データ提供 PR TIMES
本記事の内容に関するお問い合わせ、または掲載についてのお問い合わせは株式会社 PR TIMES (release_fujitv@prtimes.co.jp)までご連絡ください。また、製品・サービスなどに関するお問い合わせに関しましては、それぞれの発表企業・団体にご連絡ください。


「地域の資源を活かし、世界一楽しみ、街に賑わいを創る」。


これが、私たち株式会社多可町地域商社RAKU(以降、(株)多可町地域商社RAKU)の大命題です。


「商社」の前に「地域」の2文字がつくのは、「町に稼げる仕組みを作り、町への還元を目指す」から。民間事業所であれば、稼ぎは社員・スタッフで分け合ったり、株主に還元したりしますが、弊社が取り組むどの事業も、稼いだお金の使い道は、運営費を除いて、町に投資します。


また、一般的に商社といえば自社の商品やサービスを販売・提供したい企業と、それらの商品やサービスを購入したい企業の取引を仲介する業態です。一方、商社の機能を残しながら、生産者に近い立場で作り手と一緒になって生産・単価の向上に取り組みます。



弊社も兵庫県の多可町を拠点に、地域の農家や特産品の加工事業者さん、自治体の関連施設と一体となり、事業を行ってきました。そんな中、2023年に取り組みを始めたのが「農で賑わいを創る事業」です。


全国の過疎地域と同じように、多可町も農家の高齢化や人手・後継者不足、若者の流出といった課題が山積みです。


これに対し、豊富な経験をお持ちのプロ農家のお力を借りながら、「SMAUT(移住希望者向けのマッチングサービス)」と県が推進する“「農」に携わる人材確保モデル支援事業”を掛け合わせ、新たなスキームを構築しました。


本日は私、寺川敏博が、この取り組みについてお話します。




(株)多可町地域商社RAKUとは?

移住者としての願い


(株)多可町地域商社RAKUは2020年に任意団体の事業部として始まり、2022年に株式会社化。私が代表取締役に就任しました。


本拠地は兵庫県の多可町。多可町は兵庫県のみならず、日本の真ん中辺りにある自治体です。面積の約80%を森林が占め、県内の方でも「多可町……?」と首をかしげるなど、知名度はそれほどでもありません(笑)


また、「日本は2040年頃までに、896の​自治体が​消滅する」※と​言われていますが、ここに多可町も入っています。

※「日本創成会議 人口減少問題検討分科会」が2014年に発表


弊社のスタッフは、代表取締役である私を含め、全員が移住者です。住民の皆さんや事業所の方々に支えられ、受け入れられ、仕事ができています。


お世話になった多可町をなくしたくない ―― この思いを「特産品」「定住促進」「観光」の3領域の事業に託しています。

働く場所と住む場所


私は地域振興を進める際、「働く場所」と「住む場所」が欠かせないと考えています。


まず、働く場所があり、物が売れ、サービスが広がることで、地域の経済は活性化し、雇用も生まれ、「働く場所」ができる。


その過程で創り出されるのが「賑わい」です。


同時に、住む場所も必要不可欠といえます。住まいがあるからこそ暮らしが安定し、職場に働きに出られ、家族と穏やかな時間が過ごせる。



このことから、「働く場所」と「住む場所」を確保し、移住を希望する方にご紹介すべく、弊社は「特産品」と「観光」、「定住推進」の事業に取り組んでいます。


本日、ご案内する「農で賑わいを創る事業」も同じです。


働く場所と住む場所、どちらが欠けても農のスキームは成り立たないことから、「特産品」と「定住推進」の重なり合う領域で事業を立ち上げました。


「農で賑わいを創る事業」のスキーム

参加者のメリット ~ニーズを叶える選択肢



「農で賑わいを創る事業」、柱は2本あります。


柱の1つは「農ツアー」です。



多可町には様々な農家がいます。


たとえば、有機JASの圃場で野菜を育てる個人農家。ご夫婦で営農されているのですが、保存していた種から伝統野菜を復活させたり、栽培した有機の白菜が全国コンテストで最優秀賞の評価を得たりと、ご活躍が続きます。


