富士山の麓の街、静岡・富士市で駅前に賑わいを取り戻そうと再開発事業が始まった。
今は見えない富士山の眺望が楽しめるように、駅前を整備することは決まったが、街づくりのコンセプトはまだ見えない。間近に望む“日本の象徴”を生かした街づくりができるのだろうか。

“街の玄関口”から富士山がみえない

人口約25万人が暮らす富士市。静岡県内では浜松市や静岡市に次ぐ、3番目の人口を誇る市だ。

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池田孝記者:
私は今、JR富士駅北口に来ています。県内で3番目に多く人が住む街の玄関口ですが、ご覧のように人通りはほとんどありません。この状況を改善しようと、ようやく再開発事業が動き出しました

JR富士駅北口 
JR富士駅北口
 

5年後の2027年度の完成を目指すJR富士駅北口の再開発事業。
駅の北口に地権者たちでつくる組織が19階建てのビルを建設するのに合わせ、富士市が駅からそのビルに続く場所に公共施設を建設し、商業施設や専門学校を誘致する計画だ。駅前のロータリーも再整備する。にぎわいの創出と都市の風格を取り戻す狙いだ。

富士駅北口再開発事業の完成イメージ
富士駅北口再開発事業の完成イメージ

富士市都市整備部・深澤克仁統括主幹
現状は駅を降り立ち外に出ると、北側のビルにさえぎられて富士山が見えない。これを本市の玄関口として駅を降り立った時に、富士山が眺望できるような作りにしていきたい

富士駅北口から富士山は見えない
富士駅北口から富士山は見えない

富士駅から1.5キロほど離れた新幹線・新富士駅からは見えるが、富士駅からは2つのビルに遮られ富士山が見えない。今回の計画では2つのビルを取り壊し、富士山の眺望を妨げない位置に新たなビルを建てる。
長年の懸案となっている駅前のにぎわいづくりだが、富士市は今回の事業をラストチャンスととらえている。

富士駅北口再開発事業の完成イメージ
富士駅北口再開発事業の完成イメージ

富士市・深澤統括主幹
富士駅前の整備は昭和30年代に市が区画整を始めて、それから50年以上が経過してます。もう一度再生を図っていきたいということで、地元の皆さんと10数年前に再開発の話し合いを始めました。なんとか形にしたいと考えています

賑わいは人気店閉店で消えた…

33年前の1989年の映像をみると、富士駅周辺は駅前にあったショッピングセンターと商店街を中心に大勢の人たちであふれていた。

富士駅北口の商店街(1989年)
富士駅北口の商店街(1989年)

富士駅北地区まちづくり協議会・鈴木康弘副会長
「イトーヨーカ堂」があり、5階建てで賑わっていた。別の場所には「パピー」というファッションビルがあって、両方を行ったり来たりしてすごく人通りが多かった

富士駅北口の商店街(1989年)
富士駅北口の商店街(1989年)

かつて駅前で飲食店を営み、現在はブティックを経営する鈴木さん。30年以上にわたり、このエリアの街づくりに携わってきた。

まちづくり協議会・鈴木副会長
「あなたの街はどんな街?」と聞かれた時に「来てみて、こんな街だよ」と、自分はもちろん子や孫も誇れるような街だったら良いと感じる。今の街の状況では、なかなか言えない

まちづくり協議会・鈴木副会長
まちづくり協議会・鈴木副会長

2010年前後にショッピングセンターや映画館が相次いで閉店。さらに郊外に大型の商業施設が出店したことも影響し、衰退が加速した。

まちづくり協議会・鈴木副会長
新しく何かができるということは皆さん期待もするし、私も(賑わいの)きっかけになれば良いと思っている、ただ、それ(再開発ビル)ができたから活性化するかというと、そうはならない気がしている

再開発ビルだけでは賑わいは戻らない

期待と不安がある中、賑わいを取り戻すにはどうしたら良いのか。
街づくりを研究する静岡大学の牛場准教授は、魅力的な店舗や施設の誘致とともに、コンセプトづくりが大切だと話す。

静岡大学・牛場智准教授(人文社会科学部)
再開発事業を成功させる要因としては、もちろんハード面、「どういった施設ができるのか、どういったスペースができるのか」は非常に重要だが、むしろそれよりも重要なことは「どういった街づくりをするのか」。富士市の場合ですと、「どういった街になりたいのか、駅前をどうしていきたいのか」というコンセプトが必要になってくる

静岡大学・牛場智准教授
静岡大学・牛場智准教授

その上で、多くの市民に関心を持ってもらうことが必要だと指摘する。

静岡大学・牛場准教授
わが街の駅前、わが街の商店街、わが街の再開発…直接権利は持っていなくても、(市民が)意識を持つこと、(市は)意識づけることが必要

街づくりの目標さがす実験イベント

2022年4月に富士市では商店街を使った路上ライブや、直線道路を生かした綱引き大会が開催された。富士市や地元商店街は、今ある中心市街地の空間を活用し、賑わいづくりに必要な要素やコンセプトを探り出そうと社会実験を行った。

街づくりコンセプトを探る実験イベント(2022年)
街づくりコンセプトを探る実験イベント(2022年)

通りを歩行者天国にして、フィンランド発祥のスポーツ「モルック」や綱引きなどのスポーツ体験や路面を使ったアートイベントをおこなったほか、靴を脱いでくつろげる人工芝やハンモックを設置し、大勢の家族連れで賑わった。

来場者
(会場に)子供がいっぱいいる。子供が遊べるものがあると、ファミリーが街に繰り出しやすくなり、盛り上がると思う

街づくりのコンセプトを探る実験イベント
街づくりのコンセプトを探る実験イベント

別の来場者 :
若いお母さんが住みやすいところになると、もっと賑わうと思う

富士市都市整備部・深澤克仁統括主幹
思っている以上にみなさんから良い反響があった。今後も継続して形を少しずつ変えながら、いろいろな試みをしていきたい。再開発事業は手段の一つなので、再整備事業をやって終わりではなく、これを起爆剤にして周辺の市町から集まってもらい、そこから賑わいを波及させていきたい。本市の玄関口として、もう一度賑わいを取り戻していきたい

富士駅北口再開発事業の完成イメージ
富士駅北口再開発事業の完成イメージ

約50年ぶりとなる再開発事業。かつての賑わいを取り戻すことは簡単ではないだろう。
街づくりの目標をしっかりと見据え、つい足を運びたくなる魅力ある街を作ることはできるのだろうか。間近に見える富士山も応援してくれるのでは…。

(テレビ静岡)