麻酔を使わずに犬に帝王切開をしたなどとして動物愛護法違反(殺傷・虐待)などの罪に問われている長野県の元犬販売業者の代表に対する7回目の公判が2023年11月30日、長野地裁松本支部で開かれた。被告を刑事告発した動物環境・福祉協会Evaの理事長・杉本彩さんは、「素直に罪を認め、反省しているとは思えない」とコメントした。

コロナ下 ペットブームで…

起訴状によると、安曇野市の百瀬耕二被告(62)は獣医師の資格を持たないのに2021年8月、松本市の自宅(当時)でフレンチブルドッグ4匹とパグ1匹を麻酔せずに帝王切開し、みだりに傷つけたなどとされている。

この日の公判で弁護側から犬舎での飼育状況について問われた被告は、「金網の目に肉球をはさんだり指をつっこんだりしてけがをする犬もいた」、「金網に皮膚がこすれて皮膚病を発症した犬もいた」、「新聞紙を敷かなかったのは掃除が面倒だったのと、従業員不足が理由だ」と述べた。

2021年9月に警察の家宅捜索が入った時、犬舎には453匹の犬がいたが、世話をするのは被告含め4人だけだったことを指摘されると、「人手不足だった」と認め、犬を減らさなかったことについては「コロナ下でペットブームが来ていて値段が上がっていた。犬を減らすのは売上を下げることにつながり、経営者としてちゅうちょした」、「犬たちに申し訳ないことをした」などと述べた。

施設への家宅捜索(長野・松本市・2021年9月)※当該の犬ではありません
施設への家宅捜索(長野・松本市・2021年9月)※当該の犬ではありません
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帝王切開しなかったら多くの犬が…

弁護人から安楽死も1つの手段だったのではと問われると―。

「奇形は里親に出せず自分の犬舎で飼っていて安楽死させられなかった」、「老犬は免疫力が低下し難産になりやすく、余生は一般の家庭でかわいがってもらいたかった」と泣きながら述べていた。

施設で飼育していた犬 ※当該の犬ではありません
施設で飼育していた犬 ※当該の犬ではありません

自分で帝王切開をしたことについては「技術的に問題はないと思っていた」、「法改正以降は獣医師に任せるべきだったが、当時、24時間365日、帝王切開に対応できる人がおらず、自分たちでやっていなかったら、たくさんの母犬と子犬が死んでいたと思う」と述べた。

そして、「今思えばもっと早くに会社を閉じなければいけなかったと思う」、「もう2度とブリーダーをやることは考えていない。周りの人や家族に迷惑をかけないよう、残りの人生を生きていたい」、「迷惑をかけてすみませんでした」と頭を下げた。

施設への家宅捜索(長野・松本市・2021年9月)※当該の犬ではありません
施設への家宅捜索(長野・松本市・2021年9月)※当該の犬ではありません

帝王切開「自分の犬はやってもいい」

また、被告の妻が弁護側の証人として出廷した。

検察官から「被告が帝王切開をやっていたことは知っていたか」と問われると、妻は「帝王切開をしていたことは知っていた」と答えた。

また、「被告が自分で帝王切開をしていたことについてどう思うか」と聞かれると、「初めに知ったときはびっくりした。被告に『やっていいの?』」と質問すると、被告は「他人の犬はやってはいけないけど、自分の犬はやってもいいんだよ」と答え、「あ、やっていいんだと思った」と妻は話した。

施設で飼育していた犬 ※当該の犬ではありません
施設で飼育していた犬 ※当該の犬ではありません

杉本彩さん「命と思っているのか」

被告を刑事告発した「動物環境・福祉協会Eva」の杉本彩理事長はNBSの取材に次のようにコメントした。

動物環境・福祉協会Eva 杉本彩理事長:
「裁判でネグレクト(放棄)は認めざるを得ないから認めているという印象です。従業員数が足りないから掃除や世話が行き届かないのは当然。 それについては否定できない明らかな事実なのでネグレクトになってしまったと認めているに過ぎないのでしょう。ただ、結局、自分の責任や罪を誰かに押し付けているだけで、 素直に罪を認め、反省しているとは思えません」
「自己所有の動物なら無免許で帝王切開してもよいなど、そんな強引な解釈をよくできたもんだと思います。この間違った解釈により、 自分の罪を大きく軽減しようという作為が見えます。そもそも犬を命と思っていたら、 こんな犠牲を強いたりしません」

次回公判は1月15日で被告への求刑が行われ結審する予定。

動物環境・福祉協会Eva 杉本彩理事長
動物環境・福祉協会Eva 杉本彩理事長

(長野放送)

長野放送
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