能登町にある自然体験施設、ケロンの小さな村。
大地震で深刻な被害を受け懸命の復旧作業を続けてきましたが今月6日、ついに再開を果たしました。
祖父と孫、二人三脚でこぎつけた再スタートまでの道のりに密着しました。
上乗さん:
「翔ちゃん~!もう6年生やじ?デカなったなあ~!」
能登町にある自然体験村「ケロンの小さな村」。
震災から3か月余りが経った今月6日。
子どもたちの姿が戻ってきました。
能登半島地震で大きな被害を受け子どもたちが安全に遊べない状況が続いていましたが、懸命の復旧作業で再びオープンすることができました。
上乗さん:
「1月の1日にああいう揺れが起こって、4月の第1週に無事オープンできて正直ホッとしている」
まだ雪が残っていた先月のケロン村。
村長の上乗秀雄(じょうのりひでお)さんとその孫・拓夢(たくむ)さんです。
村の再開に向けてキッチンで作業をしていました。
上乗さん:
「久しぶりのパン作りだから、手順がなあ(笑)」
ケロン村名物、米粉のパン。
石窯が崩れ、電気オーブンを使うことになったため焼き具合を確かめていました。
今年から運営に加わった拓夢(たくむ)さん。
上乗さんの妻、純子さんからパン作りを教わります。
純子さん:
「回って結ぶくらい」
拓夢さん:
「また難しいこと言うね」
上乗さん:
「がんばれがんばれ拓夢くん」
震災後、初めてのパンが焼きあがりました。
「かわいいから食べづらいな…うんま!あっつ!めちゃくちゃおいしいです」
「うん、電気でも大丈夫やな」
パン作りの次は、ケロン村おなじみの遊具作りです。
実はこの遊具…
上乗さん:
「これ孫のためにね、デビューのために今年新しく作ったの。これがまだ仕上がってない」
拓夢さんのケロン村デビューを記念して上乗さんが手作りしたもので、最後の仕上げを残しておきました。
上乗さん:
「あ~いいねえ、」
Q完成ですか?
「こんで完成やね、拓夢の初乗り」
「震災でどうなるか厳しいことですから分かりませんけど、こんながにしてケロンを続けられたらな、幸せだなと思うんだけどなぁ…ダメかなぁ…」
だんだんと再開の日が見えてきました。
村の再開まであと4日となったこの日。
急ピッチで進めてきた準備も最終段階です。
拓夢さん:
「ここも石が落ちていたんですけど全部改修して、人が通れるくらいにした」
崩れた石垣でふさがれていた通路は…この通り。
足の踏み場がなかったツリーハウスの中も…ここまで片付きました。
村が少しずつ元の姿を取り戻していく中
上乗さん:
「途中、山にいっぱい亀裂が入っているんですよ。地割れもしてるしがけ崩れの心配があるから」
復旧は進みましたがいまだ危険な場所が残っているため立ち入り禁止の札を設置します。
その札はシンボルの水車小屋にも。
拓夢さん:
「自然って時にはこういう形にもなるという、一つの新しい勉強や学びになると思うので」
自然の素晴らしさと同時に恐ろしさも学んでほしい。
土台が崩れた水車小屋はあえてこのままにしておくことに決めました。
それでも変わらないものもあります。
拓夢さん:
「ここにおたまじゃくしもいっぱいいるんですよ、うれしいね」
ケロン村を作り始めた15年以上前。
上乗さんを迎えてくれたのはにぎやかなカエルの鳴き声。
「ケロン村」の由来でもあるカエルは特別な存在です。
最後の仕上げは子どもたちを出迎えるのぼり旗の交換です。
上乗さん:
「いったいったいった!OK!」
「はい敬礼!一年間頑張ってくれ!」
「(全面オープンではないけど)子供たち・お客さんを迎える体制ができたのかなと。旗を上げられたということはなんとかなると思うから感無量です」
そして迎えたケロン村再開の日。
上乗さん:
「おはようございます」
「いい天気やね~、最高」
Qきょうは何時に起きて来た?
「きょうは3時に起きて3時半ごろにはここにきました、太陽がサッと上がって行くのを見ながらパンを焼いていました」
拓夢さん:
「できることは全力で全てやったかなって感じなのであとは流れに身を任せて頑張ろうかなと」
震災の後は作業服ばかり着ていた上乗さんですが…
上乗さん:
「エプロン姿で帽子を被るとね、営業モードになるんです」
店に並ぶのは 試行錯誤の末にこんがりと焼き上げたパン。
ピザ窯にも火を入れ準備は万端です。
そして待ちに待った時が…
上乗さん:
「翔ちゃん~!もう6年生やじ?デカなったなあ~」
「おじちゃん!ウインナーパンほしい一個」
ケロン村での出会いをきっかけに親友になったというこの2人。
子どもたちにとってもケロン村は大切な場所です。
その後も知らせを聞いた人たちが再開を祝いに村を訪れました。
しかし子どもたちであふれていた以前のケロン村の姿にすぐに戻ることは難しいようです。
上乗さん:
「子供の事情もある。それ以上に大人のお家をなんとかしないといけないとか。だって来るのも大変だもん。そういう点ではちょっとさみしい。それでもいいお天気だから気持ちよくいろんな人に会えて嬉しい一日です」
結局、この日やって来た子どもは3人だけ。
それでも村の再開は大きな一歩だと上乗さんたちは感じています。
上乗さん:
「全然違うね、ああしてのんびりとあっちいったりこっち行ったりしながら遊んでくれるのは楽しみやね」
Qこの光景が見たかったんですよね?
「そういうこと、これが見たかったの」
例え今は難しくても子どもたちが笑顔で帰ってくるその日まで。
思う存分遊べる環境を整え上乗さんたちは待ち続けます。