日本腎臓学会が、全国の医療機関への調査結果を公表し、「短期間の服用での発症」もあったことなどが明らかになった。

また関西テレビが「紅麹」の流通先を調べると、広がりを把握しきれない実態が見えてきた。

【動画】「短期間の服用での発症も」日本腎臓学会が公表 小林製薬「紅麹」サプリ 紅麹原料の流通先は全容解明困難

■日本腎臓学会がアンケート結果を公表「30代から70代、女性が多め、1年以上サプリ服用」

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健康被害が広がっている小林製薬のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」。摂取した人に腎疾患などの症状が相次ぎ、これまでに5人が死亡し、のべ157人が入院したことが明らかになっている。

そんな中、日本腎臓学会は独自で行ったアンケート調査の中間報告を公表。 全国の医師が診察した47の症例が報告され、患者の年代は30代から70代までで、やや女性が多い傾向があること、約4割の患者が1年以上前からサプリを摂取していたことなどが明らかになった。

また、これまで健康被害が報告されていたサプリとは別に、「ナイシヘルプ+コレステロール」を摂取し、腎障害を発症した症例もあったということだ。

■倦怠感などの体調不良が起こる「ファンコーニ症候群」

さらに、1つの症例を除き、全てで見られたのが薬害と関連して起きる「ファンコーニ症候群」。尿細管と呼ばれる、尿から必要な栄養素などを再吸収する腎臓の機能が低下することで、倦怠感などの体調不良を引き起こす。

大阪市立総合医療センター腎臓・高血圧内科 森川貴医師
大阪市立総合医療センター腎臓・高血圧内科 森川貴医師

この調査に協力した大阪市立総合医療センターでは、「紅麹コレステヘルプ」を摂取したのち、腎疾患を発症して受診した女性の症例を報告した。

大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧内科 森川貴医師:(患者は)だるさ、食欲不振、胃腸障害があり、検査をしたら腎臓が弱っていて、尿に尿細管間質障害のようなマーカーが出ていて、(中間報告の症状に)よく当てはまる方だったんだなと。

また、中間報告から「短期間の摂取でも発症すること」、「摂取をやめると回復傾向が見られること」も分かった。

大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧内科森川貴医師:(報告症例の)4分の3ぐらいの方は、薬(紅麹サプリ)をやめると回復している。しかし残りの方は、戻っていないので、注意が必要。(摂取をやめるのが)早ければ早い方が、腎機能を回復する手だてもある、早くに受診することが大事。

■「紅麹」流通先企業も対応に苦慮「紅麹に固執しない方がいいのでは」

健康被害が相次ぐ紅麹の原料はどこまで流通しているのだろうか。

厚生労働省が3月28日に、小林製薬の紅麹原料を使用していた会社のリストを公表した。健康に良いなどと紅麹は人気を集め、味噌などの食品やサプリメントなど流通先は多岐にわたる。

小林製薬から紅麹原料を仕入れていた52社と、そこから原料を入手していた173社が明らかになった。

関西テレビは公表された関西の企業約30社を取材。そのうちの1社は商品の製造を今後、どうするか頭を悩ませていた。

紅麹原料仕入れ企業:うちの主力の製品でもあるので、置き換えや代替をどうするか。代わりに買ってきた紅麹を入れて、同じ製品になるかが問題。紅麹に固執しない方がいいのではないか…

■「完全回収は難しいんじゃ…」把握しきれないほど流通が広がっている

そしてさらに取材を進めると…
記者リポート:こちらの会社は小林製薬の紅麹原料を使っていた企業のうちの1社ですが、ここからさらに別の会社に出荷されていたということです。

こちらのサプリメントの加工会社では、商社から仕入れた紅麹原料を、カプセルに詰めて、別の会社2社に出荷していた。しかし、その先は把握していなかったという。

サプリ加工会社:販社(販売会社)の詳細までは分からないです。こっちはそこ(販売商品)まで関与していない。
(Q.それは珍しくない?)珍しくないですね。完全回収は難しいんじゃないですか。

小林製薬と厚労省が把握している173社から、別の会社にも多く流通していることが明らかになっている。

小林製薬も3月の会見で…
小林製薬 小林章浩社長:全容の解明には至っていません。企業数については、その他もあると思っています。

紅麹は色素として使われることも多く、専門家は供給先の特定には時間がかかると話す。

近畿大学産業理工学部 大貫宏一郎非常勤講師:言われてみたら、紅麹だったというところもある。ただ色素だけとなると、どこから仕入れたか、分かりようがない。(供給先の特定は)時間がかかりますし、網羅するのは難しい。

帝国データバンクによると、小林製薬の紅麹原料を仕入れていた会社と取引していたのは、最大で4882社。事態の収拾まで対応の長期化が想定される。

■日本産ブランドの信頼の低下が懸念される

小林製薬の紅麹原料が、どこまで流通したのか把握が難しいようだ。問題となった紅麹原料だが、小林製薬の自社サプリに使われていたものの他にも、52社にサプリ用や食品用として供給されていたこと、さらにその先のメーカー173社まで供給されていた事は分かっているが、そこからさらに拡大している可能性もある。この問題は海外でも健康被害の影響が出ており、日本ブランドの信頼に関わる事態となっている。

大阪大学大学院 安田洋祐教授:今回のものが海外で被害出ているかは、ちょっと分からないですが、日本で被害が出たことを受けて、中国や台湾での自主回収はすでに始まっています。小林製薬だけではなく、日本産のサプリや健康管理の食品って、かつて爆買いされるほど人気がありました。ここでの対応であるとか、原因究明が後手後手になってしまうと、そういった日本ブランド、健康関連の食品やサプリに関するブランド力の低下につながることも懸念されると思います。

不安を抱えている方が多い中、一刻も早い原因究明が待たれる。

(関西テレビ「newsランナー」2024年4月2日放送)

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