次期衆院選の目標に「野党第一党」と「自公過半数割れ」を掲げる日本維新の会。共に達成すれば「馬場政権」さえ現実味を帯びる。その時、維新が組む相手とは?彼らが目指す国の形とは?FNNの単独取材で迫る。

日本維新の会・馬場伸幸代表(59)
日本維新の会・馬場伸幸代表(59)
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立憲と異なる立ち位置

維新は2024年3月の党大会で、次期衆院選の目標を「野党第一党」と「与党の過半数割れ」とした。立憲民主党とは真っ向勝負になるから、野党同士の選挙協力は一貫して否定する。

政治資金問題でも、立憲とは主張が異なる。たとえば立憲は「政治資金パーティーの全面禁止」をうたうが、維新は「企業団体によるパーティー券購入を禁止」とした。筆者が「弱くないですか?」と聞いてみると、維新・馬場伸幸代表は「今の段階では、高めの球を投げようと思ったらいくらでも投げられる。格好いいことを言うけど、やりませんよ」と立憲に疑いの目を向ける。

「弱くないですか?」馬場代表に話を聞く筆者
「弱くないですか?」馬場代表に話を聞く筆者

維新が掲げる政治改革案は、まず自分たちが率先して実行するという。それが野党各党に広がれば、与党も同調するしかなくなり、政治全体が変わる…という主張だ。実際、会計責任者を議員本人に変更するよう党内に指示。政治資金規正法違反があれば、ダイレクトに議員が罪を問われる仕組みだ。

一方で、個人の政治資金パーティーについては、むしろ推奨する。馬場氏は「後援会の結束を固める、“地力”を強めるためのイベントもある。十把一絡げにすべきではない。党内でも『パーティーはやらなあかん。後援会総会的なパーティーはやった方がいい』と言っている」と語った。

「野党第一党」の座を争う維新と立憲だが、「自公過半数割れ」が実現したらどうするのか。衆院選後の国会では、総理大臣を決める首班指名がある。気が早い話だが、衆院で自民党総裁が過半数を獲得できなければ、野党第一党の党首との決選投票になるだろう。だから、立憲・泉健太代表は「ミッション型内閣」を呼びかけている。政治改革など、限られたミッション(使命)のための連立政権を作ろうというものだ。

これに対し馬場氏は「仮定の話だから、その時が来ないと、どう判断するかは分からない」と前置きした上で、「外交、安全保障、憲法、エネルギーという国家の基本になるところが合致していなかったら、そこから派生してくる政策、法律がうまくまとまるはずがない。今の立憲と組んでも、ろくなことにならないとしか、今は思えない」と疑問を投げかけた。

「『今は』ですか?」と質問を重ねると、「今はね」と答えた馬場氏。立憲の変化次第では可能性がありそうだ。では、自民のことはどう思っているのだろうか。

本音は…自民の方が「まし」?

馬場氏は「自民党って、腐ってもやっぱり、目の前の課題とかこなしていく立場にいるし、責任もある。悪いこともいっぱいあるけど、いいことも時々やっている。野党第一党(立憲)の方々って、何もいいことしてないから」と語る。現時点では、立憲より自民の方が「まし」と考えているようにも聞こえる。

与党過半数割れなら、自民も立憲も、維新に秋波を送るだろう。その際の判断基準について馬場氏は、「どういう組み合わせになったら我々が目指す改革ができるのか、というのが判断の物差しになる。やりたい具体的な政策を、できることが確約される、担保される、そういうポジショニングを必ず取ると思う」と、自らの未来を予想する。

維新が掲げた目標は他にもある。「今後3回以内の衆院選での政権奪取」だ。維新が目指すのはあくまで、「単独過半数による単独政権」である。

維新の「首相候補」は誰?

維新はどんな国を目指すのか。馬場氏は「経済も、政治もちゃんとやって国民が納得してくれるような政治。高齢者の皆さんが安心できる社会づくり。若い人もワクワクドキドキ。少子化の一因は経済的な部分が大きいから、教育無償化もやっていく」と語る。

それを推し進める維新の「首相候補」は、馬場氏なのか。本人は「自信はあんまりないけど、覚悟はしている」と語る。31年前、初めての市議選で「内閣総理大臣を目指してやります」と支援者に約束した瞬間に、腹を固めたのだという。

党内には、吉村洋文共同代表(大阪府知事)もいる。大阪では街頭に立てば黄色い声援が飛ぶ人気者だ。万博が終わったら、知事を辞めて国政に戻るとの見方もくすぶる。馬場氏は「俺は野球で言うと8番キャッチャー、吉村は今や4番でエース。タイプが違う。俺とかが吉村みたいにやったら絶対失敗する。自分は自分らしくやる」と静かに笑う。

維新は過去の常識が通用しない不思議な政党だ。今後何を仕掛けてくるのか、注目する状況が続きそうだ。

執筆:フジテレビ政治部 鈴木祐輔(関西テレビ)

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鈴木祐輔
鈴木祐輔

2001年関西テレビ入社。制作局、経理局を経て報道局へ。
2012年には行政キャップとして大阪市長だった橋下徹氏や日本維新の会の結党を取材。
大阪府警キャップ、編集長などを経験し、現在は東京駐在記者として、フジテレビ政治部で野党担当。