勉強中、お茶やコーヒーを飲んで一息つく人もいるのではないだろうか。

こうした飲み物を抽出する際の、茶葉やコーヒー豆などにはカフェインが含まれている。カフェインは食品添加物として登録されていて、集中力の向上や覚醒効果が期待されるが、適切な量を有効に活用することが大切だという。

カフェインは日常的に飲む機会の多い紅茶やウーロン茶にも含まれる。冷やして飲みやすくなると、過剰な摂取に注意が必要だ。

今の時期は特に試験やテストに向けて勉強に励む人も多いだろうが、勉強中に効果的なカフェインの摂取タイミングはいつなのか。また、カフェイン以外におすすめの飲み物や食べ物はあるのだろうか。

子どもたちに食育授業などを行っている、管理栄養士の松丸奨さんに話を聞いた。

カフェインのメリット・デメリット

――勉強中のカフェイン摂取には、どのような良い影響がある?

良い影響としては集中力が出ること、合わせて眠くならない覚醒効果が期待できます。記憶力を向上させることや運動能力を向上させるなどとも言われています。

仕組みとしては神経の鎮静作用を発揮する場所にカフェインが結合することで、鎮静作用の働きが阻害されて神経が興奮するというものです。

これだけ優れた効果は勉強にも効果的であるとは言えますが、いい話ばかりではなくリスクもついてきます。

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――では、悪い影響は?

悪い影響としては、カフェインの過剰摂取により中枢神経系が刺激されることで、めまい、心拍数の増加、興奮からの落ち着きのなさ、不安、震え、不眠などの症状が起こります。

消化器官にも負担をかけるため、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢などの症状がでることもあります。長期的な高カフェイン飲料の摂取により依存状態に陥ることや、高血圧のリスクが上昇します。

怖い話が多いですが、お茶やコーヒー飲料などを適切な量を飲むということなら問題ないですし、楽しみ、味わい、有効に活用してもらいたいと思います。

カフェインの効果はいつ出始める?

――勉強中のカフェイン摂取に効果的なタイミングを教えて。

カフェインの効果を検証した論文では摂取後15~30分後に効果が出始め、30~120分で血中濃度が最大になると報告されています(量や濃度にもよる)。

勉強の前にお茶などを飲む、勉強中の水分補給でも飲むというのが効果的ですね。

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――テストや受験などの環境ではカフェインの摂取が難しいかも…カフェインありきでの勉強に慣れると、どんな問題があるの?

コロナ禍でマイボトルなどの水筒が多く売られるようになりました。ここに温かい緑茶などを入れるのであれば問題ないのではないでしょうか?

日常的にエナジードリンクを飲み続けてのカフェインありきでの勉強に慣れてしまっているのならば問題があります。試験中にエナジードリンクのジュース缶を横に置いておけないのは困る、試験中に飲めないのは困る、と考えているのであれば、試験にも体調にも支障がでるため、改善していく必要があります。飲まなくては試験ができないなんて事にならないよう、高カフェイン飲料に頼らない勉強をしましょう。

勉強におすすめは“ミント”や“ナッツ”

――カフェインをよく摂取する人に意識してほしいことは何?

ダイエットをしている人や太らないようにと食生活を制限している人は、高カフェイン飲料に頼りやすくなる傾向があるので注意が必要です。というのも、ダイエットをする際に、手軽なのが食事制限をする方法です。

中でもブームとなっているのが糖質制限です。ご飯類、パン類、麺類を減らすことで、糖質を抑えてダイエット効果を高める方法です。この抑えている「糖質」こそ勉強に必要な栄養素になります。

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勉強をして記憶をするために脳を使います。この脳のエネルギー源は糖質なのです。ダイエットで制限してしまうことは本末転倒です。糖質制限や、極端に食事量を減らすなどをすると、覚えられない、集中力が続かない、勉強で疲れた、となりやすくなってしまうのです。

そんな時に高カフェイン飲料をドーピングのように使い勉強をすると、不健康にもつながりますし、次第にカフェイン量が増えていき、依存してしまう可能性もあります。勉強とダイエットは同時にできないものです。ここも注意が必要ですね。

それらを踏まえ、まず3食の食事は、主食(ごはん、パン、麺類)も含めてしっかり食べることが第一です。脳のエネルギー源である糖質をちゃんと摂りましょう。

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――受験シーズン、積極的に取り入れた方が良いものは?

