服として被告側が控訴。あらためて無罪を主張していました。

■東京高裁「ひき逃げには当たらない」

28日、東京高裁で開かれた控訴審判決。

田村裁判長は「被告がコンビニで口臭防止剤を買って戻るまでの時間は1分余りで、すぐに救護している」「飲酒運転の発覚を免れようとする意志と救護しようとする意志は両立する」とし、「ひき逃げ」には当たらないとしました。

そして、一審の判決を破棄し、被告に無罪を言い渡しました。


■母親「樹生にかける言葉ない」

この事故をめぐっては和田さんの両親が独自で証拠を集めたり4万筆以上の署名を集めたりしてきて検察に「ひき逃げ」での起訴を求めてきた経過があります。

判決後、和田さんの両親はー。

父・和田善光さん:
「救護義務違反(ひき逃げ)に当たらないということは考えられません。なぜわれわれの思いというものが司法に届かなかったのか」

母・和田真理さん:
「被害者の生命や体の保護を全く無視した判決。最低の判決です。樹生にかける言葉が見つからないです。こんな国に産んでごめんねとしか言えないです」

一方、東京高等検察庁次席検事は「検察官の主張が認められず、第一審判決が覆されて無罪とされたことについては、誠に遺憾である」「判決内容を十分に検討し、適切に対応したい」とコメントしています。

検察は上告を検討するということです。

長野放送
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