11月開幕のFIFAワールドカップ(W杯)カタール2022に向け、森保ジャパンにとって貴重な強化の機会となった6月の4連戦。本大会に向けた選手選考の意味もあり、様々な選手の組み合わせが試された4試合は2勝2敗という結果で日程を終えた。

その中でも随所で輝きを放ったのが、右ウイングの伊東純也と左ウイングの三笘薫だ。

伊東は初戦のパラグアイ戦を除く3試合に出場、3戦目のガーナ戦では後半24分に右サイドのライバル・堂安に代わって投入されると、持ち前のスピードで抜け出し、前田大然の代表初ゴールをお膳立て。

三笘は先発2試合を含む全4試合に出場し、2ゴール1アシスト。代表を争うメンバーの中で最も突出した結果を残すとともに、ドリブルという武器でファンを魅了した。

今や日本代表の顔となりつつある2人が、アジア最終予選での戦いからお互いのプレースタイル、オフ・ザ・ピッチに至るまで大いに語るスペシャル対談が実現した。

「あんな抜けたら気持ちいいだろうな…」

伊東純也のドリブル
伊東純也のドリブル
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最近は利き足と逆のサイドでプレーする選手が多いが、伊東は右足が利き足ながら右サイドが主戦場。縦への突破で一気に相手を置き去りにする圧倒的なスピードが特徴だ。

対する三笘は、右利きの左サイド。独特の間合いと相手の逆をつく反発ステップを武器に、長いストライドから爆発的な加速で抜き去るプレーを得意としている。

三笘薫のドリブル
三笘薫のドリブル

ともにドリブル突破から多くのチャンスを生み出してきた2人は、お互いのプレースタイルをどう思っているのだろうか。

ーーお互いのドリブルはどう思っていますか? 
伊東:

薫の方は左サイドで右利きでプレーするので、より駆け引きが多いと思いますけど、自分の方は右サイドなのでシンプルにプレーすることが多い気がします。
縦に行ってクロスだったり、シンプルにクロスを上げたりというところですかね。

三笘:
僕は右足で左サイドなので、カットインしてからのプレーと縦に行ってえぐるところが得意なプレーかなと。
伊東選手みたいなスピードはないですけど、相手との駆け引きで抜いたり逆をついて抜くというところに少し違いはあるかなと思います。

伊東:
(三笘選手は)本当に逆を突くのが上手いなと思いますし、緩急の使い方とか上手いなと思いますね。

三笘:
そこが得意なので嬉しいですけど、(伊東選手の)スピードいいなぁと思って。

伊東:
あんまり変わんないです(笑)。

三笘:
いやいや変わらなくないですよ。あんな抜けたら気持ちいいだろうなって。

ーードリブルやボールを持った時のこだわりは?
伊東:

こだわりは特に無いですけど、シンプルに縦に行けるのが一番チャンスにつながると思うので、行けるなら縦に行こうという意識でいますね。

三笘:
カットインもそうですけど、縦に抜くことはカットインのプレーよりもドリブラーとしては求められているところではありますし、それプラス、カットインからのプレーがあると思います。
世界でも縦に行ける選手というのはそんなに多くないので、自分も求めていかないといけないと思っています。

ーー三笘選手の大学での卒論テーマがドリブルだったとか
三笘:

ドリブルの目線ですね、目線とかを見てどういう…なんだっけな…。

一同:
(笑)

三笘:
僕のドリブルを書いた訳ではないですからね。色んな被験者を取ってレベルの高い選手や低い選手がどういう目線をしているか違いを書きました。

ーーそれだけドリブルにこだわりがある…?
三笘:

いや、ドリブルぐらいしか書けなかったっていうのが正直なところです。

ーー伊東選手は縦への突破が多いですが、最大のポイントはどんなところですか?
伊東:

中に行く。縦に行きたい時にちょっと中に行くフェイント入れてから縦に行くというのはありますね。そして、(相手が)ちょっと遅れたところで置き去りにしたいという意識でやっています。

ーー右利きの右サイドというポジションについては?
伊東:

世界でももう少なくなってきたと思いますけど、(利き足が)右足で右サイドのメリットというのも結構ありますし、自分的には右サイドがやりやすいと感じています。

ーーメリットとは具体的にどんなところですか?
伊東:

縦の突破だけではなくクロスとかも上げやすいですし、そこの精度には自信があるので、シンプルにフリーだったら良いボールが上げられる、シンプルにゴールに直結できるメリットがあると思います。

出場決定の瞬間「本当にホッとした」

2人は日本代表をW杯7大会連続出場に導いた立役者でもある。

アジア最終予選、日本代表は初戦のオマーン戦で0ー1と出鼻をくじかれると、3戦目のサウジアラビア戦でも黒星を喫し、以降、負けの許されない試合が続いた。

そんな苦しい状況下、伊東はベトナム戦から4試合連続のゴールでチームを牽引すると、三笘も出場決定がかかる大一番、3月24日のオーストラリア戦に終盤から途中出場し、5分間で2ゴールをあげて文字通り日本をW杯へと導いた。

勝てば出場が決まるアウェーでのオーストラリア戦は、前線の2人にとって相当なプレッシャーがあったのではないだろうか。

三笘薫:
毎試合そんなに緊張するタイプじゃないですもんね?

