2023年11月に引退した奥出雲おろち号に代わる観光列車「あめつち」が、4月7日からJR木次線に乗り入れを始めました。木次線での運行区間を短縮、運行日数も削減され、その効果をどこまで広げられるかが沿線地域の課題となっています。

満開の桜の下を颯爽と駆け抜けるJR西日本の観光列車「あめつち」。2023年11月に引退した観光トロッコ列車・奥出雲おろち号に代わって、JR木次線への乗り入れを始めました。運行初日は、定員の59席が満席となりました。

乗客
「景色とか風情とか伝わって心に響いた」

見学客
「楽しかった、あめつちに乗りたいくらいだった」

山里の風景を満喫する一方、乗客からはこんな声も…。

乗客
「この先の方が好きなところなので、向こうまで行けたらいいなというのはある」「もう出雲横田より南は観光列車がなくなったので、廃線になるのではと心配している」

奥出雲おろち号は、雲南市の木次駅から広島県庄原市の備後落合駅まで運行されていましたが、あとを継いだ「あめつち」の運行区間は奥出雲町の出雲横田駅まで。
9月までの運行日数も22日と、去年の「おろち号」に比べると2割程度にとどまります。運行区間の短縮により、全国でも珍しい出雲坂根駅の三段式スイッチバック、木次線最大の見どころともいえる名所を「あめつち」が走ることはありません。かつては三段式スイッチバックを通過し、急こう配を登り切った「おろち号」を眺めることができた展望台近くの「道の駅奥出雲おろちループ」。
6日、7日の2日間に訪れた人は765人と、2023年の同じ時期の7割ほどにとどまりました。

道の駅おろちループ・藤原紘子駅長
「団体のバスツアーもなくなって寂しくなった。ここから見る景色も誇れるものなので、宣伝しながら道の駅としてできることをやっていこうと思う」

観光列車に乗ったままスイッチバックを通過できなくなったことを受けて、奥出雲町観光協会は、「あめつち」の乗客向けに道の駅など町内の施設を巡り、普通列車に乗り換えてスイッチバックを体験できるツアーの販売を新たに始めましたが、初日の利用者はなく、4月中の予約も入っていないということです。

雲南市・石飛市長
「観光というのはなかなか難しい。やり始めてそれが口コミで広がっていく。この良さを伝えていくことをしっかりやっていきたい」

木次線利活用推進協議会の会長を務める雲南市の石飛市長は、今後観光列車の効果を沿線地域に広げる周遊観光を早い時期に軌道に乗せたいとしています。JR西日本のローカル線の中でも利用者が特に少なく、厳しい運行環境となっている木次線。おろち号のラストラン特需がなくなった2024年、バトンを継いだ「あめつち」の効果をどこまで広げられるか、路線の存続をめぐる議論にも影響が及びかねない「待ったなし」の課題となっています。

TSKさんいん中央テレビ
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