労働環境の改善が様々な業界で行われている中、アルバイトの“立ちっぱなし”問題の解決に向けた製品が登場した。

それが「マイナビバイトチェア」だ。

(出典:マイナビ)
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このイスは、同社が運営するアルバイト情報サイト「マイナビバイト」がオフィス家具の製造販売を行う株式会社SANKEI(三重県)と共同で製作。

マイナビバイトは、多くの従業員にとって隠れた悩みの種になっているアルバイト中の“立ちっぱなし”問題の解決を目指し、3月28日に「座ってイイッス PROJECT」を始めている。同プロジェクトで調べたところ、座っての接客を認めている雇用主が23.3%いる一方で、接客中に座りたいパート・アルバイトが65%いることがわかった。

(出典:マイナビ)
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雇用主が座ることを許可していない理由についても聞いており、「お客さんからの印象の悪化を防ぐため(33.8%)」が最多だが、2位は「なんとなく・特に理由はない(25.6%)」で、理由なく禁止しているケースも見られた。

雇用主の7割「接客中、イスに座ってもいい」

なお雇用主の中でも「接客中、イスに座ってもいい」と思っている割合は73.3%。また「自分がお客さんだったらイスに座って働く人が気になるか」について、雇用主とアルバイト両方に聞くと、8割近くが「気にならない」「問題はない」と回答した。

(出典:マイナビ)
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このプロジェクトを始動するにあたっては、アルバイト中の使いやすさを考えた「マイナビバイトチェア」を開発。ドン・キホーテやABCマートなど賛同する企業に一部無償で配布し、3月28日から一部店舗で試験的に導入している。

「マイナビバイトチェア」は軽くコンパクトで、業務中でも立ったり座ったりしやすく、姿勢よく座れることを重視しているという。

(出典:マイナビ)
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同プロジェクトの公式サイトでは、座って働くバイト情報の紹介や「マイナビバイトチェア」の問い合わせを受け付けている。

サイトでは、座って働くことについての意見を募集しているようだが、どんな声が寄せられているのだろうか?そもそもなぜこのようなプロジェクトを立ち上げることになったのか?マイナビの担当者に聞いてみた。

きっかけは「海外の座ったままレジ業務」

――「座ってイイッス PROJECT」はどんなきっかけで始まった?

きっかけは協力会社の担当者が海外で従業員の方がレジ業務を座ったまま対応されていたのを見かけたことでした。日本では、レジ業務も立ったまま行われるのが当たり前の価値観としてありますが、その国と同様に「座って働いても問題ない」という考えが広がれば、少しでも働きやすい世の中になるのではないかと考えています。

働く上での新しい価値観を世の中に広げることは、当社のパーパス「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる」の意味する、“企業活動であらゆる人の可能性を広げる”いう考えにも合致することから、本取り組みを共にスタートさせることになりました。

今回のプロジェクトをきっかけとして接客中に座ること以外にも、少しでも働きやすい世の中を作っていくため、働き手側と雇用主側の意見交換が活発になること期待しています。

マイナビバイト特設サイトでも「バイトでのお悩みやお困り事」を収集し、新たなプロジェクト検討の参考にすることで、今後も未来へ繋がる働く価値観のアップデートを推進したいと考えております。


――なぜ今あるイスではなく「マイナビバイトチェア」を開発した?

勿論、働きやすければどのようなイスでも良いと思っていますが、実際にレジ業務をされている方を観察させていただいたり、企業様とお話を進めていく中で、最初の導入ハードルを下げるため下記3点を意識しました。

・立ったり座ったりしやすい
・軽くて動かしやすく収納しやすい
・座っていることが目立ちにくい

従業員の方はレジ業務以外もされているので、店舗の中では常に動きまわる必要があり、かつ店舗内のスペースにも限りがあることなどから、イスを置いてしまうと業務の妨げになってしまう可能性もありました。そのため、「立ったり座ったりしやすさ」と「軽くて動かしやすい、収納しやすさ」を重視したデザイン設計にしています。

また、働き手側も座る選択肢があったとしても、今はまだ、お客様の目が気になる方も多いと思いますので、姿勢もよく見え、「座っていることが目立ちにくい」つくりを意識しました。

(出典:マイナビ)
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――「マイナビバイトチェア」の特徴は?開発で苦労した点は?

業務をスムーズに行うため、「軽さ」と「動かしやすさ」を重視して開発いたしましたが、実際にサンプル品に腰をかけてみると、軽すぎて不安定になってしまったりと、バランスをのとれたデザインにするのがとても難しかったです。


――「マイナビバイトチェア」を一部無償で配布し、試験導入した狙いは?

世論では既に「座っても問題ないのでは?」という雰囲気はありましたが、お客様の反応が気になること以外にも導入に際しての障害がいくつかあると考えていました。

イスを置くことで業務の導線上邪魔になってしまう可能性があることや従業員の方の心理的ハードル等です。そのため、今回の試験導入で、座って働くことのデメリットも把握し、企業様と共に改善案を模索していければと考えています。

また、プロジェクト動画の公開などを通した「座って働いてもいい」という新たな考え方を発信することにより、世間の声を収集し、イスの設置を考えていなかった企業様にもきっかけを提供できればと思っています。

働き手と雇用主による意見交換の活発化を期待

――公式サイトでは、座って働くことについて、どんな声が寄せられている?

現状ですと従業員としても、お客さんとしても「座っての接客は問題ない」という考えの方がほとんどでした。回答者は、20代が最も多く、とくに男性がより多くご意見をくださっています。

意外にも、現在アルバイトとして働かれている方ではなく正社員の方が多く回答をしてくださっており労働時間が長い分、働き方に関して意見をもたれていて、世の中を変えていきたいという気持ちがある方がたくさんいらっしゃると感じました。

座りたい理由としては、年齢や体調不良によって「立ちっぱなしの業務がきつい」という意見が多く、顧客側の意見としてもサービスに対する感謝を含めて店員さんの負担を減らしたいという意見が多かったです。


――このプロジェクトが広まることで、どんな社会が実現する?

「座れるアルバイト」が増えることで、年齢や身体的な問題などで働きたいけど働けない方にも、働く選択肢を提供することができると考えています。働くことは収入を得る目的以外にも、社会との関わりを保つことで幸福度を高める意味もあると思いますので、いまよりも多くの人が幸福になれる社会の実現を目指していきたいです。

また今回のプロジェクトをきっかけに、座って働くこと以外にも、きっかけがないだけで「この当たり前は変えてもいいのでは?」という価値観を変えていく世の中の流れ、働き手側と雇用主側の意見交換が活発になること期待しています。

(出典:マイナビ)
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「マイナビバイトチェア」は今後、市販が予定されている。時期としては5月中旬を目途とし、現在試験導入中の企業からの結果が集約ができ次第、案内するとのことだ。

このプロジェクトが働き方の多様化や労働環境の改善にどのように貢献していくのか、これからも注目したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。