2026年9月13日に投開票が行われた沖縄県知事選挙は、県政の歴史を揺るがす大きな転換点となった。

新人の古謝玄太氏が、史上最多となる42万票あまりを獲得して初当選を果たした。2期8年を務めた現職に約14万7000票という圧巻の大差をつける結果となったが、その舞台裏には、従来の選挙戦術を覆す綿密な戦略と土壇場でのドラマがあった。
最大の課題は知名度の差…これまでの戦術を根本的に見直す
告示前、陣営内部からは冷ややかな視線も送られていた。

最大の課題として、2期8年の実績を誇る現職・玉城デニー氏との圧倒的な知名度の差があったからだ。2014年以降、「オール沖縄」対「自公勢力」という構図のなかで敗北を重ねてきた保守陣営。12年ぶりの県政奪還を果たすため、政党主導ではなく経済界が前面に出る戦術へと大きく舵を切った。
共同代表を務めた金城克也氏は、従来のやり方からの脱却についてこう述べた。

「『県民党』的立場で選挙をしないと勝てない、多くの県民の理解を得られないということもありましたので、我々経済界が主体となって動いた」
自民・維新のみならず、参政・国民民主・日本保守、さらに自民との連立が解消された公明党県本部も含めた異例の「国政6党推薦」という強力な支援態勢が構築された。

しがらみを危惧する声もあったが、勝つための体制強化を優先させた。古謝氏自身も第一声で、その覚悟を力強く語っていた。
「私、古謝玄太は、あくまでも県民のために、県民党としてこの選挙を戦い、そして県政運営も県民のための政治を行ってまいります。今回6党の推薦をいただいておりますが、うまく使っていく」
告示直前の土壇場で起きた「保守一本化」の転機

さらに陣営は、無党派層や女性票の取り込みを重視。妻の亜希子さんが密着してマイクを握り、夫婦二人三脚の姿勢をアピールした。
「これからの厳しい選挙戦、本人はもちろん、家族も一丸となって最後まで訴え続けてまいります」
親しみやすさと誠実さを押し出した街宣活動が結実し、当日の出口調査では女性の過半数以上から支持を得るという目に見える結果も出た。
そして最大の転機は告示前日に訪れる。

独自出馬を模索していた元衆議院議員の下地幹郎氏が、突然の立候補取りやめを発表。下地氏は記者会見の場で、土下座というパフォーマンスとともに古謝氏への支持を表明した。
「この選挙で古謝さんを勝たせて、私の政策を前に進めさせていただきますよう、よろしくお願い申し上げます」
前回選挙で5万票を得た下地氏の電撃的な合流により、保守分断の危機は去り、勝利への潮目を一気に引き寄せることとなった。
“基地論戦の呪縛”を断ち切り、問われる「これからの沖縄」
選挙戦最終日、古謝氏の打ち上げ式会場の那覇市・県民広場には若い世代や女性たちが少なからず集まり、最終盤の訴えに視線を注いでいた。

米軍普天間基地の辺野古移設について「容認」の立場を明確にし、工事停止の手立てがない現状を提示して経済優先を打ち出す戦術が、有権者の「現実的な選択肢」を際立たせるものとして響いていった。
大歓声のなか、古謝氏は積み上げてきた手応えを噛みしめるように力強く訴えた。
「6党の皆様のお力添えで、そして、ここにいる1人1人に流れとうねりを作っていただいて、相手候補の背中が見えてきました」
投開票日の夜。開票時間と同時刻に当確が出ると、しばらくの間これからの重責を噛みしめるような表情を経た後、古謝氏は未来への決意を口にした。
「県民の皆様のための県政運営を実現してまいりたいと思っています」

長年続いた基地問題を巡る対立の構図から脱却し、多様な勢力を束ねて勝利を掴んだ新たなリーダー。「沖縄を前に」というスローガンをこれからどのように体現していくのか、県民の厳しい視線を受けながら、新しい沖縄県政が動き出す。

