アライグマが各地で増えていて問題になっている。かわいいイメージがある動物だが、実は、凶暴な性格で住宅被害や感染症のリスクまで指摘されている。害獣駆除業者は「力が強くて、封鎖したところを簡単に壊してしまう。ラスカルと言われていたアライグマとは違う」と語る。被害対策の現場を取材した。

“アニメ”で人気に 野生化したアライグマ…人に危害も

アライグマの捕獲数は、全国で過去最多のおよそ6万6000匹(2019年度環境省による)。驚くほどの勢いで繁殖している。

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日本でアライグマが有名になったきっかけは、1977年にテレビで放送されたアニメ「あらいぐまラスカル」。

このアニメでペットブームが巻き起こり、北米から大量のアライグマが日本に入ってきた。

しかし、凶暴な性格のため、野外に捨てる飼い主が急増。野生化したアライグマに人が襲われる事件も度々起きている。

被害者:
この子(犬)の足にかみつきながら、私の足にもかむという感じで、あちこちかみつくんです

雑食で、天敵もおらず生態系を壊してしまうことから、2005年には駆除対象の特定外来生物に指定された。

それでもアライグマは全国的に増え続け、関西では、兵庫県が特に深刻な状況に悩まされていると専門家は話す。

兵庫県森林動物研究センター 栗山武夫主任研究員:
(兵庫県に)1万匹以上いるのは確実だと思います。思い切り右肩上がりで分布地も増えているし、分布したところでも増えている。全然抑制できていないのが現状です

アライグマは、1度の出産でおよそ4匹が生まれる強い繁殖力を持っている。

兵庫県では2005年の捕獲数は361匹だったが、ことしはなんと1万匹に迫る勢いだ。

農作物の被害もここ10年間、4000万円以上で推移している。さらに、人への感染症のリスクもあると指摘する。

兵庫県森林動物研究センター 栗山武夫主任研究員:
マダニがいっぱいついています。ダニとか色んな病気を持っていますので、素手で立ち向かおうとせずに、まずは市町村の担当の部署に連絡をしてください

屋根裏のアライグマ追い出し作戦

近年、目撃情報が増えている兵庫県宍粟市。ある一軒家では、ことしの春以降異変が起きていた。

住人:
激しくなったのは1カ月くらい。そのうちこの辺で鳴き声が…。最初はこの上だったな

アライグマの出産シーズンは春。いままさに赤ちゃんアライグマが活発に動き出すころだ。こちらのお宅では、わなを仕掛けたが効果はなく、駆除業者に依頼した。

取材中、天井から「キュルキュル」と鳴き声が聞こえてきたが、ハウスプロテクトの法月博斗さんによると「うなっている状況」だという。

住人:
私、精神安定剤を飲んで寝るんですよ。じゃないと怖すぎて…。主人が呼吸器の疾患があるので、夜は酸素を吸いながら寝るんですよ。体調が余計悪くなるのと違うかなと思って。ダニとかノミとか菌が影響するって

侵入経路は1階の屋根の隙間。こぶしほどの大きさだった。

ハウスプロテクト 法月博斗さん:
力が強くて、封鎖したところを簡単に壊してしまう力を持っています。「こんなところから入るのか」というのが、プロにしか見つけられないところですね

鳴りやまないアライグマの騒音、感染症の不安もつきまとい被害は深刻だ。

天井に穴をあけ屋根裏をのぞいてみると…いた!

天井裏には赤ちゃんが2匹、親が1匹潜んでいた。

早速、アライグマ追い出し作戦が始まる。

刺激成分の入ったスプレーを吹きかけると…

中でアライグマが反応して暴れているがなかなか外に出てこない。

住人も不安そうにしている。

追い出し作業開始から4時間…。ついにその時が。

赤ちゃんアライグマを捕獲した。

–Q: 怖さはありますか?
住人:
そりゃあ。野生のもんだもん。こわ…。1匹でも減ったらええわ

その後、このアライグマは殺処分され、他の2匹も追い出すことができた。

住宅街にもアライグマ 台所侵入に屋根裏被害

アライグマは山間部だけでなく住宅街にも出没する。

住人:
ちょうど今木の陰になってますでしょう。その辺におりました。座ってこっち見ていたの。タヌキだと思った、はじめ。
台所のテーブルの上ね、食べられているみたい

–Q:かじられている跡があった?
住人:
あった。足跡があった。びっくりやね。怖いね

気づけば縁側で飼っていたメダカも食べられ、台所もあさられていた。

そして、一番被害があったのは屋根裏だった。

ハウスプロテクト 法月博斗さん:
ここが通り道ですね。ここ板外れちゃっているんで。板の中にちょっと小さなうんちがあります

よく見ると、外の屋根や壁にも穴が開けられていた。この日、アライグマの姿は見えなかったが、戻って来られないように侵入口を塞いだ。

ハウスプロテクト 法月博斗さん:
年々、こういった市・町でも増えて来ているので、本当に簡単に見かけられてしまうようになってきています

急増するアライグマ対策には「家に入れない」ことが重要

知らぬ間に住み着いてしまうアライグマ。では、被害に遭わないためにはどうしたらいいのか?

兵庫県森林動物研究センター 栗山武夫 主任研究員:
まずは家に入れないことが重要です。周りに足跡とか柱に爪痕が残るので、家の周りにあるかないかだけでもチェックしていただいて、定期的に見回るというのは防衛手段です

捕獲や駆除は自治体の許可が必要で、無料でわなを貸し出している自治体もある。

人が連れてきてしまったアライグマ。これ以上、被害を生まないためにも人が責任を持って対応することが求められている。

(関西テレビ「newsランナー」7月3日放送)

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