また、生命科学の道から農業に転身した若き経営者さんも、頼れる農家の代表格。この方が切り盛りする法人は、有機農法と慣行農法のハイブリッドで利益を確保し、町内に農地と雇用を広げています。


「多可町農ツアー」は、こうした農家を巡りながら、参加された方が興味・関心事を直に尋ねたり、農家から町の魅力を伝えてもらったりするアットホームなプログラムです。


もう1つの柱が「農業インターン」。



こちらは本格的な研修プログラムです。移住・就農希望者や農業を本格化させたい方から応募をいただき、ご希望をヒアリングします。


有機JASの圃場で畝をつくって苗の植え替えをしたり、秘伝の肥料づくりや種取りを教わったり ―― 参加者ごとにオリジナルのプログラムに取り組んでもらう、実践的・専門的なインターンです。


また、生産のみならず、販売会の参加・接客方法など、販売以外の収入源についてもレクチャー。強い農家として自立するヒントを得られる研修内容で、お迎えしています。


農家のメリット ~講師として謝金をお渡し


「農で賑わいを創る事業」は、農家にもメリットがあるように企画しました。


弊社は農家が健全かつ持続的に営農するには、販売以外の「収入源」が大事だと思っています。そのため、ツアーやインターンにご協力いただく際も、謝金をお渡ししているんです。


「農家は食えないのでは?」とか、「稼げないので、自分の子どもに継がせない」といった声……みなさんも、どこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか?


たしかに、小規模の水田で稲作をしようとしたら、年金など、農業の他に収入源がなければ、暮らしは成り立ちません。環境の持続可能性を重んじ、土壌や農法にこだわって野菜を作る農家ほど、作物の出荷だけでは営農が厳しいのも現実です。



しかし、こだわりを持って農業に打ち込む方は、知識や技術を得ることに積極的。また、独自の経験を積まれているから言葉に力が宿り、聞き手の心を動かします。


ちょうど2023年、兵庫県が“「農」に携わる人材確保モデル支援事業”に対する補助金制度を立ち上げたこともあり、ツアーにご協力いただいた農家さんに、謝金をお渡しするスキームが成立しました。


「賑わい」の兆しと改善点

会話を弾ませる農家と参加者


2023年の夏、「農で賑わいを創る事業」はスタート。第1回目の農業ツアーは農家、参加者ともに表情が固く、同行した弊社も緊張があって……(笑)


でも、あっという間でした。農業について話始めた途端、どんどん活気が湧き、「この時間がずっと続いたらいいのに」という空気になった。これは、2回目、3回目のツアーにしても、インターンにしても同じでした。


弊社が掲げるミッション ―― 「地域の資源を活かし、世界一楽しみ、街に賑わいを創る」が、まさに実現された感じ。瞬く間に打ち解けあい、会話を弾ませる農家と参加者の様子こそ、「賑わい」だなぁと。



実際、参加者の一人は「多可町の農家さんは、知識もなにもない私に温かく、とっても詳しく教えてくださって……農業ってどうやったらいいのか? 自分のやり方は間違っているんじゃないか?って、ずっと一人でもがいてましたけど、ヒントが見つかった気がします」と喜んでくれました。


さらに、こんなお話も ――


コロナ禍で約2年、部屋に閉じこもるような暮らしだったんです。失った時間を取り戻したい思いがあって、土や肥料に触れたくなって……多可町に来て、畑で土を掘り、苗を植えていたら、初めて身をもって感じることばかりだった。


インターネット上の情報をリサーチしてるのと、まるで違うんですよね。体で感じて、自然の感触がどんどん入ってくる。お話にしても、染みました。直接、皆さんにお会いできることにこそ価値があると、しみじみ感じています」


