育児や仕事で忙しいと、睡眠のリズムも乱れがち。夜は眠れない、朝はすっきり起きられない…といった悩みを抱えている人もいるはずだ。

快眠・寝具について幅広い情報を発信する、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さん
快眠・寝具について幅広い情報を発信する、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さん
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それなら「周囲の光を見直してほしい」と指摘するのは、快眠・寝具について幅広い情報を発信する、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さん。光は睡眠に影響する要素のひとつで、浴びるタイミングで、プラスの効果もマイナスの効果もあるという。

家庭でも「シーリングライト」や「カーテン自動開閉機」を活用することで睡眠環境の改善が期待できるというので、留意点を加賀さんに聞いた。

睡眠は「メラトニン」に左右される

睡眠に大きく関係するのが、脳から分泌される「メラトニン」というホルモン。体内時計を調整したり、眠気を誘うなどの働きがあることから“睡眠ホルモン”と呼ばれる。このメラトニンと密接に関わるのが光だ。メラトニンは明るい光を浴びると分泌が抑制されるが、それから14~16時間経過すると作られやすくなるという。  

朝に光を浴びると良いメカニズムができる(画像はイメージ)
朝に光を浴びると良いメカニズムができる(画像はイメージ)

「そのため、 “朝に浴びるとすっきり起きられて夜は眠くなる”という、メカニズムができるんですね。それをサポートできれば、目覚めも良くなります」(以下、加賀さん)

ただ、寝ている間は部屋を暗くし、カーテンを閉めていることが多いだろう。そこで加賀さんが勧めるのが、冒頭で紹介した2つのグッズだ。

タイマー機能を上手に活用しよう

シーリングライトは、天井に取り付ける照明器具のこと。多くの家に設置されていると思うが、照明をオンにする「タイマー機能」を搭載しているかどうかがポイント。起床時間の少し前から点灯するように設定しておけば、光を浴びることができる。

シーリングライト(画像はイメージ)
シーリングライト(画像はイメージ)

「15~30分ほどかけて少しずつ明るくなり、設定時刻になるとアラームが鳴る『お目覚めモード』(パナソニック)が搭載されているものもあります。急に明るくならないので、ストレスを感じずに気分良く起きることができるんです」 

パナソニックが、この「お目覚めモード」を使った時とそうでない時で、子どもの様子や気分の違いを調べたところ、こんな結果が出ている。

・家族に起こされた(子ども本人が評価)
 お目覚めモード未使用:18人→使用:9人
・起床時の気分が良い(子ども本人が評価)
        未使用:11人→使用:20人
・朝の機嫌が良かった(保護者が評価)
        未使用:11人→使用:23人
※富山大学 神川康子教授(現:名誉教授)監修のもと、小学3~6年生の児童に実際に使用する調査・2016年

光を浴びることで、家族の助けがないと起きられない子どもは半減し、起床時の気分が良いと感じる子ども、朝子どもの機嫌が良いと感じる保護者はそれぞれほぼ倍増していた。

太陽光を浴びるならカーテン自動開閉機

一方、太陽の光にこだわるなら、カーテン自動開閉機がお勧め。レールがカーテンを巻き取るタイプ、小さな機械がカーテンを動かすタイプがあり、タイマーやリモコンで操作可能。光センサー内蔵で、日差しを感知して自動開閉するものもある。

朝日を浴びて目覚めることもできる(画像はイメージ)
朝日を浴びて目覚めることもできる(画像はイメージ)

起床時刻の10~20分前にカーテンが自動で開くようにしておけば、光の刺激で「メラトニン」の分泌が抑えられ、起床がスッキリ楽になることが期待できる。

ただ、加賀さんは、カーテン自動開閉機の「音」が気になる人もいると指摘する。
「商品によっては機械の動作音、カーテンを巻き取る音が発生する点が多少ネックではあります。気になるようなら、耳栓などを併用することをおすすめします」

タイマー機能付きのシーリングライト、カーテン自動開閉機は安いものなら、1万円以内で導入できるものもあるそうだ。予算や部屋の日当たりも参考に検討すると良いかもしれない。

豆電球でもNG?就寝時のベストな明るさ

浴びる光の種類や明るさで違いはあるのだろうか。加賀さんによると、人工的な光と太陽光のどちらにも目覚めを促す効果はあるが、夜のメラトニンの分泌を考えるなら、明るさがより強い、太陽光の方が望ましいという。

日常生活における光の明るさ(提供:加賀さん)
日常生活における光の明るさ(提供:加賀さん)

「明るさの指標はルクス(lx)で示されますが、一般的な家庭の照度は300~500lx、晴れた日の太陽光(野外)は20000~100000lxと言われています。これだけの違いがあります」 

では、寝る時にはどの程度暗くするのがベストなのだろう。「子どもが怖がるから」「子どもの様子が確認できるように」と、豆電球を付けたまま寝ている家庭も多いのではないだろうか。

小さな“豆電球”でも少し明るいという(画像はイメージ)
小さな“豆電球”でも少し明るいという(画像はイメージ)

加賀さんによると、就寝時の光は0.3lxほどが望ましいとされており、これは夜の自然な光がカーテン越しに見えるくらいの明るさだという。

「小さな“豆電球”でも9㏓ほどなので、少し明るいことになります。メラトニンの分泌が抑制されなかったとしても、睡眠の質が落ちる可能性はあるので、消せるのであれば消したほうがよいでしょう」 

スマホの明るさにも気を付けよう(画像はイメージ)
スマホの明るさにも気を付けよう(画像はイメージ)

寝る時の豆電球でも影響のある光。大人も子どもも、強い光を浴びると“睡眠ホルモン”メラトニンの分泌が抑制され、眠れなくなることがあるという。
加賀さんは、夕食後は部屋の照明を暗めにする、パソコンやスマホの画面の照度を下げるなどして「夜間は穏やかな光と接するよう心掛けてほしい」と話す。

睡眠に悩んでいるなら、朝は積極的に光を浴びること、夜はパソコンやスマホの使用をできるだけ控えることで、メラトニンの分泌を意識的にコントロールすると良いかもしれない。

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加賀照虎
睡眠健康指導士。3,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を伝える。朝の情報番組にてストレートネックを治す方法を紹介。現在、雑誌、テレビ、ウェブなどの幅広いメディアで快眠の啓発活動に取り組んでいる。

プライムオンライン特集班
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