木を薄く削った経木(きょうぎ)といわれるもの。今ではあまり見かけなくなったが、生ものなど食品の包装材として使われる。この経木を再び発信しようと、福島県只見町では地元の資源を活用して製造が始まった。

始めたのは知人の相談がきっかけ

「ガチャン、ガチャン」同じリズムで機械の音が鳴り響き、木が薄く削られていく。
「かんなで削っているから表面がツルツルしてるんですよね。すごく爽やかな香りがして、削っているときなんかもいいにおいがするというか」と話すのは、福島県只見町の目黒道人さん。

木材をカンナで削って経木をつくる
木材をカンナで削って経木をつくる
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目黒さんが経営する只見町のセイワ電子では、2022年から「経木」の製造を始めた。「キャンプ場のプラスチックごみを減らすため経木を作れないか」という目黒さんの知人からの相談がきっかけだった。

「経木」がなくなってしまうかも

食品の包装に使われる「経木」、製造の最盛期の昭和30年代には、全国に800軒以上の経木を製造する工場があったといわれる。しかし、今では10数軒までに激減した。目黒さんは「このままいくと、もしかしたら経木自体が無くなってしまうかもしれない、というのを知って興味がわいたんですね」と話す。

経木をつくる工場は全国で十数軒に
経木をつくる工場は全国で十数軒に

その後、目黒さんはかつて経木を作っていた宮城県の工場から機械を譲り受けた。生産を始めて約1年経つが、これまで試行錯誤の連続だった。

セイワ電子・目黒道人さん:こんな感じです。このテンポでやりますから。正直僕らもまだ分かっていないところが多いんですけれども、一定のリズムと音が揃わないと動きが悪いんだなって思いますよね。

1年前から経木の製造を始めた目黒道人さん
1年前から経木の製造を始めた目黒道人さん

「経木」に込めた思い

畑違いの作業に戸惑いながらも生産を続ける目黒さん。経木を広めたい理由があった。
目黒道人さん:こちらがアカマツです。奥会津地区のアカマツを中心に比較的標高の高いエリアでアカマツが自生していますので、それを使うようにしています。

経木の原料・アカマツ
経木の原料・アカマツ

経木の原料は、地元のアカマツ。抗菌効果や湿度を整える効果があるといわれている。プラスチック製に比べ環境に優しく、地元の林業を盛り上げるきっかけにもなる。目黒さんは「環境にも優しくて、食品にとっても美味しく包んでくれたりとか、そういったメリットもありますので、もう一度改めて見直して頂きたいなと思っています」と話す。

経木を只見町から発信したい

町内でカフェを経営している目黒さんが身近に感じてもらおうと始めたのが、経木で包んだおむすびの販売だ。

経営するカフェでおむすびを販売
経営するカフェでおむすびを販売

目黒道人さん:何といっても只見はお米がおいしいので、経木を使う時を考えたときに、おむすびを使うにはピッタリかなというところ。只見を実感して頂けるようなおむすびに出来たんじゃないかなと思っています。

おむすびを経木で包む
おむすびを経木で包む

ここでしか味わえない逸品。観光客や地元の人からも人気となっている。

おにぎりを食べた人は「こういうもので包まれていると、見栄えもしますし、若い子、子どもたちが興味持ってもらえるといいかなと思いますね」と話す。

経木で包んだおむすびはお客さんにも好評
経木で包んだおむすびはお客さんにも好評

販路拡大 世界に発信へ

11月24日、同じ奥会津地方、三島町にある道の駅に向かう目黒さん。販路拡大の活動もしている。

目黒道人さん:これだと大きいから、こっちだと買いやすいというのはあるのかな?
道の駅駅長:手に取りやすいというのは、あるのかもしれないですね。

道の駅で経木の販路拡大活動
道の駅で経木の販路拡大活動

JR只見線の再開通で海外からの観光客が期待される福島県の奥会津地方。目黒さんは、まず「経木」を多くの人に知ってもらい、いずれは海外に発信していきたいと考えている。

目黒道人さん:日本食と合わせて、この経木も海外に出て行って、また海外でも親しまれるような商品になってくれたら嬉しいなと思います。

経木を只見町から世界へ発信したい
経木を只見町から世界へ発信したい

地元の自然素材で環境に優しい「経木」
”只見から世界へ”可能性は広がっていく。

(福島テレビ)

福島テレビ
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