新型コロナウイルスの感染者数が下げ止まるなか、新たな変異株「バジリスク株」が登場し、第8波の到来も懸念されている。

今年はインフルエンザとの同時流行の可能性も指摘されるなか、私たちは迫る危機にどう備えれば良いのか。

いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長
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いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長に、今年のインフルエンザの動向や予防接種のタイミングなどについて聞いた。

新変異種「バジリスク株」で第8派の時期が変わる?

最近良く耳にするようになった新たな変異株「バジリスク株」とは、どういった特徴があるのだろうか。伊藤院長は重症化リスクは不明なものの、必ずしも強いとは言えないと考えていると解説する。

空港では多くの人が行き交うようになった
空港では多くの人が行き交うようになった

――「バジリスク株」の感染力と重症化リスクは?
私もまだ詳しくはわかりませんが、「BA.2」から派生した変異株と聞いています。
感染力は世代を重ねるごとに強くなってきているので、「BA.5」が流行っている中に乗っかって入ってくることで、ある程度感染力が強いものと予想されます。

病原性に関して、重症化リスクはまだもちろん不明ですが、必ずしも強いとは言えないと思います。今後の続報に注視していく必要があります。

――バジリスク株は海外由来?
海外由来だと思います。どの国が起源かはわかりませんが、日本で流行っていた「BA.5」からの派生ではなく、海外から入ってきたものと考えられています。

国際交流にほぼ制限がない今、海外から入ってくる変異株を視野に検査をしていく必要があると思います。第8波が来るとしたら、12月末から1月ぐらいと名古屋工業大学の平田晃正教授らが指摘していたと思いますが、それは新たな変異株がまだはっきりとは出ていなくて、「BA.5」が主体であると考えた時に、飲食やイベント、家族との時間が長くなる年末から年始にかけてが候補だったわけで、新たな変異株が広がり始めると話は別だと思います。

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感染者数は9日連続で前の週を上回っているという報道があります。

これが乾燥して寒い冬になったことによるものなのか、人の動きが活発になって飲食やイベントが増えたことが原因か、あるいは7月あたりに打ったワクチンの免疫力が落ちてきたことなのか、または密かに新たな変異株が広がり始めていて、それによるものなのか、注視して今後の感染対策に役立たせる必要があると思います。

米ではインフル流行期に…日本も早ければ12月

第8波が心配される中、今年はインフルエンザも流行すると言われている。

アメリカで早くも患者数が増える中、いとう王子神谷内科外科クリニックではどのような対応をとっているのだろうか。

――今年はインフルエンザも流行するといわれているが
最近はどちらともとれる症状の患者さんが増えてきたので、強い筋肉痛や関節痛、頭痛、咽頭痛、高熱という患者さんに対しては、どちらか片方の検査ではなく、両方検査するようにお勧めしています。

一例ではありますが、インフルエンザと新型コロナウイルスに同時感染している患者さんを発見した経験を踏まえると、これからいつ日本でインフルエンザが流行し始めてもおかしくないです。

アメリカのCDC(疾病予防管理センター)の発表では、約2週間前にインフルの流行期に入ったということです。特に南部でインフルエンザの流行期に入ったという報道がされています。

アメリカで流行るということは、日米の交流が盛んになってきたので、観光や仕事で入ってくる方も多くなり、コロナもそうですが、インフルエンザの患者さんも漏れなく入ってくると思います。

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アメリカでもいつもより早く流行期が来たという報道ですから、日本は通常ですと1月から2月がインフルエンザのピークですが、それよりも半月~1か月ぐらい早い12月ごろに流行が始まるのではないかと予想して行動しなくてはいけないと考えています。

同時接種で流行に備えることも

――同時流行に備え、クリニックの対応方針は?
まず、皆様方には今まで通りの感染対策を今まで以上にしっかりと見つめなおして、感染リスクのある環境においてはマスクをして、手洗いをしっかりとしていただく。

それと共に院内では、発熱外来がひっ迫していない今のうちに、何とか新型コロナの新しい「BA.4-5」対応のワクチンを多くの患者さんに打つ。そしてインフルエンザの予防も感染や重症化の観点から非常に大事ですから、多くの患者さんにワクチンを打ちたい。

ご本人の同意があれば同時接種も可能なので、今は予防に十分力を注いで、1か月~2か月後にどちらか、あるいは両方の感染の波が来ると思いますので、それまでにワクチンを打って備えたい、準備をしたいと思っています。

――同時接種の患者動向は?
増えてきました。2週間ほど前は日に1~2人という感じでしたが、今は5~6人に1人ぐらいは同時接種で当たり前になってきました。
我々も手順が慣れてきて、先にインフルエンザ、そして反対側にコロナの筋肉注射をして15分待っていただいてスムーズに帰ることができるようになってきました。

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また、6か月~4歳までのワクチンも開始したので、その世代もインフルエンザとの同時接種をするなど、幅広い世代の方々に同時接種ができる環境にありますので、ぜひ早い時点での両方の接種、あるいは同時接種を検討していただければと思います。

副反応が気になる人は別々に接種を

一方で、過去の副反応の辛さから、同時接種をためらう患者さんがいるのも確かだ。その意思は最大限尊重していきたいと伊藤院長は話す。

――同時接種に不安を感じる場合は?
過去の接種で熱が出たり、筋肉痛でつらい思いをされた場合は、同時接種を慎重に検討してずらしたいという方もいます。
これは最大限尊重して、1~2週間ずらしても大きな波はまだ来ると思わないので、ここ1~2か月の間に両方順調に打っていただければいいと思います。

忙しいから同時に打ちたいという方は同時接種の良い対象だと思いますし、過去に熱が出て体調不良になったので1つずつ慎重に打ちたい方はその経験を踏まえて、それに合わせた適切な接種をすることが我々の役割だと思っています。