キャサリン妃が写真加工認め謝罪も…

ウィリアム英皇太子の妻キャサリン妃が改ざんした家族写真を公開したことは「英王室発のフェイクニュース」として衝撃が広がり、同妃が謝罪しても新たな憶測に火をつけたようにマスコミを騒がせている。

英王室は10日、英国の「母の日」にあたってキャサリン妃が長男ジョージ王子、長女シャーロット王女、二男ルイ王子に囲まれ談笑する写真を公表した。

英王室のインスタに掲載されたキャサリン妃の写真
英王室のインスタに掲載されたキャサリン妃の写真
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キャサリン妃は1月に腹部の手術を受けたと発表されて以来動静が明らかにされずさまざまな憶測を呼んでいたので英マスコミは揃ってこの写真を大きく紹介し、「ケイト(キャサリン妃)、すごく健康そう」(ザ・サン紙)などと伝えた。

キャサリン妃の笑顔にほっとしたのもつかの間…
キャサリン妃の笑顔にほっとしたのもつかの間…

しかし間もなく、この写真には改ざんした跡があることを画像処理の専門家が指摘した。例えばシャーロット王女のセーターの袖口が不自然にカットされていることなど16ヵ所が画像処理ソフトを使って改ざんされている疑惑が生じ、写真を配信したAP通信は「詳細に点検した結果、画像は改ざんされていたことが判明した」として配信先に画像を「没」にするよう指示した。

ロイター通信も配信画像を「没」にするよう指示
ロイター通信も配信画像を「没」にするよう指示

これを受けて翌日、キャサリン妃はX(旧ツイッター)に次のような謝罪文を投稿した。

「他の多くのアマチュア写真家のように、私も時として写真を編集することがあります。昨日お見せした家族の写真が混乱を招いたことをお詫びします。皆様が楽しく「母の日」を過ごされることを望みます。C(キャサリン)」

騒ぎは収まらず「フェイクニュース」として炎上

これで騒ぎも収まるかと思わせたが、逆に英王室発の「フェイクニュース」として炎上することになってしまった。

「フェイクニュースの時代に、王室でさえ写真を編集しているのであれば、誰が信用できるのかと批評家は問いかけている」(ザ・テレグラフ紙電子版11日)

「ケイトの写真は、国民の好奇心を鎮めるどころか王室をめぐる噂を過熱させてしまった」(BBC放送11日)

BBC放送が指摘した画像の不自然な点
BBC放送が指摘した画像の不自然な点

「王室の写真編集のルールは単純だ。すべてを話すこと。王女は今、写真を編集したことを認めたが、その理由や何を編集したのかは明らかにしていない。現段階では、プライバシーは機能しない。それは噂、ゴシップ、捏造を生む。フェイクニュースとフェイク写真が横行するとき、秘密主義は真実の敵だ。ただ、何が問題なのかを言えばいい。その方が尊敬を生むことになる」(「ザ・ガーディアン」紙電子版11日)

「ケイトはなぜ写真を改ざんしたのか? 素人の企みは裏目に出たわけ」
(「ザ・タイムズ」11日)

英国の権威紙「ザ・タイムズ」も手厳しい。

記事は、改ざんされた写真が発表されたことでキャサリン妃の容態に対する疑問を深め、改ざん前のオリジナルの画像を公開するよう要求を深めただけでなく王室の写真のあり方をめぐる問題にまで影響が及んでいると電子版11日の記事で指摘した。

そうした中で、英国の大衆紙「デイリー・メイル」紙は写真に写っていなかったものに注目した。同紙コラムニストのサラ・バインさんは12日に電子版に掲載された記事で、こう指摘した。

「デイリー・メイル」紙が指摘した画像の不自然な点
「デイリー・メイル」紙が指摘した画像の不自然な点

「奇妙なのは、この写真には驚くべき細部が編集されずにそのまま残されていることだ」

「それは王女が一つも指輪をはめていないという事実だ。もちろん、王女は常にダイヤモンドとサファイアの婚約指輪をしているわけではない。しかし、結婚指輪は?プリンセス・オブ・ウェールズがそれを着けていないのを見たことがあるだろうか?」

腹部手術前のキャサリン妃…薬指に指輪をしている
腹部手術前のキャサリン妃…薬指に指輪をしている

「妃殿下が結婚指輪を身に着けていないのには、医学的な理由があるのかもしれない。マーティン・スカー医師が『デイリー・メール』紙で説明しているように、手術後に指の関節が腫れたり、ある種の薬の影響で指の関節が腫れたりすることを想定して、医師からしないように勧められたのかもしれない。あるいは、腹部の手術後によくあることだが、少し体重が減ったので、指から滑り落ちるリスクを避けたかったのかもしれない」

「いずれにせよ、写真にデジタル加工を加えるとするならこの部分だったのではないだろうか?画像処理するのはシャーロットの袖口ではなく、皇太子妃の指に結婚指輪をはめたように加工すればよかったのだ。そうすれば、人々が早合点するのを止めることができるはずだ」

バイン記者はそこにキャサリン妃のメッセージが込められているのではないかとも考える。

「指輪がないのは、彼女がそれを望んでいないからなのだろうか?考えても仕方のないことだが」

腹部手術前のキャサリン妃
腹部手術前のキャサリン妃

バイン記者はキャサリン妃に同情しながらも、記事をこう締め括っている。

「しかし、この写真の問題は、事実それが嘘だということだ。さらに悪いことに、この写真は嘘を隠すために考え出された嘘のように見える。それに終止符を打つ方法はただ一つ… 本当のことを明らかにするか、あるいは自らが作り出した泥沼に溺れてしまうかだ」

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。