相次ぐ自然災害に対する自治体の対応を考える。災害時、自治体には避難所を早く開設することや、避難者の情報を把握して対策本部と共有することなどが求められる。

 秋田県横手市を例に挙げると、避難してきた人を受け付けるには、紙に個人情報を記入してもらう必要がある。そして市は、FAXで災害対策本部に送り、本部がパソコンに手入力で情報を打ち込むことで情報が共有される。こうしたアナログな運用がこれまでの基本だった。

 この運用では、避難者一人一人の情報、どの地域に被災者がどのくらいいるのかなどを把握するのには時間を要する。

 そこで横手市は、この課題を解決するために、住宅地図などを販売する会社のノウハウを活用した「避難所システム」を構築した。

 横手市 危機対策課・斎藤栄作係長:
「各避難所と災害対策本部との情報共有がスムーズにできなかったために、受け付けをデジタル化して、デジタルデータで共用して、速やかな情報共有ができるようにしたいと思ったのがきっかけ」

 課題が浮き彫りになったのは、2017年7月に起きた水害だ。記録的な大雨で雄物川が氾濫し、横手市大森町では多くの家が浸水被害に見舞われた。その際、市内の数ある避難所に、多い所で300~400人が身を寄せた。

 一方で、市は受け入れるための作業に1人当たり3分ほどかかり、すべて終えるまでに相当な時間がかかったという経緯がある。

 課題解決に向けて手を組んだのは、地図情報を調査し、住宅地図などを販売する会社「ゼンリン」だ。地図データや情報管理のノウハウを活用した「シームレス避難所システム」を構築した。

 このシステムは、「避難所受付」「避難者管理」「地図連携」の3項目が連動する仕組みになっている。

 「避難所受付」では、避難所を利用する住民のマイナンバーカードや運転免許証を専用のカメラで読み込むだけで、氏名・住所・生年月日などの基本情報が取得できる。受け付けは6秒ほどで完了。

 「避難者管理」では、受け付けた情報を、災害対策本部のパソコン上ですぐに見ることができる。利用者数のほか、避難者が必要としているものなど、ニーズの把握にも役立てられる。

 3つ目の「地図連携」は、ゼンリンが持つ地図データを利用することで、避難者の情報を基に、災害が発生した場所などの情報をすぐに地図上で確認できる。危険な場所はどこか、逃げ遅れている人はいないかなど、支援活動にも利用される。

 横手市 危機対策課・斎藤栄作係長:
「対策本部で速やかに収集することで、例えば保健師の派遣や避難物資の仕分けなどに活用したいと考えている。災害はいつ起きるか分からないので、備蓄品を備えるなど各家庭でできる対応を行ってほしい」

 今後の運用次第では、迅速な災害対応と避難者に対するきめ細かい支援が可能になりそうだ。

秋田テレビ
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