観光PRやイベントに欠かせない存在となった自治体の公式キャラクター。一方、宮城県丸森町は商工会のキャラクターをPR大使として活用し「公式」と言えるキャラクターはいませんでした。そんな丸森町で今、町民投票で公式キャラクターを決めようという試みが行われています。その背景には、職員の町づくりへの思いがありました。

いまやファンイベントも行われるようになった自治体の公式キャラクター。全国から人を集める力を持っています。

記者「どこから来た?」
ファン「大阪」
記者「そんなに好きなの?」
ファン「うん」
ファン「今までの中で一番好きなキャラクターです。やっぱり最高です。超かわいい」

観光PRには欠かせない存在となり、公式キャラクターのいない自治体はごくわずかに…丸森町もその一つでした。

高橋咲良アナウンサー
「役場の1階には投票箱が設置されています。立候補しているのはこちら。『まもるもり』と『ne・ko・ga・mi(ネコガミ)』です。このどちらかが町の公式キャラクターに選ばれます」

4月1日から始まったのが丸森町初となる公式キャラクターの町民投票。子供から大人まで、興味があれば町に住んでいなくても投票することができます。これまで町がPR大使としてきた商工会のキャラクター「しょこ丸」に代わり、新たな町の顔としてデビューすることになります。候補となっているのは2つです。

「まもるもり」は、町の7割を占める「森林」がモデル。大きさも自由自在に変化し、季節によって姿が変わるのも魅力です。2019年の東日本台風で大きな被害を受けた丸森町。「まもるもり」には森が町を守るだけでなく、暮らしを支える豊かな自然を守っていきたいという思いも込められています。

もう一つは「ne・ko・ga・mi」。かつて養蚕が盛んだった丸森町では、カイコをネズミから守るため、ネコがよく飼われていました。ネコの供養などのため建てられた石碑は「猫神」と呼ばれ、町内には83基あり日本一の数を誇ります。あまり自慢をしない控えめな町民らしさを、自分のご利益に自信のない神様という設定で表現しました。丸森町らしさが詰まった個性豊かな2つのキャラクター。町民の反応は…。

高橋咲良アナウンサー
「お二人はどちらが良いですか?」

町民
「私は『まもるもり」ですかね」「私は猫の方」

高橋咲良アナウンサー
「おっ!割れました!」

まもるもり推しの町民
「丸森は、森なので…本当に丸いんですよ、森が。緑を強調したら良いかと思ってこちらが良いかなと」

ne・ko・ga・mi推しの町民
「丸森で猫神さまをかなり推しているので、猫モチーフがいいかなと」

高橋咲良アナウンサー
「ご自身はどちらが良いと思われますか?」

まもるもり推しの町民
「私は『まもるもり』かな。緑に囲まれている町ですからね、子供の頃から愛着がある」

ne・ko・ga・mi推しの町民
「私はne・ko・ga・miの方。かわいいですね。猫好きが多いので、こっちが良いんじゃないかと思います」

なぜ今、公式キャラクターを作ることになったのか?そのきっかけは町職員の研修でした。まちづくりに「デザイン思考」を取り入れようと、民間企業と連携した研修を行っていた丸森町。研修の中で提案されたのが公式キャラクターを通じた町のイメージアップでした。

丸森町 企画財政課 斎藤洋寿さん
「丸森町のものをこれすごいだろという感じで自慢できる人って少ないというのがあって、町に住んでる人がもっと町を好きになってくれるようなきっかけといいますか、それでキャラクターができたらいいのかなというふうに思って」

研修の講師を務めた 太田伸志さん
「丸森には何もないという感覚の若い方もいるが、むしろある方だと思っていて、それをよりきちんと伝えていきたい。丸森が抱える課題っていうのは本当に課題なのかということをもう一度考えてほしいっていうきっかけとしてのキャラクターでもあります」

2000年代後半から始まった、ご当地キャラクターのブーム。遅すぎる登場にも見えますが、地域経済学が専門の宮城大学の佐々木秀之准教授は、キャラクターづくりを通じて、自治体や企業、住民が一緒になって考えることが大切だと話します。

宮城大学・事業構想学群 佐々木秀之准教授
「町づくりは、住民や市民がどうやって参加して、自治体とか企業とどうやって共同していくか。一緒に価値を作っていく『共創』というのが今大事になってきている。このプロセスをきちんと踏むことによって町づくりに関心を持つ、あるいは関わってもいいよという人が増えるという効果があると思います」

丸森町が町民と決める、初の公式キャラクター。投票は4月15日までで、インターネットでも可能です。

仙台放送
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