ふるさと納税を活用した優れた取り組みを表彰する国内最大級の催しで、秋田県小坂町が大賞を受賞した。町が所有する鉄道車両の修繕に必要な資金をふるさと納税を活用して募り、目標金額の達成に向けたアイデアなどが評価された。プロジェクトはどのように進められたのか、事業を担当した町の職員を取材した。

 司会者:
「チョイスルーキー部門、大賞は…秋田県小坂町・木村さんです」

 3月16日に都内で開かれたイベント「ふるさとチョイスAWARD 2023」。ふるさと納税の使い道として優れた事例を表彰していて、2014年から開催されている。

 このうち、担当者が就任して2年目までの事例を対象とした部門で小坂町が大賞に選ばれ、町の職員・木村卓泰さんが表彰を受けた。県内の自治体で大賞を受賞したのは小坂町が初めてだ。

 小坂町総務課企画財政班・木村卓泰さん:
「一言で言うと、まさか取れるとは思ってなかった。驚いたというのが最初の気持ち」

 2023年度、小坂町では、かつて東京・上野と青森を結んだ寝台特急「あけぼの」の車両の修繕に向け、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングを実施した。

 「あけぼの」は町の観光施設「小坂鉄道レールパーク」で宿泊施設として活用され人気を集めていたが、新型コロナウイルスの影響や設備の老朽化により、2020年から営業が取りやめになっている。

 その後も塗装の劣化などがさらに進み、営業再開には大規模な修繕とそれに伴う資金が必要だった。

 “町の貴重な車両を未来に残したい”。
 この一大プロジェクトを先頭を切って担当したのが木村さんだった。

 木村卓泰さん:
「寄付してもらうのは町外の人々になるので、そういう人に対していかに内部で盛り上がった思いを発信して、多くの人に知ってもらって寄付してもらえるかというところを考えた」

 まず手を付けたのは、どんな返礼品を用意するか。レールパークの運営にも関わっている「小坂鉄道保存会」のメンバーとともに、鉄道ファンの心をくすぐるものをテーマにアイデアを出し合った。

 木村卓泰さん:
「車掌体験とか、仮想行先方向幕といって、あけぼのは小坂行きはなかったが、国鉄で使われてきた書体を忠実に再現して小坂行きの夢のある方向幕を作ったりとか」

 このほか、発信力のある交通系YouTuberの手も借りながら、関係者や全国のファンのあけぼのへの思いを発信することに手を尽くした。

 木村卓泰さん:
「常にSNS、サイト、寄付者から入ってくるコメントとか、常にアンテナを張り続けたのはやっていて楽しかったが、今考えると大変だったと思う」

 その思いは多くの人に届いた。2023年10月にクラウドファンディングを開始すると、当初の予定より1カ月半ほど早く目標金額350万円を達成。

 さらに整備が必要な車両が他にもあったため、受け付けを延長したところ、総額で600万円以上の寄付が集まった。

 4月から今シーズンの営業を再開したレールパークには、冬の間に修繕を終えた「あけぼの」の姿がある。

 5月4日から約5年ぶりに営業が再開される予定で、4月20日から宿泊予約の受け付けも始まる。

 木村卓泰さん:
「今回、多くの方々に寄付してもらったおかげで、こうして営業再開することができた。私を含めて関係者は喜んでいるが、そこがゴールではなくて、ようやくスタートラインに立つことができた。寄付してくれた人や応援してくれた人が見て『小坂鉄道レールパーク、小坂町、頑張っているな』と思ってもらえるような具体的なアクションを、皆さんとともにやっていければと思う」

 関係者の熱い思いで生まれ変わることができた「あけぼの」。この復活が町のさらなる盛り上がりにつながるか。今後の動きに期待がかかる。

秋田テレビ
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