日本各地でクマの出没が相次いでいる。市街地周辺で目撃されることもあり、危機的な状況だ。

それは数字にも表れている。企業や自治体に事件・事故・災害などのリスク情報を収集・配信するサービス「FASTALERT(ファストアラート)」を運営する、株式会社JX通信社(東京)によると、クマを含む「危険動物」の目撃情報が増えているという。

クマなど「危険動物」の目撃情報(提供:株式会社JX通信社)
クマなど「危険動物」の目撃情報(提供:株式会社JX通信社)
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危険動物の目撃情報は、2022年10月が587件だったのに対し、2023年10月は19日時点で573件。前年比で1.5倍以上のペースとなっているほか、その多くがクマに関連する情報という。

東北地方での目撃エリアの分布(提供:株式会社JX通信社)
東北地方での目撃エリアの分布(提供:株式会社JX通信社)

さらに、目撃されたエリアも広がっているとのこと。東北地方を例にした目撃情報の分布をでは、2023年10月は昨年同時期と比べて、市街地に近いところでの投稿が目立つという。

クマはなぜ、街に近づいているのか。被害を避けるためにできることはあるのか。分析から想定されることを、株式会社JX通信社の担当者に聞いた。

危険動物の半数以上がクマ関連の情報

――「FASTALERT」は危険動物の目撃情報をどう収集している?

SNSを中心としたビックデータを、当社独自のAIが収集・分析しています。また、当社が開発・提供する無料ニュースアプリ「NewsDigest」ユーザーからの「リアルタイム防災」機能への投稿情報も含みます。投稿は文字だけではなく、写真や映像などの内容も加味し、デマやフェイクニュースを除去した状態の、正しい情報のみを届けています。

「FASTALERT」の画面。ビックデータを収集・分析している(提供:株式会社JX通信社)
「FASTALERT」の画面。ビックデータを収集・分析している(提供:株式会社JX通信社)

――危険動物にはどんな動物が含まれる?クマの割合は?

自然に生息している地域ではない場所で発生し、かつ、市民の生命や財産に影響を及ぼす可能性のある哺乳類を原則対象にしています。クマのほかにはサル、イノシシ、ヘビなども含まれます。具体的な割合は控えますが、危険動物の半数以上がクマに関連する情報です。


――クマの目撃情報が増えているのはなぜ?

2021~22年はコロナ禍で狩猟活動がしにくくなり、野生動物が増加したそうです。ただしその「増加」は、イノシシやシカなどが中心であったはずです。クマの個体数が急激に増えるとは考えにくいため、クマの活動域に変化が出た可能性があるのではないかと推測できます。

食べ物を求めて生息域が広がったか

――クマの活動域にはどんな変化が出たと思う?

ひとつは生息域の拡大です。人口が減ったことで、耕作放棄地やクマが隠れやすい藪が増加したほか、2023年は猛暑でクマの餌となる、ドングリの実りも悪いと言われています。食べ物を求めた結果、人の住む場所にまで生活範囲を拡大していることが想定されます。

また、最近はキャンプや登山に行った方が、食べ物や料理の始末をきちんとしないこともあると言います。人間の食べ物の味を覚え、探しに来ているところもありそうです。人慣れした「アーバン・ベア(都市型クマ)」が増えているかもしれません。

食べ残しなどで、人間の食べ物の味を覚えた可能性もある(画像はイメージ)
食べ残しなどで、人間の食べ物の味を覚えた可能性もある(画像はイメージ)

――2023年の目撃情報から、クマの出没が目立つ環境のようなものはある?

傾向としては山間部よりも市街地での目撃が目立ちます。SNS利用者の多さもあるのでしょうが、野生動物の活動域が一層、市街地に近づいている傾向があると考えます。地域だと東北地方が中心で、秋田県、岩手県、宮城県では特に増えていますね。

目撃したら安全確保が最優先!余裕があればアプリで情報共有を

それでは、クマらしきものを目撃したらどうすればいいのか。JX通信社の担当者によると、クマは本来警戒心が強いが、最近は人や家畜などを襲うケースもみられるため、刺激をせず、安全確保を最優先に考えてほしいとのこと。

その上で可能なら「NewsDigest」から、目撃情報を報告すると、周囲への情報共有・注意喚起ににつながるという。

知りたい情報を絞りこむことも可能(提供:株式会社JX通信社)
知りたい情報を絞りこむことも可能(提供:株式会社JX通信社)

報告はNewsDigestアプリから「リアルタイム防災」に進み、右下の「報告する」をタップ。そうすると写真や動画を投稿できる。その場での撮影のほか、保存済の写真や動画も投稿可能だ。説明などを追加して報告すると、アプリの地図上で情報が共有される仕組みとなっている。

危険動物の目撃情報も確認できる(提供:株式会社JX通信社)
危険動物の目撃情報も確認できる(提供:株式会社JX通信社)

このほか、リアルタイム防災では、他ユーザーが投稿したリスク情報を見ることもできる。アプリの「絞り込み」から「危険動物」だけを選べば、クマなどの目撃情報に絞って、地図上から確認できるので、参考にしてほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。