福島が誇る民芸品の産地、郡山市の高柴デコ屋敷。頭の中を「からっぽ」にして、ありのままの自分を出して踊れば新しい自分が生まれる…「新しい風を吹かせる」その言葉通りに挑戦を続けるひとりの工人がいる。

<江戸時代から続く張り子>
福島県郡山市西田町高柴地区にある高柴デコ屋敷。本家大黒屋21代目当主の橋本彰一さんは、300年以上の技を受け継ぐ1人。
「デコ」とは、手彫りの木型に和紙を貼り重ねて作る民芸品のこと。三春駒や三春張子人形は、江戸時代にここ高柴デコ屋敷で生まれた。

<伝統に新しい風を吹き込む>
「正直、こだわりをそぎ落とすのが、唯一のこだわりになるかもしれない」と話す橋本さん。大学を卒業後、福島県内の高校で美術の教師をしていた。母親が亡くなり、元気だった父も脳梗塞で倒れたことをきっかけに、工人として修行を始め14年前に大黒屋の当主となった。
伝統の技を受け継ぎ、感じた「張り子の可能性」橋本さんは、これまでにはなかった新しい張り子を次々と創作。2.4mの巨大な張り子のシロクマの制作や、世界的なデザイナーコシノジュンコさんとコラボした作品作りなど、伝統にとらわれない価値観を提案してきた。

<新しい伝統をつくる>
高柴デコ屋敷の若手の工人などとともに立ち上げた「郡山KARAPPO」
張り子をより身近に感じてもらえるように、ブローチや干支をモチーフにしたお面などを制作している。
橋本さんは「伝統も守るっていうのではなく、伝統も自分から作ってくっていうスタンスで。張り子作りというのは、こういうもんだっていう固定観念を持ちすぎると、本来張り子で出来るものも出来なくなってしまう。可能性を狭めてしまうのではないかな」と話す。

<からっぽから生まれる新しい景色>
この日、張り子の可能性を感じてもらおうと高柴デコ屋敷で新たなイベントが生まれた。それが「郡山からっぽ祭り」参加の条件は張り子のお面を被ること。そして、お面をつけて頭をからっぽにして踊り、心も体もリフレッシュすること。
参加者は「頭からっぽです。これ毎年、開催してほしい。これ、おもしろいなあ」
と話し、お面を被って踊りありのままの自分を出し、新しい自分を見つけるイベントとなった。

全国から老いも若きも集まり、踊る。高柴デコ屋敷で新たな景色が広がった。
橋本さんは「デコ屋敷のモノづくりだったり郷土芸能、土地や地域にある芸能を糧に新しい風を吹かせて、福島県の良い所、伝統文化を発信していけたらなと思ってます」と話した。

伝統を守り、新しい伝統を作る橋本さんの挑戦は続く。

福島テレビ
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