国内有数のウルシの産地・岩手県八幡平市安代地区でつくられている漆器の「安比塗」は、日常に溶け込むシンプルなデザインが特長だ。

「八幡平市安代漆工技術研究センター」では、その未来を担う人材育成が行われている。

指導を行っている八幡理恵子さんは、センターの卒業生で約20年たった今も安比塗の技術をつないでいる。

八幡平市安代漆工技術研究センター 技師 八幡理恵子さん
「安比塗は荒沢漆器と呼ばれていた漆器が、一度、産業として衰退してしまって、それを復興させるためにつくられた塗り物の名前です。独特な黒みと赤みっていうのは美しいと感じますね」

1983年に、この施設が開設された。
基本的には2年間で安比塗の技術を基礎から学ぶ。県内はもとより、全国・海外からも研修に訪れる。

現在学んでいる5人の中から2023年の4月に入所した2人を紹介する。
1人目は東京都出身の三浦千恵さん。

八幡平市安代漆工技術研究センター 研修生 三浦千恵さん
「伝統文化に興味があって、人生第二のステージにいくため手に職を付けたかった。それまでは、美術ディレクターとして時代劇を担当していた時に、よく工芸品に触れていた。そこからだんだん興味を持ち始めて最終的に漆にたどり着いた」

Q:安比塗の特長である繊細な塗りの技術、難しいポイントは?

八幡平市安代漆工技術研究センター 研修生 三浦千恵さん
「はけに乗せる漆の量がつかめていない。(漆の量が)多すぎてしまうと垂れたり縮んだり、きれいじゃない仕上がりになることがある。その感覚をつかむのが、本当に難しい。先輩方は簡単に塗っているように見えるが、全然そういうふうにはいかない」

2人目は八戸市出身の大里奈々子さん。
岩手大学に在学中にものづくりに興味を持ったという。

八幡平市安代漆工技術研究センター 研修生 大里奈々子さん
「自分が作ったものを売って、それで生活できるようになりたい。ここだと漆のことを1から10まで全部勉強できる」
「おわんを持つ手を回して塗るので、そこがスムーズにいかなかったり震えてしまうところとか。なみなみになるのが無くなるように、もっと練習していかなくてはならない」

また、研修2年目の菊池可恋さんは4月からセンターの近くにある「安比塗漆器工房」に移る。
この工房では技術を高めたり、作ったものを売ったりするノウハウなどが学べる。

センターでの学びを終え、現在工房でその腕を磨いている齊藤志保さんは地元の出身だ。

八幡平市安代漆工技術研究センター 専攻課程 齊藤志保さん
「地元を離れるまで安比塗の存在を知らなかった。いいものがあるのなら伝えていかなくては、絶やしてはいけないと思った」

Q:これから安比塗について思うことは?

八幡平市安代漆工技術研究センター 専攻課程 齊藤志保さん
「ここに入る前と今とではイメージが全然違う。どうしても(漆器は)ハレの日に使うイメージが強かったが、耐久性もある日常使いできるようにしていきたい。まずは知ってもらって使う人が増えればいい」

「安比塗漆器工房」では展示販売も行っていて、安比塗の体験もできる。

最後に、研修1年目の三浦さんと大里さんに意気込みを聞いてみた。

八幡平市安代漆工技術研究センター 研修生 三浦千恵さん
「毎日がトライアンドエラーで今もずっと修正をしている」
「(Q:でも着実に進んでいる?)そう信じています」

八幡平市安代漆工技術研究センター 研修生 大里奈々子さん
「自分が作ったものが、人々の生活になじんでいってくれたらいいという思いはある」

岩手めんこいテレビ
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