“九響”の愛称で親しまれる九州唯一のプロオーケストラ『九州交響楽団』。5期連続の赤字に苦しむなか、ファンを増やそうと奮闘する若手スタッフに密着した。
5期連続の赤字 2023年度は9400万円
福岡市を拠点に活動する九州交響楽団。通称“九響”。

定期演奏会など年間約150回の公演を行い、九州の音楽文化を支えているが、いま楽団は深刻な存続の危機に直面している。

新型コロナの影響で公演の中止や延期が相次ぎ、来場者も減少。2021年度以降、5期連続の赤字となり、2023年度の赤字額は9400万円にまで膨らんでいるのだ。

「九響の財務内容を見たときに『これは、もうかなり厳しいな』と思いました」と語るのは、経営再建を託され、2025年7月に理事長に就任したのが『ふくおかフィナンシャルグループ』の五島久社長。

企業再生に携わってきた経験を生かし、五島理事長が再建に向けて掲げたのは「1番、大事なところは、やはりコンサートにたくさん足を運んでもらえるようなお客さんを増やしていく、ファンを増やしていく、これをしっかりやっていこう」ということ。
楽器を演奏する側から楽団を支える側へ
その取り組みを現場で支えるスタッフの1人が、楽団で最も若い中通誉宏(23)さんだ。

営業部でチケット販売や問い合わせ対応を担当する一方、9月からは広報業務も兼務。SNSでの情報発信や動画の編集を通じて、若い世代にも九響の魅力を届けようとしている。

「1日が、本当にあっという間で、気づいたらもう定時っていうのが多いですね」と笑う中通さん。忙しい毎日だが、音楽に携わる仕事には特別な思いがあるという。

「小さい頃から音楽をやっていたので、音楽関係の仕事に携われるって、本当、嬉しいなと思っています」 中学時代は吹奏楽部に所属していた中通さん。高校時代には、九響の楽団員が指導する福岡ジュニアオーケストラで初代団長を務め、九響との縁も生まれた。

しかし、音楽の世界は“狭き門”。高校卒業を機に音楽の道から離れることを決め、専門学校を卒業後、一般企業に就職した。

それでも、音楽が好きなのは変わらない。音楽への情熱は冷めなかった。2年前に体調を崩したことをきっかけに、好きなことを仕事にしたいと考え九響に転職したのだ。
「正直、楽器を叩きたいですけど、皆さんプロですから、もうここは裏方に徹して、とにかく九響を広めていこうという思い」(九響 営業部・中通誉宏さん)

この日は、2日後に迫った定期演奏会のリハーサル。中通さんは練習風景を動画に収め、広報用の写真を撮影するなど本番に向けて準備を進める。
演目はブルックナーの交響曲第6番
迎えた、定期演奏会当日。中通さんは会場の設営やパンフレットの準備に加え、SNSでの告知にも追われていた。

「結構バタバタしますけど、お客様が楽しんでもらえるように準備を進めています。今回の演奏会は、5年任期のちょうど折り返し地点ということで、成功したら黒字化に向けて、もっといい方向に進むんじゃないかと。成功できるように、支えたいと思います」(九響 営業部・中通誉宏さん)
この日の演目は、太田さんの指揮によるブルックナーの交響曲第6番。

迫力ある演奏が、会場いっぱいに響き渡る。
「福岡で取り上げられるの珍しい曲目だったので、すごく貴重だった」(40代・女性)

「今、本当に九響のメンバーが充実してきて、私、10年ぐらいですけど、10年前よりも、うんとレベルが上がってます」(60代・男性)

演奏を聴いた観客も満足げだった。
今後は県外での演奏会なども企画
黒字化に向けて取り組みを進めている九響だが、2025年度の赤字額は2900万円と前年度より4500万円ほど減っていて、徐々に改善の兆しも見えてきている。

また、2026年に発表した中期経営計画では、ファン層の拡大に向けて『県外での演奏会』や『SNSなどを活用した情報発信』の強化を新たに加えている。

「今はもう、とにかく公演が終わってホッとしているところです」と演奏会を終え、安どの表情を浮かべる中通さん。

「音楽が好き」その思いを原動力にこれからも九響の魅力を発信し続ける。定期演奏会は、11月も開催されるということで、今後も九響の活動に注目していきたい。
(テレビ西日本)

