魚津水族館。.
現存する日本最古にして富山県内唯一の水族館ですが、現在の施設は老朽化が進み、寿命を迎えつつあります。
現状や課題を、取材した記者が報告します。

水族館の耐用年数は30年ほどと言われる中、魚津水族館は43年が経過していて、管理する魚津市も今後水族館をどうするか最重要課題の一つとして掲げています。
まずは、その歴史と老朽化の現状をまとめました。

日本最古の水族館、魚津水族館。
その歴史は100年以上昔にさかのぼります。

日本海側初の水族館として誕生したのが1913年、大正2年。
戦後立て直された2代目は、日本海側最大の水族館となりました。
そして現在と同じ3代目の水族館がオープンしたのが1981年。

世界で2例目、日本では初めての全面アクリル性のトンネルがお目見えし、マリンガールによる餌付けや珍しいデンキウナギ、魚が芸を披露するおさかなショーなどが話題を呼んで、初年度の入館者が46万人を超えました。

ところが…。

*魚津市民は     
「確かに古いなと思う」

開館から40年余りが経った施設は、老朽化の波に抗えなくなっています。

*魚津水族館 不破光大学芸員
「本来ならここに鉄製のアームが付いていて、板を押したり引いたりして波をつくるという装置だったんですけど、波を起こすとしぶきがかかる。海水なので塩がかかって少しずつ腐食が進んで支柱が錆びてとれた。波がない波の水槽。『凪の水槽』です。ここを担当してた人が少しでも見てもらおうと、人力でお風呂かき回すみたいに。直近の心配は取水ポンプ。海水をくみ上げているポンプがもしダメになったら、もう海水を使えなくなる。本当の心臓部分がもしダメになったらもう開館できなくなるので、ずっと心配要素として抱えている」

なかなか深刻な状況です。

2000年度以降の年間入館者数と、市の一般会計からの繰入金の推移をまとめました。

入館者は年間15万人ほど、繰入金は1億1000万円ほどということで、魚津水族館は、事実上、毎年1億円以上の赤字経営が常態化し、市の財政を圧迫する要因となっています。
耐用年数を過ぎて、なおかつ赤字経営となれば今後、存廃を含めて早急な判断が必要です

魚津市は先月、公共施設の再編方針のうち、水族館の維持期限を2039年から2033年に6年間、前倒ししました。
それまで、現在の施設を何とか維持しながら建て替えを含めて再整備を検討することにしています。

*魚津市 村椿晃市長 
「(水族館)廃止という考えは持っていません。水族館自体を新しく魅力的なものにしていくのは当然。水族館を核に街づくりを進めたい」

10日から3期目の任期に入る魚津市の村椿市長は、水族館を残すだけではなく水族館を核にまちづくりを進めると意気込んでいます。

どんな水族館像がイメージされている?
具体的な検討はこれからですが、そのヒントを掴むべく、全国の地方にある人気水族館を取材してきました。

山形県鶴岡市の加茂水族館です。
水槽にいたクラゲを紹介したところ、評判が良かったのをきっかけに展示をクラゲに特化しました。

今や、展示するクラゲはおよそ80種と世界の水族館で最も多くなり、9万人ほどに落ち込んでいた年間の入館者が多い年で27万人とクラゲ効果でV字回復を果たしました。

また、知る人ぞ知る「深海魚のまち」愛知県蒲郡市の竹島水族館は、体長およそ3メートルのタカアシガニなどおよそ150種類の深海生物をウリにしています。
広さはおよそ1000平方メートルと、魚津水族館の4分の1ほどの小規模水族館でありながら、年間入館者数は47万人を超え魚津の3倍以上となっています。

*来場者は
「深海魚とかカニの標本とかが面白かった。タカアシガニがでかい」
「外観上パッとしなかったので、来る機会がなかったが、評判が良くて」

*竹島水族館 小林龍二館長
「さらに、この地域の強みである深海の生き物を押し出していって、それが地元の力になってコンテンツの一つになる。水族館から発信していって、この街の良さを出していけたら」

取材すると大きく分けて2つの復活のカギが見えてきました。
1つ目は、地方水族館は「ニッチな専門店を目指すべき」。
そして2つ目は「大規模水族館と展示の規模で争わない」ということです。

紹介した2つの水族館は、展示の規模は魚津水族館よりも小さいですが、それぞれ、クラゲと深海魚に特化したことが集客に繋がっています。

また再整備となると、今よりも大きな水槽をと考えがちですが、規模で勝負するのではなく、展示の見せ方を工夫すれば十分人気を集められることを、この2つの水族館が証明しています。

例えば、ホタルイカや水深1000メートルもある富山湾ですから深海魚などに特化した水族館とすることも有効なのではないでしょうか。

富山テレビ
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