企業や大学、そしてデジタル庁などの行政機関でも発生しているサイバー攻撃による個人情報の漏えい。タイムズカーでは免許証が流出した。
私たちの身にふりかかるその脅威とは。
取材を進めると、流出した情報が売買される「ダークウェブ」の実態も見えてきた。
免許証1枚が悪用されれば、知らぬ間にiPhoneを購入され、クレジットカードの審査が通らなくなる。そんな被害が、現実として起きている。
■ 相次ぐサイバー攻撃 13秒に1回の脅威
タイムズカー、ニッポンレンタカー、京王電鉄、東京メトロ、デジタル庁、焼肉きんぐ、大阪公立大学など。9月から10月にかけて、行政機関から外食チェーンまで、幅広い組織で個人情報の漏えいが相次いで発覚した。
10月2日には大阪公立大学がサイバー攻撃を受け、8日まで全ての授業が休講となった。
会見に臨んだ大学側の担当者は、「一定の対応(対策)は行ってきていたが、結果としてサイバー攻撃を受けたのは、まだ(対策)不十分だった」と苦しい胸中を明かした。
さらに10月5日、焼肉きんぐではアプリ利用者のおよそ1078万人分の個人情報が漏えいしたことが判明した。
国立の研究機関によると、サイバー攻撃に関する通信は10年前からおよそ5倍に増加しており、去年は13秒に1回のペースで観測されている。
なぜこれほどまでに攻撃が増加しているのか。立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授は次のように指摘する。
立命館大学情報理工学部 上原哲太郎教授:攻撃者の方で何かの技術革新みたいなものがあったのかもしれないなというふうには思っています。1つはやっぱりAIの発達というのは、一番大きく考えられる要素。

■ 免許証160万件の流出 タイムズカーへの訴訟の動き
今回の一連の漏えいのなかでも、特に深刻とされるのがタイムズカーの事案だ。最大およそ660万人の個人情報が漏えいし、そのうちおよそ160万件では本人確認用の運転免許証の画像も流出した。
この事態を受け、9月30日には集団訴訟へ向けた専用サイトが開設された。サイトを立ち上げた牧野裕貴弁護士によると、参加の意向を示した人数は、7日午前時点でおよそ6万4000人に達しているという。
牧野弁護士は、多くの人が声を上げる背景に、個人情報の中でも影響の大きい運転免許証情報の流出があると指摘する。
牧野法律事務所 牧野裕貴弁護士:日本だと色んな所で免許証を使った本人確認がされている。そういった(免許証の)画像を使った被害が起き得るというのは、通常の名前やメールアドレスが流出することに比べてレベルが違う。
謝罪して許される話ではないと思っていまして、損害を賠償をしてもらう必要がある。
タイムズカーは来週を目途に調査結果を踏まえて補償方針を決定する予定で、牧野弁護士は、その後、提訴の判断をするとしている。
国交省は、この問題を受け10月1日、全国レンタカー協会に管理体制の点検を要請した。

■ 免許証悪用の実態 7年後に発覚したiPhone不正購入
免許証情報が流出すると、具体的にどのような被害が生じるのか。取材班は、過去に被害を経験した30代の会社員男性の話を聞くことができた。
男性は9年前、コンビニのコピー機に免許証を忘れてしまった。その後、何者かがその免許証を使い、9万4000円のiPhoneを契約。その支払いが滞り、信用情報が”傷ついた”状態になっていた。
被害に遭った男性(30代):クレジットカードが作れなかった、複数社。『信用情報に傷があるんじゃないの』ということで、詳しく調べてみたら、全然知らない人間が契約していた。
その上、被害が発覚したのは、なんと7年後のことだった。
男性は、「自己責任かなと落ち込んだが、腹が立ったのは間違いない。金銭が大きくなってくるともっと怖い」と振り返る。
専門家は、免許証情報の流出によって口座を無断開設されたり、ローンを組まれたりする恐れもあると指摘する。

■ ダークウェブの実態 マイナンバーカード1枚150円で売買
漏えいした個人情報はどこへ向かうのか。
上原教授は「情報を盗み取る人たちは“ブローカー”とつながりを持っていることが多いので、そういう人たちに譲り渡して、裏で販売をしてお金に換える。最後には“ダークウェブ”みたいなところにも出てくる」と説明する。
その実態を見せてくれたのは、企業向けのセキュリティ講座や情報発信を行うセキュリティYouTuberの「ハッカーかず」さんだ。
ダークウェブとは、一般的な検索エンジンではアクセスできず、犯罪の温床にもなっているとされる匿名のネットワーク空間だ。
セキュリティYouTuber「ハッカーかず」さん:薬物とか、偽造のお金とか、ハッキングの方法なども扱っているサイト。

■「ダークウェブ」でパスポート、マイナンバーカード、免許証が…
そこで売られていたのは、マイナンバーカードの100枚以上のセットでした。値段は合計99ドル、1枚あたり日本円でわずか150円ほどだ。
日本のパスポートの100冊セットには「一部有効期限切れのものがあるため100冊まとめての販売」という注釈が付いていた。
さらに「日本の運転免許証」と検索すると、「300枚以上の日本の運転免許証と健康診断書」などと記載された投稿が多数確認された。
悪用の手口は売買にとどまらない。かずさんが販売者に用途を問い合わせると、情報を「アカウント登録に使っている」などと個人情報の悪用をにおわせる回答が返ってきた。
セキュリティYouTuber 「ハッカーかず」さん:『今回のタイムズの件、おわびに返金します』のような、なりすましのメールが送られてしまって、口座を教えたら、口座の情報も取られてしまうみたいな、新たにだますために使う。
流出した情報が、さらなる詐欺の“道具”として使われる構図が見えてくる。
「ハッカーかず」さんは「もう全員出回っているんじゃないですか。『自分のメールアドレスや個人情報は(流出している)』というぐらい考えた方がいい」と警鐘を鳴らす。

■ HISと損保ジャパンでも漏えいが発覚
放送中には新たな速報も入った。
旅行会社大手のHISは、タイにある子会社のサーバーが不正アクセスを受け、最大620人ほどのパスポート情報などが漏えいした可能性があると発表した。一部の人についてはパスポートの画像も漏えいした可能性があるとしている。
また、損害保険ジャパンは外部の委託先が不正アクセスを受け、電話番号や住所、勤務先情報を含むおよそ6万件の顧客情報が漏えいした可能性があると明らかにした。
子会社や委託先が狙われる事案が相次いでいることについて、「サイバーの防御が弱いだろうということで標的にされやすいという実態もある」との見方も示されている。
個人情報が流出する危険と隣り合わせのデジタル社会。
私たちはその脅威からどのように身を守ればよいのだろうか。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月7日放送)


