特集は、身近な社会課題の解決を目指すRe:changeです。今回は、出産後の母親の心と体をサポートする「産後ケア」について大黒記者がお伝えします。
まずは、こちらの数字をご覧ください。出産した女性の10人に1人が、「産後うつ」を発症するといわれ、産後の孤立と育児不安の解消が課題となっています。
「産後ケア」は、病院や助産院などで産後の体の回復や育児のサポートを目指すもので、主に宿泊型、日帰り型、訪問型の3種類があります。国は2021年、自治体に対し、「産後ケア事業」の実施を努力義務とし、岡山と香川でも取り組みが広がっています。こうした中、2026年6月、中四国で初めて岡山市に誕生した、ホテル宿泊型産後ケアを取材しました。
岡山市北区の岡山国際ホテルです。ウェルカムデザートを楽しむのは、市内から来た小松原友愛さん。3カ月前に次男の圭悟ちゃんを出産し、産後ケアサービスを利用するために来ました。
ホテル宿泊型産後ケアは家族も宿泊でき、この日は、長男の有稀くんと夫の靖聡さんも一緒です。
(小松原友愛さん)
「次男が生まれてから長男とゆっくり過ごしにくくなったので助産師に見てもらって長男とゆっくり過ごせるのが楽しみ」
2026年6月に岡山国際ホテルに誕生した、中四国初のホテル宿泊型産後ケア、「カリーヌ」。対象は、産後7カ月までの母親で、助産師と看護師が24時間体制で常駐し、1泊9万円で利用できます。ホテルに滞在しながら育児の相談と心身のケアを受けることができ、非日常の空間でリフレッシュできるのが最大の特徴です。
(親子の会話)
「めっちゃ景色綺麗だね。」「いい景色だね。」
(小松原友愛さん)
「長男の産後に体がしんどかったので、里帰りなしだとしんどいかなと産後ケアを利用できたらと」
カリーヌを立ち上げたのは岡山市出身で助産師の浜田※梨花さん。岡山国際ホテルに事業への協力を依頼し実現しました。元々倉敷市の総合病院で勤務していた浜田さんは結婚を機に東京へ移り、都内で助産院を開業しました。古里の岡山で産後ケア事業を始めた背景には自身の里帰り出産の経験がありました。
(浜田梨花さん)
「両親の世代も長く働く時代で、里帰りしても日中にサポートが無い。だからこそこの時代に産後ケアで家族だけではなく社会全体で産後のママを支えていける環境をつくりたい」
カリーヌではまず、助産師とのカウンセリングで母親の悩みと赤ちゃんの状態を確認します。
(カウンセリング)
「最初体重がバンと増えたからそのあと緩やかで平均には入っているとは思うが、ある程度増えていておかないとダメ?」「赤ちゃんは1カ月2カ月低月齢時は急に伸びる、上り幅は収まるので1日あたりの体重増加を(滞在中に)見ていきましょう」
滞在中は何度でも育児相談や授乳指導などを受けることができます。ホテルでは病院などとは違い出産や緊急時の対応が無いからこそ、助産師が一人一人と向き合う時間を作りやすいといいます。
(小松原友愛さん)
「出産で入院している人がいると産後ケアの予約が取れないところもある。兄弟や夫みんなで泊まれるところがあればさらに嬉しい。」
カウンセリングが終わると赤ちゃんは助産師と一緒に別室へ。母親は、翌日までゆっくりと過ごすことができます。小松原さんは夫の靖聡さんと長男の有稀くんと一緒に中庭で遊ぶことに。久しぶりに3人で過ごす時間です。
(遊び)
「せーの ジャーンプ」
(家族3人)
「長男のペースで一緒に過ごすことができて楽しい」「妻が普段よりリラックスして楽しそうで良かった」
浜田さんは、産後ケアが特別なものではなく、誰もが当たり前に利用できる社会になってほしいと話します。
(浜田梨花さん)
「産後のママが周りに頼っていいんだよって。周りも産後のママは周りに頼るべきというのを当たり前に感じてもらって、その産後ケアは医療機関ホテル色々な形がある、それも選択肢としてママの価値観で選んでいけるような社会になってほしい」
安心して子育てをスタートできる環境づくりに向けて。ホテル宿泊型産後ケアが新たな支えとなりそうです。
産後ケアには自治体の助成制度があり、利用者は費用の補助を受けられます。しかし、ホテルでのケアは、首都圏などでは助成制度が設けられている一方、岡山・香川では現在、助成の対象外となっています。取材を通して病院・助産院・ホテルそれぞれに特色があり、母親のニーズに応じて安心して選べる環境が整ってほしいと感じました。
※浜は旧字体
