世界的なアート集団「チームラボ」が手がけるアート空間が、石川県金沢市の金沢城公園に登場した。来場者が作品に働きかけることによって、アート空間自体も表情を変えていく仕掛けがあるという。どんな体験が待っているのか取材した。

昼の景観を妨げない工夫

アート展の開催1カ月前に迫った2023年8月下旬。金沢城公園ではチームラボのメンバーなどがプロジェクションマッピングに使うプロジェクターの配置を調整していた。スクリーンとなる五十間長屋のお堀の傍にはプロジェクターの入った黒いボックスが並ぶ。

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担当するのはチームラボの藤賀雄太さんだ。「石垣に映像作品を映す予定なんですが、設備が作品に干渉しないような位置を今調整しています」。石垣から離れて全体像が分かる位置に来ると、黒いボックスは生垣に隠れて見えないようになっている。「機材も何も見えないし、本当に昼の風景から突然映像が映っているみたいに変わるので、けっこういい体験になるんじゃないかな」と藤賀さんは自信を示した。

藤賀雄太さん
藤賀雄太さん

空間の魅力引き出す引き算も

開幕を直前に控え、城内に姿を見せたのは猪子寿之代表だ。「あれは、誰が作ったの。いいね」などと作品一つ一つの見え方をチェックしていく。

猪子寿之代表
猪子寿之代表

石垣を使った作品のエリアに入ると「入り口は認識しやすいほうがいいんじゃないかな。あの梅も1本目は空けちゃおう」と、入り口付近にある背景の梅の木を減らすよう指示した。この作品が何を表現しているのか、訪れた人が感じられるようにとの意図だ。確かに梅の木を減らすことで動物の動きがよりはっきりと感じられるようだ。こうした細かいチェックを積み重ねて、チームラボの作品は完成する。

触れることで変化する光の作品

内覧会の前夜、完成した作品をチームラボの工藤岳さんに案内してもらった。工藤さんは世界各地の展示に数多く携わってきたチームラボの中心メンバーだ。紹介してもらったのは卵型の光が立ち並ぶアート作品。

「卵を触ると色と音が森中に伝播して変化します」と工藤さんが話すので、向山侑希アナウンサーが実際に触ってみると、オレンジ色の卵が青色に変化し、周りの卵も呼応するように色が変化していった。

「空間の中で人々がコミュニケーションを取って、いつの間にか作品の一部になっている」と工藤さんは作品の楽しみ方を教えてくれた。さらに奥へと進むと、密集した卵の中へも歩いて入っていける。カメラマンも交えて卵の中でかくれんぼしてみると、自分がどこにいるのか方向感覚もあいまいになってくる。卵の隙間から現れた工藤さんは「楽しいじゃないですか。人と人とがつながるみたいな」と屈託のない笑顔を見せた。大人も子どもも夢中になって参加できる、チームラボの感性が伝わる空間だ。

遊び心あふれる映像美

金沢城公園の名所、五十間長屋と菱櫓の石垣で行われるプロジェクションマッピング。多くの花で形作られた動物たちが行き交う。映像はループしている訳ではないため、二度と同じ瞬間は訪れないそうだ。

大迫力の映像に見惚れていると、ヒマワリが集まった大きな何かが動き出したのだが…。工藤さんに何なのか聞くと「キリンはでかすぎて入らない。すっごい背が高いキリンがいます」と教えてくれた。遊び心をくすぐる演出も忘れない。

工藤さんがお勧めするのは離れた位置からの鑑賞だ。しばらくすると動物を形作っていた花が散ってしまった。「散ることを何度も繰り返して今この瞬間があって、生と死を繰り返しているのが分かると思いますし、普段気が付かないようなことに気が付くことっていいじゃないですか」。見る場所や角度を変えながら、移り変わる映像美をいつまでも眺めていたくなる作品だ。

来場者の絵が作品世界に登場

内覧会で体験したのは『お絵かき武将』というコーナーだ。大きな屏風のようなスクリーンの中では、イラストが立体化されたような武将やお姫様たちが所狭しと動いている。

このコーナー最大の魅力は来場者が描いた絵を機械でスキャンすると、3D化させてスクリーンの中に登場させられる仕掛けにある。石川テレビのキャラクター「石川さん」をモチーフに向山アナが描いた武将のイラストを実際にスキャンしてみた。

少し待っていると、「走って出てきました!ダンスしていますよ」と向山アナが驚きの声を上げた。スキャンした武将の絵が立体化したうえにブレイクダンスを踊りだしたのだ。参加型のアート展とあって、どのエリアに行っても飽きがこない仕掛けが隠されている。

「チームラボ 金沢城 光の宴」は2023年9月30日~11月26日の日程で、18時~21時半まで開かれる。一般チケットは1600円(金・土・日・祝日は1800円)。

(石川テレビ)

石川テレビ
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