糖質を摂った上で、食事で積極的に取り入れてほしいのは魚です。特に「青魚」です。

青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳の神経細胞の接続部であるシナプスを密接なものにする働きがあると言われています。つまり脳を活性化する働きがあるのです。まさに脳の力を引き出す食材というわけです。

できれば1週間に1度は煮魚・焼き魚を食べる日を作るといいですね。サバ缶などなら骨も気にならずに食べやすいです。味噌煮缶などの味付けされているものなら、温めるだけで食べられるので、お手軽に取り入れることができます。

勉強での疲れを予防するために、チーズやわかめに含まれているグルタミンを摂って、疲れにくい身体を作り、大豆や肉類や魚に含まれているアルギニンで身体の活性化を図ります。

余り塩分が強い食事をしてしまうと、のどが渇いてジュースを飲みたくなるので、塩分にも注意をしましょう。特にお寿司やお刺身など、醤油に直接つける食べ物などは、塩分過多になりやすいです。他にもドレッシングやソースなどは自分好みでかけられるものは注意をしましょう。

――勉強に集中したいとき、眠気を覚ましたいとき…どんなものがおすすめ?

食事の後、勉強前にはミントの葉を入れた水を飲むのがおすすめです。ペパーミントは頭をリフレッシュさせて集中力を上げる効果があります。

またかんきつ系のフルーツの香りも集中力を高めてくれるので、レモンやオレンジ、グレープフルーツなどを勉強机の横に置いておくのも良いでしょう。疲れた時に匂いをかげば集中力アップにつながります。

勉強の合間にはナッツ類がおすすめです。ポリポリとした食感は歯を動かし脳を覚醒させる効果があります。よく試合中にガムをかんでいるスポーツ選手を見かけますが、あれも「かむ」という行為が精神を安定させて集中力をアップさせるため、良いプレーができるようになるからなのです。

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――これらは仕事を集中したい人にも有効?

その通りです。有効です。仕事により内容は異なったとしても、全ての仕事で頭を使い、体を動かすことが必要になります。そのエネルギー源を断つことは効率的とはいえませんので、よく言う「3食バランスよく食べましょう」ということの大切さを改めて考えてみましょう。

大人でも資格試験や昇進試験などで勉強をしている人が多くいるかと思います。そこで大人へのおすすめも紹介します。それは香りの強い野菜や、ハーブ類、香辛料です。玉ねぎ、にんにく、ショウガ、セロリ、バジル、ミント、ローズマリー、各種香辛料などですね。

スパイシーで辛い食べ物は、子どもに勧められませんが、スパイスカレーなどは、大人にこそ有効活用してほしい料理です。インドカレーやタイカレーなどもおすすめです。食べると味と香りで目が覚める感じがします。エスニック料理なども香辛料が多めで良いですね。

発汗作用のあるものが多いので、血行促進につながり活動力が高まります。スパイシーな料理を味わえるのは味覚の成熟した大人の特権。ぜひ有効活用してみてください。


――逆に勉強中におすすめできないものはある?

私が勧めないのはエナジードリンクです。受験やテストなどに向けて集中力を高めて勉強をしていきたいという気持ちはわかりますが、子どもの食に関わる管理栄養士として、未成年に高カフェイン飲料であるエナジードリンクは勧めません。日常的な飲み物であるお茶などから、適切な量の摂取で勉強に集中してほしいと思います。

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カフェイン摂取のメリットとデメリットがわかったのではないだろうか。カフェインが含まれる飲み物は適量を心がけ、おすすめの食材も上手に取り入れ勉強に励んでもらいたい。

(イラスト:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。