宮城県が導入目指す“宿泊税”

2月12日、宮城県議会2月定例会に、「宿泊税」を導入する条例案が提出された。

村井嘉浩知事:
宿泊事業者や観光関係者等々と十分な意見交換を重ねながら、より効果的で満足度の高い観光施策に取り組んでまいります

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宿泊税とは、ホテルや旅館など、宿泊施設の利用者に負担を求める地方税のこと。
かつては東京都だけが取り入れてきたが、2017年に大阪府が導入すると、京都市や金沢市といった全国有数の観光都市もあとに続いた。
それらの都市に共通するのは、いわゆる「観光公害」。
増え続ける観光客によって、交通渋滞や騒音、ゴミの問題などが深刻となり、対策にかける予算が必要となった。

一方、今回提出された宮城県の条例案は、観光客を増やすことが目的。
県が考える宿泊税は、1泊3,000円以上の宿泊施設の利用者に、1泊につき1人300円を課税するもの。
県は、これにより年間およそ23億円の税収を見込んでいて、全額を観光振興の強化に充てるとしている。

なぜ今? 観光振興の強化目指すワケは...

ではなぜ、いま宮城に観光振興の強化が必要なのか。
その理由として県が挙げるのが、近い将来訪れる人口減少。
県の推計によると、2020年現在 230万人の人口は、今後25年間で約50万人減少し、このままでは地域経済が縮小するとしている。

そこで観光振興に力を入れ、交流人口を拡大すれば、人口減少の影響を軽減できるというのが県の考え。
話題性を狙った演出が一時、世間を騒がせた県の観光PR動画も、そうした取り組みの一つだった。

時には村井知事自らが先頭に立ち、宮城のPRに努めたのも、交流人口の拡大を狙ってのこと。
宮城を売り込むために海外ドラマのロケを誘致したり、韓国版トレッキング「オルレ」のコースを県内に整備したのも、海外からのインバウンド効果を期待してのことだった。

しかし、国の復興・創生期間は2020年度で終わる。
これまで観光振興財源の7割を占めてきた国の復興交付金などが、2021年度以降、見込めなくなる。

「拙速ではないか」批判の声も

今後も観光客や交流人口を増やしたい。
けれど、そのために使う財源のあてはない。
そこで県は2018年、観光振興策の財源を考える検討委員会を設置した。

会長に就いたのは、大阪府や京都市など、各地の宿泊税に関わってきた同志社大学の田中治教授。

同志社大学教授・田中治会長:
例えば、大阪府とか京都市で多少なりとも経験があるということで、経験を還元できればという趣旨での依頼だと、わたしは理解しております

検討委員会は1年余りの議論をへて、2020年1月、観光振興の財源には「宿泊税が望ましい」との結論を知事に答申。
県はこれを受け、財源が切れる2021年4月の導入を目指し、答申からわずか1カ月で条例案をまとめた。

ところが、知事が先を急ぐあまり、県内の宿泊業者からは「拙速だ」と批判の声も。
県が開いた事業者向けの説明会でも反対意見が続出し、その後も宿泊税の見直しを求める声は止まない。

村井嘉浩知事:
人によって意見がバラバラでございまして、なかなか1つにまとめるのが難しい

県議会開会の直前には、知事与党であるはずの自民党会派から叱責を受け、村井知事が急きょ会派に出向く異例の事態になった。

村井嘉浩知事:
今まで、頑張って宮城県経済を支えてもらった旅館やホテルや民宿をつぶしたくない。そういう断腸の思いで宿泊税に踏み切った

震災後、「即断即決」がスピード感あると評価されてきた村井知事。
それが今、「独断専行」との批判に変わりつつあると、ある議員は漏らした。

今回、宮城県と同じように国の復興交付金が切れる岩手県と福島県の担当者は、仙台放送の取材に対し、いずれも「宿泊税の導入は検討していない」と回答している。
また、宿泊税をめぐる宮城県の動きに対しては、「これまでは東北6県で足並みを揃えてきたのに」と戸惑う声も聞かれた。

復興交付金の終了や人口減少など、条件は同じ中、宮城は、岩手・福島と何が違うのか?
県民も負担が強いられる新たな税の創設に、十分な説明が求められる。

(仙台放送)

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