生き物が多く生息する「トンボ池」が存続の危機

施設の老朽化が進む佐賀市の神野公園。公園の再整備が行われる予定だが、焦点となっているのが、園内にある「トンボ池」だ。佐賀市の憩いの場をめぐり、利便性と貴重な動植物をどう守っていくのかその両立は可能なのか。

利用者:
春になったらトンボとか、いろいろな生き物が住んでいるから好き

利用者:
自然を楽しみに来るのもここに来る理由の一つ。なくしてほしくない

神野公園にあるトンボ池は1989年、トンボが住む環境を保全する「トンボ王国・さが」づくりのシンボルとして設置された。

この記事の画像(12枚)

佐賀市の中心部にありながら貴重な生き物が生息している場所だ。そのトンボ池に危機が…

佐賀市緑化推進課 武久巧課長:
公園内には小動物園、野外音楽堂、こども遊園地など各施設が混在していて、これらの施設や樹木などの老朽化が進んでいる。トンボ池については水草やヨシの成長が早く繁茂状態となっているときもある

市は2013年に老朽化などに伴う神野公園再整備に向け「神野公園あり方検討会」を立ち上げた。2017年にまとまった再整備案ではトンボ池などをなくし、駐車場の増設や新たに芝生広場を設けるとしている。

佐賀市緑化推進課 武久巧課長:
市民の皆さんから駐車場が狭い、少ないなどのご意見をいただいているので再整備の検討を行っている

神野公園のここ5年間の来園者数は平均すると年間約14万8000人。さらに園内のこども遊園地は、2018年度が約8万2000人と5年間で3割を超える伸びとなっていて、週末には県外からも家族連れが訪れるという。

それに対し園内6カ所ある駐車場の収容台数は170台、週末はグラウンドや近隣の公園を臨時駐車場として開放している状況だ。

利用者:
駐車場のスペースは少ないから車で来られる人は不便なのかな

一方で、トンボ池存続を求める声も…

トンボ池は生き物にとって鍵となる場所

佐賀自然史研究会 上赤博文さん:
よく“ノアの箱舟”という言い方がされる。ここで生き物が生き残れば将来その周辺にもまた戻っていく。その鍵となる場所

佐賀県内の、自然の調査や研究をしている佐賀自然史研究会の上赤博文さん。開園当初から月に1回程度このトンボ池を訪れているという。

佐賀自然史研究会 上赤博文さん:
この辺に来たら佐賀県の絶滅危惧種“コウホネ”という植物。5月、6月になると黄色い花が咲く

トンボ池では環境省レッドリストの準絶滅危惧種を含む31種のトンボのほか、絶滅危惧種を含む49種の植物が生息・確認されている。しかし、今のトンボ池は清掃など十分な手入れが行き届いていない状況。一部、1年前に浚渫し泥を上げている場所は、本来の水辺の環境が戻ってきているという。

佐賀自然史研究会 上赤博文さん:
“ヒメビシ”は県内でこの池にしかいない植物。今年もこの状態だったら5月、6月になれば出てくることが期待される。人間が生活している近くの水辺は人間が手を加えることによって良好な状態が維持、回復できる特徴がある

今年2月、自然や昆虫などの調査を行う上赤さんら佐賀自然史研究会など3団体は、トンボ池の存続を求める要望書を提出した。

佐賀自然史研究会 上赤博文さん:
もし地域の子供たちがここに来ることがあるなら、このトンボ池をぜひ見てほしい。ここを教育の場として教材として活用してほしい

佐賀自然史研究会 上赤博文さん:
ここにいる生き物が何らかの形で生き残って将来につながってくれたらそれで声を上げた成果は出る

再整備に向け市の方針はまだ確定しておらず、今後も広く意見を聞き検討していくという。

佐賀市緑化推進課 武久巧課長:
今年度予定している市民アンケート結果を反映し、生き物の生息地を保ち、より利用しやすい環境になるよう整備することで引き続き市民の皆さんに親しまれ、愛される公園になってもらいたい

(サガテレビ)

サガテレビ
サガテレビ

佐賀の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。