川の堤防が決壊 なすすべがない住人達
ヘリ取材の第一の役割は、まだ多くの人が知らぬ被害の全貌を、上空から確かめることにある。
「栃木県佐野市の秋山川が決壊しているらしい」との情報をもとに、午前6時過ぎ、日の出とともに飛び立った。
すると間もなく、関東一帯を飛びなれたヘリのパイロットがつぶやいた。
「なんだあれは?あんな地形だったか!?…水びだしになっている…」
東武佐野線・佐野市駅から西に数百メートル。上空から見ると、秋山川と渡良瀬川が合流する、まさにその場所が、広大な湖のようになっていた。
ここはれっきとした「地表」だった場所だ。まわりの家々の1階部分が明らかに浸水していた。
その上流では堤防が長さ50メートルほどにわたり決壊。川の茶色い濁った水が住宅街に流れ込んでいた。
かろうじて残った堤防の上には、何人もの住人と思われるひとたちの姿が。現場の様子が心配なのだろう。しかし、いまもなお濁流が堤防を削り取らんばかりの勢いで流れている様子を見ると、危険極まりない。残った堤防もいつ崩れてもおかしくない。
氾濫した川には、一夜明けても絶対に近寄らないでほしい。
そして隣の足利市でも、支流が完全に氾濫。周囲の田畑にあふれ出た水の水位と川の水位がまったく同じ高さになり、周囲の道路は冠水。車が数台、かろうじて屋根が見える程度まで水につかっていた。氾濫というか、川のキャパを超えて、完全にあふれてしまっている。
一部高架になっていた道路が10mくらいの長さにわたり地表に姿を現していて、前にも後ろにもすすめなくなったトラックがそこに。その運転手と思われるひとが、水につかった前方と後方の道路をみつめ、途方に暮れている様子が上空からわかった。
千葉、埼玉、茨城の各所で氾濫
埼玉県川越市の特別養護老人ホームでは約260人が取り残され(その後、約120名と判明。午後5時15分ごろ救助完了)、消防や警察のボートによる救助活動が続けられている、との情報をもとに現場上空へ。
そこは越辺川と入間川がVの字のように交わる、まさにそのVの内側。そこには小さな支流が2本流れていたことが地図の上では示されているのだが、一帯が冠水し、川の位置がよくわからない。おそらく、ここも途方もない量の水が一気に流れ込み、幾重もの川が合流する地点ということもあり川のキャパを超え、水があふれてしまったのだろう。
もはや、どこかの堤防が一部決壊した、というよりも、バケツの水をぶちまけてできた水たまりのような状態だ。上空に1時間30分ほどいたが、一向に水がはける様子は見受けられなかった。
台風通過から半日以上たってもなお取り残された人が
茨城県水戸市では、川の氾濫で住宅街が水につかっているという。
ここも現場がすぐわかった。
県の防災ヘリと、海上保安庁のヘリが、超低空で飛び、住宅の屋根に救助隊を降下させていたからだ。よくみれば、その2階建て住宅の屋根の上には4人のひとたちが座り込んでいる。
一人ひとり、ヘリに収容する作業が慎重におこなわれていた。
そして同じ住宅街では、自衛隊がボートを出し、2階に取り残されていたひとたちを救助していた。
空から、陸から、消防や警察、自衛隊が連携し続けられる救助活動。時刻は午後3時。台風通過から半日以上がたって、ようやく救助されたひとたちの姿がそこにあった。
日が暮れてもなお、水がはける気配はない。
(執筆:フジテレビ プライムオンラインデスク 森下知哉)