気候変動による栽培地の減少やコーヒー豆の価格高騰などで、コーヒーが当たり前のものではなくなってしまう未来が迫っているという。
一方で中国では、空前のコーヒーブームも。
コーヒーの今とこれからを徹底取材した。
■ 中国・上海で7年ぶりの再進出 「ミスタードーナツ」が見据えた“変化”
9月、中国・上海に新たな店をオープンしたドーナツチェーンの「ミスタードーナツ」。
オープンからわずか1時間で、店の外には先が見えないほどの長い行列ができた。
過去にも中国へ進出していましたが、2019年に撤退。7年ぶりの再進出だ。
その背景にあるのは、中国における“ある変化”だ。
上海の街を歩けば、通りのあちこちにカフェが。上海は世界の都市の中で最もカフェが多いとされており、今まさに空前のコーヒーブームが到来している。
中国のコーヒー消費量は5年でほぼ倍増しており、中国の業界団体の調査によると、コーヒー産業の規模は去年、およそ8兆4000億円に達したということだ。
また、コーヒーと一緒にドーナツなどのスイーツを楽しむスタイルも人気となっており、それが今回のミスタードーナツの再進出にもつながっているようだ。

■ コーヒーブームは東南アジア・南アジアにも拡大
静岡文化芸術大学の武田淳准教授は、このコーヒーブームが中国にとどまらないと指摘する。
静岡文化芸術大学 武田淳准教授:沿岸部の上海などの都市部を中心に、中国のコーヒーチェーンがかなり拡大していて、特にコロナ禍にコーヒーをテイクアウトして飲むという文化がかなり広がっている。
さらに武田准教授は、アジア全体でコーヒーへの需要が急拡大していると話す。
静岡文化芸術大学 武田淳准教授:東南アジアや南アジアでは元々、紅茶を飲む“お茶文化圏”だったが、コーヒーを飲む人がものすごく増えています。

■ コーヒー大国・日本で起きている価格高騰
その一方で、アジアの中でも長くコーヒーに親しみ、消費量・世界4位を誇るコーヒー大国・日本では、深刻な問題が起きている。
大阪市内にある「喫茶水鯨」。懐かしい雰囲気の店内では、自家焙煎したコーヒーなど、純喫茶のメニューが楽しめます。ところが、店主の山口修平さんに話を聞くと、心配な現状が見えてきた。
喫茶水鯨店主 山口修平さん:(コーヒー豆の価格が)結構上がってしまって、豆によるんですけど1.5倍~2倍近いものまであります。
価格高騰の波は、豆の卸会社にも押し寄せている。岡本珈琲の岡本一芳社長は状況をこう語る。
岡本珈琲 岡本一芳社長:(コーヒー豆の)原価の時点で2.5倍以上は上がってます。確保するというレベルでも問題がある。“こだわりたい”ところと“確保する”という両面があり難しい。
燃料費の高騰やアジア諸国での需要増加を背景に、コーヒー豆の先物価格は去年、史上最高を記録した。岡本社長は、今後も価格が下がることは期待できないと話す。
岡本珈琲 岡本一芳社長:しんどいですけど、昔みたいに(価格が)下がることはまずないと思うし、今の状況が当たり前になるつもりで、これからはやっていかないと。

■ 気候変動が追い打ち 「2050年問題」とは何か
大きく変化するコーヒー豆をめぐる状況。しかし問題は、価格高騰にとどまらない。コーヒーの存在そのものを脅かす恐れがあると、専門家は警鐘を鳴らす。
静岡文化芸術大学 武田淳准教授:このまま気候変動が進んでいくと、コーヒーの栽培に適した地域が減っていくという予測があります。2050年までにおおよそ半分になるだろう。
現在、コーヒーの栽培に適しているのは赤道付近の「コーヒーベルト」と呼ばれる地域だ。
しかし気候変動による気温上昇がこのまま続けば、栽培地域は大幅に縮小し、2050年にはコーヒーが気軽に飲めなくなる可能性があるというのだ。この問題が「2050年問題」と呼ばれている。

■ 南国の農家から悲鳴 収穫量はすでに半減
コーヒー栽培の現場では、今、何が起きているのだろうか。パプアニューギニアのコーヒー農家、トニー・オンボさんに話を聞くと、深刻な実態が明らかになった。
コーヒー農家 トニー・オンボさん:赤い実を開けると普通は2つの豆が取れる。今の気候変動で1つだけが多い。
およそ2000本のコーヒーの木を栽培するトニー・オンボさんは、気候変動の影響で収穫量がすでに半減していると言う。
さらに、アフリカからやってきた虫による食害も加わり、事態はより深刻になっている。
トニー・オンボさん:薬を買ってきてスプレーしても、なかなか(被害が)終わらないから、仕方ないから他のビジネス、ニンジン・赤ビーツとかを頑張ってる。
コーヒー栽培を諦める農家が出始めているという現実が、確実に広がっている。

■ 和歌山から「国産コーヒー」を 新たな挑戦者
「そんなことにはさせない」と立ち上がった人物がいる。
取材班が向かったのは、和歌山県日高川町。この地で2年前から国産コーヒー豆の栽培に取り組んでいるのが、MIDOFARMの道仙信也代表(41)だ。
現在、ハウスには150本のコーヒーの木があります。本来は赤道付近で栽培されるコーヒー豆を、日本の気候で育てるために、道仙さんは日々、試行錯誤を続けている。
MIDOFARM 道仙信也代表:(気温が)10度を下回ると成長が止まったりとか、枯れてしまうというリスクがあると言われていたが、5度ぐらいまで気温を下げて管理したんですけど、枯れずにグッと成長した。(日本の)温度に適応できるようになるのではないか。
コーヒーを和歌山県の特産品にすることが夢だと語る道仙さん。その背景には、「2050年問題」への強い危機感がある。
MIDOFARM 道仙信也代表:中国やインドといった大きなマーケットが参入してきて、何とか国産コーヒーを確立させて普及させて、『日本人は日本のコーヒーがあるよ』というようなところに持っていきたい。

■ コーヒー豆を使わない“代替コーヒー”が登場
一方で、2050年問題をきっかけに、コーヒーの常識を打ち破る新商品も登場している。
ダイドードリンコが数量限定で販売を開始したのが、コーヒー豆を一切使用していないラテだ。ひよこ豆とチコリを組み合わせることで、コーヒーの風味を再現したという。
ダイドードリンコ商品開発グループ 中尾一貴さん:苦味の部分に着目して、どう表現すればいいのかを悩んでいました。
取材に当たった記者が実際に代替コーヒーと通常のコーヒーを飲み比べたが、代替コーヒーを当てることはできなかった。
世界で起きているコーヒーをめぐる異変。今から24年後、コーヒーは今と変わらず気軽に飲めるのだろうか。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月6日放送)


