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まちが抱える様々な課題を解決するために、まちの魅力を考える

 島根県飯南町は中国山地の脊梁部に位置する人口約4,500人の町です。町の面積の約9割が森林という環境や温泉、食などの地域資源が評価され、森林浴の癒し効果を医学的に解明した「森林セラピー🄬」基地としても認定されています。数々の魅力がある町ですが、人口は減少を続けており、それに伴い農業の担い手不足、地域コミュニティの維持など様々な課題を抱えてもいます。

 

そのような状況のなか、まちに暮らす人たちの声を聞く町政座談会や、町外在住者が飯南町に対してどのような考えを持っているのかを探るアンケートを実施しました。その結果、「町が目指す方向性がわかりづらい」「情報発信不足」「人とつながる場が少ない」「まちを応援したいけど、方法がわからない」という4つの大きな課題が挙げられました。これらの課題を解決するためには行政だけの取組では解決できません。まちに暮らす住民が地域に関心を持ち、積極的に行動するしくみが必要です。そこで、ブランドメッセージ「余白あります。」で表現されるまちの魅力を記した本づくりを、住民と行政が一緒になってスタートしました。




まちの多彩な魅力を一言で表す言葉。その意味を伝えるための本

「余白あります。」

豊かな山々や、透き通る川、広々とした空に囲まれた風景には、

ワクワクして飛び込みたくなる世界が。

のんびり、ゆっくり時間が流れる暮らしには、

ホッとする心のゆとりが。

いろんな人が協力し合って生み出す、新しい挑戦には、

ドキドキする可能性が。

飯南町、あいてます。




 「余白あります。」という言葉は、広々とした空間、自分らしい暮らしを楽しむ余裕、無いものはつくり出せるという未来への可能性など様々な意味を含んでいます。こうしたまちの暮らしの魅力を、じっくりと伝えるための方法として本を作ることにしました。

 行政機関が発行する本というと、観光ブックなどがイメージされるのではないでしょうか。しかし、今回私たちが作りたかったのは、まちの「余白」とそれを作り出している住民の暮らしぶりを伝える本。そして、書店での販売を予定しているため、買うだけの価値を本に持たせなければいけませんでした。

 本のコンセプトや見せ方など、出版社と何度も企画会議を行いましたが、なかなか全員が納得できる企画案や取材先が決まらず、協議は難航。本の完成形がイメージできず、時間ばかりが過ぎていき、本当に完成するのかと焦りが募りました。

 その中でも、欠かせないコンテンツとして決まっていたのは「住民がライターとして記事を書く」こと。まちの魅力は行政だけが発信するものではなく、住民も一緒になって発信してこそ意味があるという思いからです。本全体の企画案づくりと並行し、住民による記事づくりプロジェクトもスタートしました。


住民による記事づくりプロジェクトがスタート。「ローカルジャーナリスト」という考え方

 プロジェクトに参加したのは中学生から70代までの11名。この11名に本の中心となる部分を執筆してもらいました。全員本を書くのははじめて。半年間の連続講座で記事を書く心構えや取材のコツを学びました。

地域の魅力は地域に暮らす人が発信していこう、という島根県発の「ローカルジャーナリスト」という考え方を学び、自身が感じる地域の魅力を語り合いながら記事のテーマを決めていきました。難しかったのは字数制限に合わせて内容を書き直したり、誰が読んでもわかるように言葉を選ぶこと。参加者同士で何度も読み合わせをしながら、修正を繰り返しました。

 記事が完成し、参加者の方からは「普段からまちの魅力をたくさんの人に知ってほしいと思っていた。自分の言葉で発信できることが嬉しい。」「まちづくりは行政がするものだと思っていたが違った。」と嬉しい感想も寄せられました。



最後まで決まらなかったタイトルと表紙の写真。打開の決め手となった奇跡の写真

 住民による記事が完成する頃、プロのライターによる住民インタビューや、写真家による撮影も進み、本の目次が少しずつ埋まりつつありました。しかし、最後まで決まらなかったのがタイトルと表紙の写真。飯南町らしい風景といえば冬場の雪景色ですが、吹雪だったり溶けてしまったりと天候に左右されます。タイミングが合わなければまたゼロから表紙候補の写真を考えなければいけませんが、印刷の締切も迫っています。

 写真家の方が東京からわざわざ来てくださった日、連日の積雪と低温のため、あたり一面真っ白の景色が広がりました。早朝から住民の方、出版社の方、職員が協力して撮影場所を準備し、吹雪の晴れ間に奇跡的な一枚が撮影できました。そして、表紙写真に添えたタイトルは「余白の中で。」。一見何もなくて退屈そうだけど、そうじゃない。可能性を自分でどんどん広げていける生き方。取材やプロジェクトを通して出会った住民の皆さんは、だれもが余白の中でいきいきと楽しそうに暮らしていました。「これからも、余白とともに生きていく」そうした決意も込めたタイトルです。



ついに完成した本。多くの反響と、本をきっかけとしたつながりづくり 

 完成した本は2023年4月に発売。全国の書店やインターネット販売を中心に、予想を上回る販売数となっています。また、本に登場した住民へメディアから取材があったり、住民へのお仕事の依頼も相次いだそうです。町を離れた出身者の方がSNSで紹介してくれ、多くの反響がありました。

 また、住民ライターと一緒に首都圏でトークイベントやワークショップを開催するなど、本をきっかけとした企画も行っています。

 町の課題として挙げられていた「町が目指す方向性がわかりづらい」「情報発信不足」「人とつながる場が少ない」「まちを応援したいけど、方法がわからない」という点を解決するために取り組んだ本づくり。行政だけでなく、多くの住民が関わるきっかけを作ることで、住民がまちに関心を持って行動することにつながってきています。



本になるくらい面白いまち。まちをつくるのはそこに暮らす人々。

 本づくりを通して感じたのは「このまち、本になるくらい面白い」ということ。どの人にも物語があり、聞いているとわくわくしたり、思わず涙がこぼれたり。見慣れた景色の中にも、それを守る人たちの汗が流れていたり。住民の人と会い、話を聞くたびに、どんどんまちの魅力が増してきました。何気ない暮らしも、目を凝らしてみると違う世界が見えてくる。それは飯南町だけではなく、どのまちでも言えることではないでしょうか。

 自分らしい暮らしを楽しみながらも、まちのことを本気で好きになり、未来のために行動する。そんな住民が一人でも増えることが、まちを守ることにつながると感じました。




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