中学や高校、大学と、今年も本格的な受験シーズンに入ってきている。最後の追い込みにと、コーヒーやエナジードリンクを片手に、勉強に励む受験生もいるかもしれない。

しかし「集中力を高めたい」「眠くなりたくない」との思いからたくさん飲んでしまい、子どもには多すぎる量のカフェインを摂取している可能性があるようだ。過剰に摂取するリスクを減らすために、親が気をつけられるのはどんなことだろうか。

2013年の「全国学校給食甲子園」で男性として初めて優勝し、子どもたちに食育授業などを行う管理栄養士の松丸奨さんに、子どものカフェイン摂取における注意点を聞いた。

子どものカフェイン摂取に注意

――そもそもカフェインって何?

カフェインはコーヒー豆や茶葉などに含まれており、摘出されたカフェインは食品添加物として登録されています。飲料等に加えられることもある成分です。


――カフェイン摂取量の目安を教えて。

アメリカの食品医薬品局(FDA)では、健康な大人では1日あたり400mg(コーヒー4~5カップ程度)までの摂取であればカフェインによる健康への危険な悪影響はないとしています。FDAは子どもの場合のガイダンス値を設定していませんが、アメリカ小児科学会は、子どもはカフェインを含めた刺激物の摂取を抑制すべきとしています。

ヨーロッパでも同様の数値を明示しています。カナダでも子どものカフェイン摂取を抑制するべきとしています。オーストラリアとニュージーランドでは、9~13歳の子どもの1日あたりコーラ2缶に相当する量のカフェイン摂取で、不安レベルが上昇する根拠があるとしています。

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――日本でも摂取量の目安はあるの?

日本では明確な基準や具体的な摂取量の目安は示していないものの、海外における情報に基づき、農林水産省、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、国民生活センターなどで情報発信をしています。

アメリカやヨーロッパでの基準は参考になりますが、日本人との体質的な差異や個人差もあることからも、同じ量までが大丈夫とは一概に言い切れません。そして多くの国で子どものカフェイン摂取は抑制するべきとしていることも重要なポイントです。

カフェインを多く含むエナジードリンクの多用により中毒死した事例もあり、カフェインの過剰摂取に対し厚生労働省等は注意喚起を行っています。自販機やコンビニで気軽に購入できるので、メリットに目を向けてつい手を出しがちですが、子どものカフェイン摂取には十分に注意が必要です。

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――カフェインの過剰摂取かもしれない、サインや体調の変化は?

興奮状態、落ち着きがカフェインの摂取から意図的に作られるため、気持ちの浮き沈みが大きくなります。また覚醒作用の反動で不眠になることや、日中眠くなるなどにもなります。

飲まないとやる気がでない調子がでないというふうに感じているのであれば、カフェインや高糖度の甘い飲料の刺激への依存状態になっている可能性があります。飲まないことでいら立ちや落ち着きのなさにつながるのであれば危険です。

カフェイン中毒の診断基準として、アメリカの精神医学会よりマニュアルが明示されています。

(一部抜粋)
A 最近のカフェインの消費(250mgを十分に超える高用量)
B 以下の症状または症状のうち5つ以上がカフェインの使用後すぐに発現する(落ち着きのなさ、神経過敏、興奮、不眠、顔面紅潮、利尿、胃腸系の障害、筋れん縮、散漫な思考および会話、頻脈または心拍不整、疲れ知らずの期間、精神運動興奮)

このようにならないよう、過剰摂取への注意が必要です。

カフェインが意外に多い飲み物

――では、コーヒー1杯やエネジードリンクにどれくらいのカフェインが含まれているの?

