コロナ禍で導入が進むテレワークだが、自宅だと思うように集中できないこともある。そんな悩みを、意外な場所が解決するかもしれない。
コンビニに個室型のブースを設置し、テレワークに活用してもらう実証実験が進んでいるのだ。
この試みを始めたのは、個室型のスマートワークブース「テレキューブ」のサービスを提供する「テレキューブサービス」(東京都)。コンビニチェーン・セブンイレブンの飯田橋升本ビル店(新宿)と連携し、2020年12月30日から店内にテレキューブを設置している。
15分250円の空間を体験してみた
テレキューブは充実したテレワーク環境の提供を売りに、全国9都府県の駅構内やオフィスビルなどに約130台を展開している(1月26日現在)。そこで、今回のコンビニではないが、首都圏のショッピングモールに併設されたテレキューブを体験してみた。
利用の流れは、会員登録後に専用サイトから申し込み、指定した日時に訪れるというもので、鍵の管理はIoTを活用していて、専用サイトから解除できる仕組み。個人利用だと支払いはクレジット決済で、250円で15分利用できる。
筐体は幅約120センチ、高さ約231センチ、奥行約120センチで、外観は電話ボックスのよう。内部は大人がゆったり座れるほどの広さで、テーブルや椅子、電源などが備えられていた。ただし、wifi環境は整備されていない。
気になる防音性については、外の音の存在がわずかにわかる程度でほぼ聞こえなかった。
印象としては、作業空間として集中できそうな環境だが、なぜ今回は新たに、人の出入りが多いコンビニに設置しようと考えたのだろうか。
実証実験の狙いをテレキューブサービスに聞いてみた。
着想は「公衆電話のボックス」
ーーテレキューブの開発経緯を教えて。
私たちはテレワークが浸透する前から、Web会議のサービスを提供していましたが、外出時にWeb会議できる場所の少なさが課題の一つとなっていました。そこで、公衆電話のボックスに着想を得て、2016年ごろから開発を始めたものになります。
当初はオフィスなどへの設置を想定していましたが、利用者からの反応が良かったので、公共の場で誰でも使えるようにと事業化したものが、当社が生まれた経緯になります。
ーーサービスとしてどんな特徴がある?
Web会議や作業に集中できる環境をどこでも提供できることです。個室は外側は防音材、内側は吸音材を使った防音設計になっていて、周囲が騒がしい場所にも設置できます。入退室をIoTで管理しているので、他人と接しなくても利用できるところもポイントです。
ーー新型コロナの対策はしている?
できる限りの感染症対策をしております。入退室をIoTで管理しているのもそうですし、利用は前の利用者と5分以上の感覚をあけなければできない仕組みとなっています。個室の内部は24時間連続稼働のファンがあり、空気は1分で入れ替わるので密にもなりません。加えて、ウイルスを不活性化する抗菌コーティングを、床から天井まで施しています。
Web就職に使うケースが出てくるのでは
ーーセブンイレブンに設置したのはなぜ?
テレキューブは「ここにあれば使いやすいのでは」という場所に設置を進めてきました。これまでだとオフィス、駅、商業施設などですね。コンビニは立地や利便性が良い場所にあることが多いので当初から構想はしていたのですが、店舗が狭いので難しかったのです。今回はテレワークの需要増もあり、セブンイレブンと店舗オーナー、双方のご協力をいただけました。
ーー実証実験の目的を教えて。
実証実験の目的は大きく2つで、利用面や衛生面で問題が起きないかを確認することと、コンビニならではの特徴的なユーザーや使い方が出てくるかを確認することです。
結果は申し訳ございませんが、現時点で特段お伝えできることはありません。利用面で問題は起きていなく、使い方の傾向はまだ把握できていません。ただ、想定としては学生がWebでの就職面接などに、使うケースが出てくるのではと考えております。
ーー改善すべきところはある?
コンビニへの展開を考えると筐体の大きさですね。椅子の横にカバンを置いて、書類やPCを取り出せる空間を想定していますが、もう少し小柄なものがあっていいかもしれません。
実証実験と直接関係はありませんが、機能面だとwifi環境の整備でしょうか。以前だと、モバイルルーターなどを持つ層の利用が多かったので、wifiは提供していなかったのですが、今は持たない層の利用も増えてきたので、今後は環境を整備していきたいと思います。
首都圏のコンビニに設置を広げる予定
ーーコンビニのテレキューブはどんな状況で利用してほしい?
自宅でのテレワークが環境的に難しい人だったり、多忙でオフィスに戻れない人などが業務の中間地点として利用できると思います。Web面接のときなども、神経を面接官に集中できると思うので、そうした使い方もできるのではないでしょうか。
ーー今後の展開予定は?
コンビニでの実証実験は今後、首都圏の10店舗位に拡大する予定です。コロナ禍が収まってもテレワークの流れは完全になくなることはないと思いので、そこで出てくるニーズに応えらえる存在になれればと思います。
コンビニにテレキューブを設置したのは、必要なときにいつでも利用できる、身近なワークスペースになりたいという狙いが隠されていた。もちろん利用料金はかかってしまうが、自宅での作業に集中できないときやWeb面接に臨むときは、選択肢の一つになるかもしれない。
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