世界で「コロナうつ」などの精神疾患が急増

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界でうつや不安障害の症状を訴える患者が急増している。感染への過度な不安や外出禁止に伴う隔離措置により、人とのつながりが遮断されたことが大きな影響を与えているものとみられる。

カイザー財団の最新の調査(3月25~30日実施)では、成人の45%が感染拡大で精神的な影響を受けたと回答。3月中旬に行われた前回の調査から、12%増加した。また、そのうち19%が「大きな影響」だとしている。

米医師会の「JAMAネットワーク・オープン」に掲載された論文(1月29日~2月3日、中国・武漢大関連病院などの医師らが実施)によると、中国で新型コロナウイルスの患者を受け入れた34病院の医療従事者を対象にした調査で、50%以上にあたる634人がうつの症状を訴えた。最前線で治療にあたる医療従事者の間でも懸念が広がっている。

先行きが見えない不安が続く中、「心の健康」を守るにはどのように対処すべきなのか。また、「在宅勤務」をうまく進めるにはどうすれば良いのか。日常生活で実践できる7つのポイントについて、ハーバード大学医学部准教授で「アメリカうつ・不安障害協会」会長のルアナ・マルケス博士に聞いた。

ハーバード大医学部准教授 「アメリカうつ・不安障害協会」会長 ルアナ・マルケス博士

ハーバード大医学部准教授が勧める「コロナうつ」を避けるポイント

マルケス博士は、精神の不調を訴える患者が急増し、それが常態化していると指摘する。「コロナうつ」を避けるために今、日常生活で簡単に実践できる3つのポイントを紹介する。

①    携帯電話やテレビから離れ、情報を遮断する時間を作る

新型コロナウイルスに関する情報を繰り返し何度も見続けることで、脳が興奮状態になります。過度に情報に接し続けることは避け、うまく脳を休憩させることが重要です。例えば、携帯電話をオフにし、散歩や読書、お茶を飲んでリラックスをするとよいでしょう。

②    食事、運動、睡眠…従来の健康習慣を維持する

ある調査では、新型コロナウイルスの発生以降、62%の人が「食生活が変化した」と回答しました。従来の健康的な生活習慣を維持することがとても重要です。健康的な食事をし、適度な運動を取り入れ、良質な睡眠をとることは、脳を健全な状態に落ち着かせるだけでなく、免疫機能向上にもつながります。

健康的な食事で免疫力を向上させることも大切

③    他人と会話し、つながりを維持する

一人暮らしの場合、外出禁止による隔離措置で他人とのかかわりが遮断されてしまいます。電話やオンラインなどもうまく取り入れて家族や友人と会話するなど、「孤立状態」に陥ることを防いで下さい。

仕事と私生活の境目が曖昧に…「在宅勤務」をうまく進めるコツ

外出禁止による「在宅勤務」で自宅に閉じこもる時間が増え、仕事とプライベートの境目が曖昧になることで、ストレスを招いてしまう。長引けは、メンタルヘルスに悪影響を及ぼしかねない。「在宅勤務」をうまく進めるためにはどうすれば良いのか。マルケス博士が勧めるのは「オン」「オフ」の区別を明確にするための次の3つの方法だ。

④    スケジュールを設定し規律をもって明確に管理する

新型コロナウイルス発生前、もし午前9時に出社していたのなら、家でも同じように午前9時に仕事を始めましょう。職場に行く必要がないからといって曖昧にせず、スケジュールを明確に管理して規律を保つようにすることです。

⑤    小さな机でいい。「プライベート」と「仕事」の空間を分ける

本来、自宅はリラックスのための空間。自宅に仕事を持ち込む場合には、なるべく「空間」を切り分けることが望ましいです。例えば、部屋の隅に小さなデスクを置くだけでもいい。家の中ではその机があなたの「職場」だと考え、日常の空間からはなるべく切り離すのです。休憩も取り入れて、可能なら同僚たちとも会話をする。そして、仕事が終わったらその「職場」から物理的に離れるようにする。同じ部屋の中だとしても、なるべく「プライベート」と「仕事」の空間を分けることが重要です。

部屋の隅に小さなデスクを置くだけでもいい

⑥    「仕事モード」から「オフモード」への「切り替え」の時間を設定する

通常時、仕事が終われば、多くの人が職場を離れて公共交通機関や車で帰宅します。その時間で自然とスイッチが「仕事モード」から「オフモード」に切りかわりますが、今はその時間がなく「切り替え」がうまくできないことがあります。在宅勤務では、その時間を物理的に取り入れると良いでしょう。例えば、仕事が終わったら、散歩や軽い運動をする。もし外に出られなければ、オンラインを活用し自宅で適度に体を動かすといいですね。

軽い運動などの「切り替え」が大切

犬や猫などペットを飼い始め、症状が改善するケース

アメリカでは、新型コロナウイルスの発生以降、保護犬、保護猫の需要が急増している。動物の力を借りて、長引く「外出禁止」を乗り切ろうとする人が増え、注目が集まっているのだ。バージニア州の動物保護団体「ラッキー・ドッグ・アニマル・レスキュー」によると、譲渡件数は例年の3倍に急増し、3000件近い応募申請があるという。マルケス博士も、ペットを飼育することで症状が改善するケースがあると話す。

「ラッキー・ドッグ・アニマル・レスキュー」の保護犬猫譲渡会 米・バージニア州
飼い主を待つ保護犬たち 全米各地で保護犬猫の譲渡件数が急増している

⑦    犬や猫などのペットと触れ合う

最新の報告では、ペットを飼うことで不安や孤独感などをやわらげる効果があると指摘されています。私の患者の中にも、これまでは犬を飼う事が出来なかったものの、在宅勤務を機に犬を飼い始め症状が改善したケースがありました。人によっては、ペットを飼う事で、家族と会話をしたり、お茶を飲んでリラックスするのと同様の効果が認められます。もし、あなたが犬や猫と触れ合う事で「つながり」を実感できるなら、そうすることを強く勧めます。
 

つぶらな瞳に不安や孤独感も癒される

【執筆:FNNワシントン支局 瀬島隆太郎】