4月15日に、今シーズンの全線開通予定の「立山黒部アルペンルート」。営業再開に向けて、設備や機械を守る人たちが冬の間も働いている。大観峰と黒部平を結ぶ「立山ロープウェイ」の点検や保守にあたる技術者たちに密着した。

「動く展望台」とも

標高2316メートル、北アルプス立山連峰の断崖。ここに、立山ロープウェイの大観峰駅がある。

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気温は氷点下7度。この時期は雪と氷に覆われている大観峰駅だが、冬の間もここに10人ほどが常駐し、機械の保守や点検にあたっているのだ。

ロープウェイの客車は、線路の役目を果たすロープ(支索)の上を走り、原動装置とつながったロープ(えい索)が引き上げる。

標高差488メートル、大観峰と黒部平の間を7分間で走行し、「動く展望台」とも呼ばれる立山ロープウェイ。アルペンルートが閉鎖されている12月~4月までの冬季期間も含め、365日点検し、動かしている。

滑車周りや客車に上がって、点検項目に従い、傷や異音がないか確認をする。

立山黒部貫光(大観峰運輸区)・田村務さん:
冬で、そんな動かす必要ないんじゃないかとはなるけど、間が空けばあくほど、“当たり前の音”が違和感になってしまう。それが違和感になってしまうと、本当の違和感を感じられない

「当たり前を当たり前のように聞ける・感じられる状態を保つために、冬場も動かす必要性はある」と田村さんは話す。

約1.7km 途中に支柱は1本もない

この一帯では、昔から雪崩や落石が頻発。そのため、立山ロープウェイは、山頂から山麓までロープを支える柱が1本もない「ワンスパン方式」を採用している。約1.7kmの運行距離は、ワンスパン方式としては国内最長だ。

山頂から山麓までの約1.7km、ロープを支える柱は1本もない
山頂から山麓までの約1.7km、ロープを支える柱は1本もない

立山黒部貫光(大観峰運輸区)・田村務さん:
冬季間はやっぱり雪が一番ネックになってくる。0度前後のときに、どうしてもワイヤーに氷が張ってしまったり。その氷が雪を呼びよせてしまって、ロープが下がってしまうことがある。山岳地なので雪崩もあったりする。雪はけっこう怖い

山麓の黒部平駅で「重すい」と呼ばれる85トンの重りをつけることで、支柱がなくてもロープがたるむことなく、客車を吊り下げて動かすことができる。

厳しい自然環境…絶景が心を和ませる

大観峰には従業員寮があり、冬季期間は10人ほどが交代で常駐している。

この日は晴れ。雲海の向こう側、後立山連峰から朝日が昇る。厳しい自然環境で働く人たちの心を絶景が和ませる。

立山黒部貫光(大観峰運輸区)・田村務さん:
きょう良いですね。がんばろうってなる。ほんとに、こういうときよく思う。どこにおるんやろうって感じで。(ロープウェイを見て)かっこいいと思う

大気中の水分が冷やされて氷の粒となり、日の光に輝く「ダイヤモンドダスト」も…。

立山黒部貫光(大観峰運輸区)・田村務さん:
言葉がいらないくらいきれいな景色を見ると、良いかなって思ったり。お客さんにありがとうって言っていただけるのは、うれしい。技術的に安全にお客さんを輸送できたっていうのもありますし。お客さんのありがとうはうれしい

5泊6日の勤務を終え、いったん下山。
技術者たちが、世界に誇る山岳観光ルートを支えている。

(富山テレビ)

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