町制施行以来、約70年間女性議員が一人もいなかった宮城県蔵王町。2月25日に町議会議員選挙が投開票され、立候補した女性3人が全員当選を果たした。町に誕生した初の女性議員。今後、有権者の期待にどう応えていくのか注目だ。

約70年間、女性が立候補すらしなかった町

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 2月25日に投開票を迎えた宮城県蔵王町の町議会議員選挙。19人が立候補し現職8人、新人5人が当選。このうち3人が女性だった。蔵王町では1955年の町制施行以来、女性が立候補すらしたことがなかった。

当選直後の今千佳さん(写真右)
当選直後の今千佳さん(写真右)

 トップ当選を果たした今千佳さん(52)は「一生懸命私の背中を押してくださったので、この勝利を得ることができたと思います」と喜びを噛みしめた。

誕生した3人の女性議員 訴えは…

 立候補した女性3人は、何を訴えたのだろうか。

今千佳さん
今千佳さん

 今千佳さんは福島・会津若松市出身の52歳。24年前に夫の転勤をきっかけに蔵王町に移住した。蔵王町が「女性に政治への関心を持ってもらいたい」と去年、開催した模擬議会に参加し立候補を決めたという。「女性を大切にする町」を、まず第一歩としてつくりあげていきたいという思いから、選挙戦では「気軽に女性が相談できるオンライン窓口の設置」などを訴えた。

伊藤雅代さん
伊藤雅代さん

 伊藤雅代さんは横浜市出身の68歳。30年前に購入した蔵王町の別荘に4年前、住み始めた。教育委員会の指導主事や小学校の校長などの経験を生かし「住みやすく子供が主役のまちづくりを進める」などと訴えた。

藤澤麻衣子さん
藤澤麻衣子さん

 藤澤麻衣子さんは、隣町の村田町出身の40歳。夫と共働きの中、8歳の娘の子育てに追われている。母としての声を行政に届けたいと「子ども食堂の開設」などを訴えた。

左は娘の陽向さん
左は娘の陽向さん

 一方、子育てと選挙活動の両立の難しさにも直面。娘にも寂しい思いをさせてしまうこともあったが「現状を変えたい」という思いが、藤沢さんの原動力だった。藤澤さんは「この子たちの将来を守っていかなければいけない。やはり今、この現状で思うところがたくさんあるので、それをやっぱり変えていかなきゃいけない」と話した。

男女差ある議員の割合 新たな視点を...

 そもそも、宮城県内の女性議員の割合は現状、どうなっているのだろうか。県内35自治体の議員数の合計は615人だが、そのうち女性議員は99人。割合にすると約16%だ。さらに蔵王町、七ヶ宿町、村田町の3自治体は女性議員「ゼロ」議会となっている(2024年2月20日時点)

 この状況に、地方政治に詳しい東北大学・河村和徳准教授は、「男性議員の中で『子育てしています。介護しています』というのはあまり注目されないが、女性議員となると議員であり、妻であり、母であり…きちんとやりなさいみたいな雰囲気が残っている。そうすると、女性に対して求められる水準がすごく高い。これも立候補の足かせになってしまう」と分析する。

東北大学・河村和徳准教授
東北大学・河村和徳准教授

 一方、全国的に見ると、女性議員の比率は高まっている状況があるのも確かだ。女性の立候補者が増えれば、その分「新たな視点が増える」と期待を寄せる。河村准教授は「『全町民の代表として何ができるのか』ということと同時に、一方で女性として『男性だけでは見てこられなかったこういう視点がありますよね』と、どこまで提案できるかというところが鍵になってくる」 と話す。

「当選証書」手に 刻む歴史

 そして当選から一夜明け、当選議員たちには証書が手渡された。投票率は68.76パーセントと、前回を0.63ポイント上回った。

左から、今千佳さん・伊藤雅代さん・藤澤麻衣子さん
左から、今千佳さん・伊藤雅代さん・藤澤麻衣子さん

今千佳さん:
「女性議員初誕生という形で、みなさまに受けとめていただけたので、より一層気持ちを引き締めて頑張っていきたい」

伊藤雅代さん:
「3人とも母親の立場ではあるが、子育て支援や蔵王町がどこまで負担軽減ができるのか、そのあたりを来年度の予算もすぐ始まると思うので、しっかり見つめていきたい」

藤澤麻衣子さん:
「(3人の当選は)すごくうれしい。お母さんでも、小さい子がいても、できるという前例になったのではないかと思う」

 新たな歴史を刻んだ3人の女性議員たち。今後、有権者の期待にどう応えていくのか…その活動に注目だ。

(仙台放送)

仙台放送
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