・煎茶 20mg/100mLあたり
・ほうじ茶 20mg/100mLあたり
・エナジードリンク 32mg/100mLあたり

このようになっています。あれ?そんなに多くない?と思ってしまう方もいるかもしれません。ここで注意してほしいのは、100mL換算での数値では日常的なイメージとは異なる点、つまりエナジードリンクなどは100mLで販売されているものはなく、1本あたり200mL以上の量で販売されています。購入したらきっと1本全部飲むのが普通でしょう。

つまり選ぶ物により実際に飲む量に違いがでるため、1本あたりの内容量が多ければその分カフェインの含有量も多いことになります。

それを踏まえて、1本あたりで数値を出してみましょう。

・煎茶 30mg/湯飲み茶わん一杯150mLあたり
・ほうじ茶 30mg/湯飲み茶わん一杯150mLあたり
・コーラ 50mg/500mLペットボトル1本あたり
・缶コーヒー 約100~150mg/190mLショート缶あたり(種類による)
・エナジードリンク 約114mg~142mg/355mL缶1本あたり(種類による)

――カフェインが意外に多く含まれている飲料はある?

・紅茶 45mg/湯飲み茶わん一杯150mLあたり
・ウーロン茶 30mg/湯飲み茶わん一杯150mLあたり

日常的に飲む機会の多い紅茶やウーロン茶にもカフェインが含まれています。紅茶は温かいものは湯飲み茶わん1杯程度で済みますが、冷やして飲みやすくしたものは多く飲んでしまう傾向にあります。ウーロン茶も食事の際に飲みやすいですよね。

他にもチョコレートにカフェインが含まれていますので注意が必要です。

冷蔵庫に飲み物の買い置きは要注意

――子どもがカフェインを摂りすぎていないか不安…親が気をつけなければいけないことは?

煎茶などのお茶類は毎食事に飲む、勉強前や勉強中に飲む程度でしたら問題のない量であると言えます。コーラなどのジュース類も適切な量を飲めるのであれば大丈夫なのですが、カフェインの含まれている甘くて刺激的な炭酸飲料のジュース類は、過剰摂取となりやすいです。

子ども好みの味はついつい多くの量を飲んでしまいがちです。コーラなら気分転換の甘いジュースとして1本くらい良い?なんて思われるかもしれません。たしかに1本だけで済むのなら良いでしょう。しかし冷蔵庫に2リットルのジュースがあれば、もう一杯とおかわりをしやすいことになります。

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ジュースくらい良いんじゃない?という保護者も「ではそのコーラを365日毎日欠かさず飲むことはどう思いますか?」と質問すると、皆さん「えっ!? 毎日はちょっと…」となります。その通りで、継続して毎日飲むことは多すぎるというイメージがありますね。

1杯2杯だけなら海外の基準に比べると少ない量ですが、毎日摂ることでの影響は未知のところがあります。量を守れるかもわからないため、カフェインの過剰摂取につながるリスクがあります。

ジュースが大好きというお子さんの場合でも、コーラなどのカフェインの含まれているジュースは週に1~2回程度(気分転換のため)を超えないようにするのが良いでしょう。

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――子どものカフェインの摂取量を適切に抑えるためには、親はどんなサポートができる?

まずは冷蔵庫に高カフェインのジュース類、エナジードリンクを買い置きしないことです。冷蔵庫にあるなら手に届きやすいので飲みやすくなってしまいますよね。子どもが好きなジュースでも、カフェインの含有量を確認し、飲みすぎない量を置いておくのが大切です。

このように、家の中では親がサポートできますが、塾や予備校の前や帰り、友達との遊びの中で、子どもの行動を監視するわけにいきません。

親としてのサポートは、カフェインの危険性、依存性のリスクがあることを教えてあげることです。話を聞けば子どもの飲みたくなる気持ちもわかると思います。家にないからコンビニで買った、友達が飲んでいて飲みたくなった、一緒に買うのを断れなかったなど、子どもなりの理由があります。それでも、適切な量を飲むことの大切さを伝えるのが大事です。

全ての学校でカフェインの授業を行っているわけではありません。ご家庭で教えてあげるというのが一番子どもに伝わる方法です。

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摂取するカフェイン量を未成年が自分で管理するのは難しい。適切な量を飲むことの大切さやリスクを伝えるなど家庭でもサポートすることで、夢に向かう我が子を応援してほしい。

(イラスト:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。