「一緒に登っていた人が、低体温症で動けなくなっている」

10月6日午後0時20分ごろ、栃木県那須町にある朝日岳の登山者から通報がありました。

この記事の画像(17枚)

翌日4人の遺体が見つかり、低体温症で60歳以上の男女が亡くなりました。
警察によると、現場は岩場の多い登山道で、遺体はそれぞれ別の場所で発見されました。

「小学生でも登っていける山」も強風で一変か?

事故があった朝日岳は、標高1896メートル。那須連山の一つで、8日も多くの登山者が訪れていました。登山者に話を聞くと…。

朝日岳に登ったことのある登山歴20年以上の男性:
楽しめる山なんだと思うんですけどね。小学生でも登っていける山なんで。

栃木県などによると、駐車場から山頂までの往復の歩行時間は3時間ほど。天気が良好な場合、必要な体力は10段階中「2」とされています。
しかし、事故が起きたその日は…。

登山口にある土産物店店主:
風がものすごい風だったんで。50年以上いるけど、危ないっていう感じでしたね。

さらに…。

那須ロープウェイの従業員:
20m/sを超えるような体があおられてしまうような強い風が吹いていました。
ロープウェイも午前中のうちは何とか動けていたんですが、午後はもう動かすのが危険という判断をしまして、午後3時をもって運休とさせていただきました。

紅葉シーズンのかき入れ時にもかかわらず、ロープウェイも運休に。
事故の当日、標高1390mにあるロープウェイの駅は最高気温が6.5℃、最低気温は4.5℃。強風注意報が発表され、朝日岳の登山道では、警察によると最大瞬間風速は80m/sにもなったといいます。

事故当日の朝撮影された写真を見ると、霧で包まれ遠くが見えないような状態で、天候はよくありませんでした。

事故当日の10月6日朝に撮影された写真
事故当日の10月6日朝に撮影された写真

「めざまし8」は8日、事故の現場となった朝日岳の登山道を取材。
普段であれば危険の少ない登山道が一転、命の危険のあるものに変わってしまう…そんな「強風の怖さ」が見えてきました。

朝日岳の登山道を取材 だんだんと風が強く視界も悪く…

ディレクター:
付近は木々に覆われてまして、まったくこの辺は風を感じることはないですね。

登り始めは周囲は木々で覆われている
登り始めは周囲は木々で覆われている

朝日岳山頂に向かう登山道。木々に囲まれ、登り始めは風をあまり感じません。
しかし、登り進めていくと…。

ディレクター:
登り始めて30分ぐらいですかね。あたりが開けてきました。ちょっとずつ風が出てきました。

登り始めて30分。周囲は開けて岩場が出現
登り始めて30分。周囲は開けて岩場が出現

木々がなくなり、風を遮るものがありません。この日の天候は穏やかで、頂上付近も確認できます。

ディレクター:
先ほどの所からさらに5分ほど登ってきましたが、いま朝日岳は完全に雲で隠れました。

そして遭難当時、風速20メートル以上の強風が吹きつけていたという場所にさしかかります。

ディレクター:
こちらは朝日岳までの中間地点です。ここは風が抜ける場所ということですが、手元の気温計は11.8℃です。

中間地点では風が強く吹く
中間地点では風が強く吹く

さらに進んでいくと、遺体が見つかった場所の近くにさしかかります。

登山者が撮影した映像(8日)
登山者が撮影した映像(8日)

現場付近には人1人がやっと歩ける幅の細く険しい登山道がありました。

風遭難の多い山…強風の怖さとは?

朝日岳に登ったことのある登山歴10年以上の男性:
多いんですよ。強風が吹くことが。荒れたときは厳しい。

朝日岳に登ったことのある登山歴20年以上の男性:
もともと風の強い山なんで、お年寄りのパーティーなんか、もう風が強くて、はいつくばったまんま動けなくなっちゃってとかありますので。

通報があった日の天候も、警察と消防による捜索が中断するほどの荒れ模様だったといいます。
朝日岳に100回以上登っている地元の山岳ガイドの松田さんは、この山の特徴についてこう話します。

日光・那須山岳ガイド協会 松田良代表:
樹木などで風をしのげる場所とか、雨風をしのげる場所というのはほとんどなくて。強い風が吹いたら吹きさらしの状態の中歩いていかなきゃいけないっていうルートなので。

左側に茶臼岳、右側に剣ヶ峰があるんですけど、その間が抜けているので、ここが偏西風の影響で風が一気に吹き付ける。風速1m/s増えると体感温度1℃下がるって言われているので。

遺体が発見された場所の近くの地形は、周囲よりくぼんでいて風が通りやすくなっていました。
事故当日は、朝日岳の特徴的な地形、そして強風と今シーズン一番の冷え込みが重なってしまったということです。
(めざまし8 10月9日放送より)