仙台放送では東日本大震災の月命日にあたる毎月11日に震災で大切な人を失った方にお話を聞き、その「想い」を伝えています。
今回は、現在も行方不明の息子さんの名前を冠した飲食店をオープンしようと奮闘している、大友さおりさんです。

「ここは私の実家があった場所で、雅人を預けていたので、雅人が寝ていたベッドの位置を残しています」

大友さおりさん。
13年前の3月11日、生後8カ月だった息子の雅人くんを預けていた、名取市閖上の実家が津波に襲われました。
父・喜佐雄さん、祖母のろくさんは遺体で見つかり、雅人くんと母・すみ子さんは今も行方がわかっていません。

「生きている罪悪感とか楽しむ罪悪感とかがすごくあったのかなって思います。普通に生活していること、生きていることがだめなんじゃないかと思うこともありました。

生き残った自分を責め続けていたさおりさん。
友人や震災後に生まれた娘に支えられ、長い時間をかけて心と体の調子を取り戻していきました。

はっきりと自分の変化に気付いたのは、2年前の冬。光のページェントを見に行った時のことでした。

「雅人とも見に行ったことがあって、そういう思い出もある場所なので。でもおととしぐらいに見たときに、ただただ普通にきれいだなって思えたときに、すごく気持ちが軽くなったような、なんか今まで閉じていたものが開いたような、開いていくような感じを受けました。」

10年以上がたって、ようやく前を向くことができたさおりさん。この春、大きな一歩を踏み出すことにしました。

さおりさんは今、自然食をテーマにした食堂をオープンしようと計画しています。
お店の名前は、「まさとくんちのごはん」

「雅人は自分の中で生きていればいいなと思っていたので、お店の名前にするつもりはなかったんですけれど、子供たちのために今まで作ってきたご飯を提供する予定なので、『まさとくんちのごはん』っていうのがそのまんまだなと思ったので。」

この日は、店舗の内装、外装工事を自ら行い、お店で出すメニューの試食会を開きました。
さおりさんの友人たちが、手伝いに集まってくれました。

手伝いに来た人
「さおりちゃんは震災でいろいろご苦労されて、最初はわからなかったんですけれど。すごく明るいのでね。話聞くうちに何とか応援できたらなと。」
「ご飯作って笑顔に皆なってくれるのが願いというか、そういう感じでやっていると思うので、優しい、みんなが集まれるような場所になるんじゃないかと思っています。」

いろいろな人の想いが集まって作られていく「まさとくんちのごはん」。
一度にたくさんの人に料理を提供するのは初めての経験。予定より少しだけ遅れて、試食会が始まりました。

「まず本当にみなさんが時間を作ってきてくださったのが、本当にすごく感謝でいっぱいです。皆さんがおいしいって言いながら食べてくださったので、本当にやってよかったなと思っています。」

さおりさんは、このお店を通して伝えたいことがあるといいます。

「3月11日が誕生日だったり、記念日だったりすると、素直に喜べなかったりする人もいるんですけれど、そうじゃなくって、どんな日も誰かのうれしい日なので、それを祝えるような、喜べるような場所にしたい。ここで、過去に何があっても、絶対に誰でも幸せを選択できるんだっていうことを、自分が体現していきたいと思っているので、私が楽しくお店をやることで、皆さんに楽しさが伝わればいい。」

さおりさんとみんなで作り上げていくお店「まさとくんちのごはん」は4月30日にオープンする予定です。

「いつか『まさとくんちで食べよう』なんてお客さんが言ってくれたら、すごくうれしいなと。」

仙台放送
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