私は感想を聞き、「この瞬間のために仕事をしている」と思いました。


集客の難しさ


反省点もあります。大人数の集客……これには苦労しました。


弊社は「SMAUT」という移住希望者向けのマッチングサービスを使い、募集記事を公開し、登録ユーザーに連絡しました。チラシも制作し、「やれることはやったから、応募があるはず!」と思っていたんです。


ところが、蓋を開けてみると……(苦笑)


もう少し、参加者の住まいや思い、農業や移住へのニーズ、農業の経験値を事前にヒアリングするべきでした。その上で、農家とのマッチングや企画を整えたら、より充実したご提案ができた。オンラインの事前説明会も活用すればよかった。


募集の仕方にも反省があります。


弊社は、地域性とプログラムを前面に打ち出し、募集を行いました。ただ、まずは農業に関心があるビギナー向けに、「田舎の山の中で土と触れ合う!」とか、「森林地帯80%の田舎の田畑で、自然を満喫する」といった、より応募しやすい入り口をつくれば、参加者が増えたかもしれません。


多可町ならではの「賑わい」づくりに挑む


改善点も踏まえ、今年度の「農で賑わいを創る事業」は成功だったと思っています。


参加者が少なかったからこそ、一人ひとりに、量より質 ―― その方の人生に向き合う距離感で農家がアドバイスし、それを受け、また参加者が真剣に問いかけるやりとりが何度もあった。開催した意味がありました。


結局、大事なことはシンプルなんですね。社会を作っていくのは、人。作り手、売り手、お客さま ―― みんなの顔を見ながら話して、接して、進んでいく。これって、今後、社会がどう変わろうと、絶対に欠かせませんよね。


私たちの仕事は、そんな「顔が見える仕組み」を作り、経済や町を活性化させること。「賑わい」を生み出す環境を整えること。それを、泥臭いやり方を厭わず、進めて行くこと。



テクノロジーが発達し、「AIの世紀」ともいわれる時代です。「畑」や「土壌」なんて、いってみれば最もアナログなメディアじゃないですか? 技術革新がはなはだしい歴史の最先端で、土に触れ、土に集って、賑わいを創る。面白いコントラストだし、我ながら、やり甲斐がある仕事だと思っています!


「農で賑わいを創る事業」は、来年度も継続。先ほどの反省点を改善しつつ、質を追求をしていきます。それに加え、まったく異なる切り口でも「賑わい」を作りたい。



たとえば、多可町には西日本最大のラベンダーパークがあるんですが、弊社は共同で商品やサービスを開発中です。


また、杉原紙という伝統和紙の産地でもある多可町には、いまでも職人が手によりをかけ、良質な和紙を漉いている。これを素材に、現代的なプロダクトの企画・生産も進めているんです。



ラベンダーにせよ、杉原紙にせよ、生産者は原料や製法にこだわって、汗水垂らし、大変な労力をかけて生産にいそしんでおられます。


でも、長年の苦労が故に、「なかなか売れない」とか「続けて意味があるのか」といった声もあって……悔しいんですよ、本当にいいもの、本物を作ってる方々なのに。


弊社が商品開発をしたり、新たなプロジェクトを立ち上げたりすると、生産者が「この企画、面白いね」とか「今までと違った成果が得られそうだ」と表情を変えてくれるんです。パッと明るくなって、活気に溢れて。


私は、あの瞬間こそ「賑わい」だと思っています。


さらに、新しい取り組みで成功体験を積んでもらえたら、「自分たちは、この地域ならでは物作りに貢献しているんだ」と気持ちを新たに、誇りを持ってくださるのでは ――


新たな切り口が増え、動き始めたら……点と点でがんばる事業者に活気が生まれ、皆さんがつながり、やがて線になる。地域に緊密で細かなネットワークが生まれます。栄養たっぷりな野菜がすくすくと育つ、豊かな田畑のような、つよい地域になっていく。


私は、そんな風に賑わう、この町の未来をイメージしています。




行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ
PR TIMES
PR TIMES