福島・会津若松市の東山温泉で、3月27日から建物の中に入り込んでいたクマが3月29日に捕獲された。Mr.サンデーは、捕獲の一部始終を間近でとらえた映像を独自に入手した。

空き家にクマが“立てこもり”

現場は和菓子店に隣接する川沿いに立つ空き家。そこが何者かに荒らされていたという。和菓子店「松本屋」の若女将、一条あずささんは、「警察の方に通報して、中を見てもらったところ、クマがいるということだった」と話す。

その後すぐに、警察や市の職員による24時間態勢の監視が始まった。建物の窓には、時折、黒い影が動く。猟友会など捕獲隊も待機し、物々しい雰囲気に……。周りは旅館が建ち並ぶ温泉街。人に被害が及ばぬよう、慎重に捕獲のチャンスを探っていた。

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膠着(こうちゃく)状態が続く中、発見から3日目、クマに動きが見られた。会津若松市の鳥獣被害対策実施隊の捕獲隊長・小沼清一さんは「建物の手前のそこから首を出したんですよ」と話す。

まさに千載一遇のチャンス。しかし、ある障壁が……。半径200m以内に10軒以上の人家、広場や駅など多数の人が集まる場所では猟銃の使用が禁止されているのだ。

現場は、四方を旅館や住居などに囲まれているため、猟銃が使用できない。そのため、至近距離から麻酔銃を撃つ必要があった。

クマとの距離は約15m。だが、なかなか撃てない。外せばクマが暴れ出す可能性もある。万全を期すため、さらに近づくことになった。

わずか3mの至近距離まで接近。そして次の瞬間、麻酔銃が命中し、穴からクマが飛び出した。そして10分後、眠ったクマを網で捕獲。体長約1m、体重50kgほどのオスのクマは、山の奥へと帰された。

“暖かい場所”で過ごしていた?

しかし、捕獲隊長の小沼さんは違和感を覚えたという。

麻酔銃が命中し、穴から飛び出したクマ
麻酔銃が命中し、穴から飛び出したクマ

「普通であれば(冬眠明けで)春先のクマが体が細くなって出てくるんですけど。完全なる冬眠ではなかったんじゃないのかなと思う。“仮冬眠”みたいな感じで。この建物の中が、下にお湯がタラタラ流れてるらしいんですよ。温泉だったので、だから中がある程度暖かいらしいんですよ。エサは完全に(近くの)どこかで補給してんだなっていうのがわかりました」

捕獲された後、山に帰されたクマ
捕獲された後、山に帰されたクマ

クマを山へ帰すことで決着した今回の騒動。再び、戻ってくる可能性は?

クマの生態に詳しい、東京農工大学大学院の小池伸介教授は、「(クマに)メリットがあったら戻ってくるかもしれないので、例えば食べ物をそこに置かないようにしておけば、またそこに戻って家に入る可能性は低くなると思います」と説明する。

現在は、クマが逃げ込んだ空き家の穴は塞がれ、町は静けさを取り戻している。
(「Mr.サンデー」3月31日放送より)

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