秋田・北秋田市の市街地で19日、高校生など5人が相次いでクマに襲われた。同じ場所で連続して人がクマに襲われるケースは、17日に大館市でもあった。なぜ今、こうした異常事態が続いているのだろうか。

異常出没となっている2つの原因

過去5年間の秋田県内でのクマ目撃件数と人身被害件数は、2023年はいずれも過去に例のないペースで伸び続けている。

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原因の1つは、ブナの実が大凶作で、クマの食料が山にない状況になっていることとみられるが、なぜこれだけの異常な出没となっているのか。ツキノワグマの生態を研究するツキノワグマ研究所の米田一彦さんは、もう1つの要因に「凶作に加え里山にたくさんのクマが繁殖しているということ」を挙げた。

もし山奥で餌がなくなると、大きなクマが里山にずっと出てくる。すると若いクマが押し出されてくるという順序がある。年を重ねた大きなクマは食料が豊富な山奥に、一方で、若い親子のクマは里に追いやられる傾向があるようだ。

生息数約5倍に…山の餌が圧倒的に不足

身近な山の木からまきや炭を作ることがなくなり農地が荒廃するなど、今は多くの里山が荒れ果てて木々が生い茂り、若いクマの生息地となっているようだ。

特にここ7年ほどは繁殖が盛んに行われていて、県内のツキノワグマの生息数は、30年前は1,000頭ほどだったのが、2021年時点で4,400頭と4~5倍に増えているという。

1日にクマが食べる餌の量は約8kgだという。クマの頭数に対し、山の餌の量が圧倒的に足りないと言われる中で、大館市比内町では、クマによる人への被害が9月から4件発生している。米田さんは「同一の個体による可能性が高い」として警戒を呼び掛けている。

また、「扇田のリンゴを食べ終わってから、今、八木橋の栗を食べているのではないか。この先もまた別のところで事故を起こすのでは」と心配する。

平野部に出ているクマは興奮状態で、次の屋敷の森、神社の森、公園の森を目指して走る。その間に人がいると、排除しながら進むので事故につながるという。「走ってくるクマについては伏せることが一番。今の高齢化社会では一撃でやられる」と米田さんは話す。

クマ出没の収束は「平野部に初雪が降るかどうか」。暖冬で推移すると11月や12月まで延びるかもしれないということだ。

米田さんは、法律に基づいて個体数を管理するとともに、集落に出やすい河川敷や通学路の周りの草を刈るなどの対策が必要だと話している。

(秋田テレビ)

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