岩手県陸前高田市の寺に東日本大震災で犠牲になった人の名前を毎日一人一人読み上げて供養している住職がいます。
発生から13年経った3月11日も、それぞれの在りし日をしのんで鎮魂の祈りをささげました。

陸前高田市にある荘厳寺の住職・高橋月麿さん(77)です。
高橋さんが読み上げているのは東日本大震災による死者・行方不明者の名前。
毎日、犠牲者の名前を声に出すことでその魂を供養しているのです。

荘厳寺 住職 高橋月麿さん
「朝のお勤めの一つ。(犠牲者の名を)何回も読んでいると俺の中に生きているような感じになる。姿は見えないけれども」

岩手県だけではなく宮城県や福島県など県外の犠牲者を含む1万5794人の名前が記された半紙。
高橋さんはこれを約1000人分ずつ毎日欠かさず語りかけるように読み上げています。

荘厳寺 住職 高橋月麿さん
「友達みたいというか『そっちのほうはどうだ、楽しいか』とそういう感じ」

名前がわかるすべての犠牲者を供養したいと高橋さんが新聞の報道などをもとに死者・行方不明者の名前を調べ書き出し始めたのは4年前。
半紙の中に名前がない犠牲者がいるとわかれば、その度に書き加えているといいます。

そして2024年は、別の災害の犠牲者の名前も書き加えています。
元日の能登半島地震の犠牲者です。その数は126人。
東日本大震災で亡くなった人たちと同じように弔いたいという思いからです。

荘厳寺 住職 高橋月麿さん
「輪島市・珠洲市など(名前が)わかる人は全部書いてある。能登でも同じ悲しみを感じていると思う。共通点はそこにあると思う」

東日本大震災の発生から13年が経った11日は、市内に住む女性が娘とともに初めてこの寺を訪れました。
探していたのは津波により13歳で亡くなった息子・村上駿大さんの名前です。

亡くなった駿大さんの母 村上貴美さん
「檀家ではなくても関係なく、こんなに住職が名前を書いてくれてすごいなと思う」

亡くなった駿大さんの姉 村上綾菜さん
「(弟の名前を)最初に見つけた。ぱっと目の前に出てきた。『すごいな』と『きょうだいだな』と思った」

そして迎えた発生時刻の午後2時46分。
寺に追悼の鐘が響きました。その数は11回。
命日の11日を忘れないようにという高橋さんの思いが込められていました。

犠牲者に思いを寄せ続ける高橋さん。
これからも変わらず1万5000を超える魂に向き合うと決めています。

荘厳寺 住職 高橋月麿さん
「自分の声が出る間はずっと(続ける)。これはたぶん自分に染み付いた癖なんだろうな」

陸前高田市で静かに読み上げられる亡き人の名前。
それぞれの在りし日をしのぶ鎮魂の祈りが絶えることなく捧げられています。

岩手めんこいテレビ
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