岩手県盛岡市の視覚支援学校に通う18歳の生徒が、この春、目標に向かいスタートを切った。
2つの夢を胸に抱きつつ、新たな一歩を踏み出した若者の思いを取材した。

盛岡市にある岩手県立盛岡視覚支援学校は、視覚障がいがある人たちが通う県内唯一の学校だ。

佐藤雅也さん(18)は、2024年3月に高等部を卒業し新たなスタートラインに立った。

佐藤雅也さん
「佐藤雅也です。この学校に来てことしで14年目。在校生の中で一番長いです。お願いします」

盛岡市で生まれ育った佐藤さんには、生まれつき視覚に障がいがあった。

佐藤雅也さん
「全体的に明るく見える。まぶしい所は全然見えない。色の方は細かい色の違いとなると見えにくい」

佐藤さんが通う視覚支援学校は、一人一人が自分自身の可能性を見つめる場所だ。先生の中には学校の卒業生もいる。

母校の教員となった 高村和人さん(42)
「目が悪いんじゃなくて、目しか悪くないんです。『全て悪いんじゃなくて目しか悪くないよね』ということに気付けるように、授業をやらんといかんなと思っています」

高卒以上が対象で、あん摩マッサージや指圧師などの資格取得を目指す専攻科があるのも学校の特色の一つだ。

友達や先生を顔ではなく声で覚えるという佐藤さんは、人と話すことを大切にする中で自然と話好きになった。
そして、その先には自分らしい目標も生まれた。

佐藤雅也さん
「話す仕事が何かできればいいなと思って。(小学校の頃)学校に向かう時にラジオを聞いていて、ラジオのパーソナリティになりたい」

しかし、瞬時に原稿や資料の文字を理解することができるだろうかという不安もあった。
進路選択のタイミングを迎えた中、佐藤さんはいったん別の道を目指すことにした。

佐藤雅也さん
「あん摩マッサージ師はマッサージを基本的にはやるんですけど、お客さまとの雑談も大事だと教えてもらって、マッサージ師になるのがいいのかなと思い始めた」

2023年12月、学校の寄宿舎でクリスマス会が開かれた。佐藤さんは司会者として会を盛り上げた。

マッサージ師の道に進むことを決めた佐藤さんだが、「伝え手」となることも諦めていなかった。

佐藤雅也さん
「ラジオのパーソナリティという夢は、ほぼほぼ諦めに近いんですけど、今の世の中だとSNS、例えばYouTubeでライブをしたりとか。他にもライブ配信用のアプリとかもあるので、いつか(視覚障がい者も)明るく生活しているところも周りの人に知ってもらいたい」

『自分にしかできない発信をしたい』、佐藤さんが思い描く理想の未来だ。

4月9日、盛岡視覚支援学校の入学式が行われた。
佐藤さんは国家試験合格を目指し、マッサージの知識と技術を学ぶ。

盛岡視覚支援学校専攻科1年 佐藤雅也さん
「この学校を卒業する時に悔いが無いように、この3年間過ごしたいなと思っています」

父・信孝さん(51)と母・亜紀さん(47)も、夢に向かって歩みだした息子の晴れ姿を見つめていた。

父・信孝さん
「幼稚園からこの学校にお世話になっている。早くも18歳になって、立派になったなと思いました」

『マッサージ師とパーソナリティ、夢は1つじゃなくてもきっといい』
佐藤さんは2つの夢を胸に抱きつつ、新たな一歩を踏み出した。

岩手めんこいテレビ
岩手めんこいテレビ

岩手の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。