伊東純也:
オーストラリア戦は、そうですね…。結果を出したいというのはありましたし、「自分がゴールを決めたい」「ゴールに絡みたい」というのはありましたね。

三笘:
僕はベンチからのスタートだったので、出場したら勝利に貢献したいという気持ちを持っていました。

ーー結果的に三笘選手がゴールしてW杯出場を決めました。あの時は?
三笘:

あの時は1点決めた瞬間に守れば勝てるなと思っていて、時間帯的にもほぼ勝利が決まる時間帯だったので「やったな」と思いました。
ただ1試合を通して凄く優位に試合を進めていたので、僕だけの力ではないと思いますし、選手全員の力で決まったゴールだと思っています。

ーー伊東選手はどうでした?
伊東:

めちゃくちゃ嬉しかったですね、結構前半からチャンスありましたけど、決めきれずに難しい展開が続いていたので。
薫が入ってから左サイドで仕掛けてチャンスを作ってゴールを決めてくれて、1点目入った時はめちゃくちゃ嬉しかったですし、2点目も相手の隙というか相手が前がかりになったところでうまくとどめをさせたかなと。

ーーW杯出場が決まった瞬間は?
伊東:

本当にホッとしたというか、苦しいスタートでしたけど、無事W杯出場を決めることができて、連続出場記録が途切れずに行けたことが凄く良かったです。

三笘:
僕はホッとしたというより単純に嬉しかったですし、自分も2得点決めることができたのでその嬉しさと、もちろんチームの勝利の嬉しさが一番にありました。

今季ベルギーで結果を残すも満足しない2人

日本代表で攻撃の核となりつつある二人の礎には、所属チームでの鍛錬がある。

伊東は4シーズン目となるベルギーのゲンクで今季リーグ出場39試合8ゴール16アシストを記録。リーグのアシスト王を獲得し、クラブの年間最優秀選手にも選ばれた。

三笘は東京五輪を終えた後、イングランド1部ブライトンへ移籍すると、労働許可証の関係でベルギー1部に昇格したばかりのユニオン サンジロワーズに期限付き移籍。加入後すぐに左のウイングバックとして定位置を掴むと、リーグ27試合に出場し7ゴール3アシストで、チームの首位争いにも貢献した。

ーー今季ベルギーでリーグ戦16アシストでアシスト王に輝きました。
伊東:

うーん、まぁ普通かなと思っていました(笑)。

三笘:
普通じゃないですね!僕は7ゴール3アシストです。

伊東:
薫はウイングバックをやっていたので。でも、もうちょっとゴールを取りたかったですけど、アシストに関してはやっぱり右サイドで右利きでやっているというメリットは出たかなと思います。
10(ゴール)を目標にしていたので10は行きたかったですけど、その分アシストが伸びたという感じですね。

ーーゴールすることへのこだわりの方が強いですか?
伊東:

ゴールとアシストとのこだわりは一緒(くらい)だと思います。
他の人はゴールの方が取りたい欲があると思いますけど、自分の場合はアシストも同じくらい価値があると思っていて、1点は1点なので。

三笘:
僕もベルギーで戦っていますけど、そんな簡単な事ではないですし、結果や数字を残すのは本当に難しい事で、それをコンスタントに何年もやっているっていうのは凄い。

伊東:
ありがとう。

ーー三笘選手は7ゴール3アシスト。もっと上を目指したかったですか?
三笘:

そうですね。10(ゴール)と5(アシスト)ぐらいは行きたかったですけど、それが今の実力ですし、しっかりと受け止めないといけないと思っています。

ストイックな性格の2人だが、普段は…?

互いに薫、純也くんと呼び合う4歳違いの二人は、はたから見れば上出来とも言えるシーズンにも決して満足しないストイックさが魅力だが、研ぎ澄まされたプレースタイルとは裏腹に、普段はあまりこだわるタイプでは無いという。

ーー小さい頃から憧れている選手とかは?
伊東:

いや、本当にいないんですけど… 本当にいないんですけど(笑)。

三笘:
そんなにいないんですか? 

伊東:
うん。でもベッカムとか好きでした。カッコよかったっていう…。でもクロスの精度も本当に凄いなと思いますし、それは見習うところはあるかなと思います。

ーー三笘選手は?
三笘:

そのポジションによって見る選手を変えてきたので、ずっと憧れの選手というよりは、そのポジションで上手い選手を見てきたって感じです。

ーーネイマール選手とか。
三笘:

ネイマール選手はサイドやるときに凄く見ましたね。ボールの扱い方や抜き方は参考にしましたし、凄く活きてきているところはあります。

ーー小さい頃から真似していたんですか
三笘:

真似もしましたね。

伊東:
でもそんなに年も変わらないでしょ?(笑)

三笘:
いや、結構変わる。 5、6個上ですか? …確かにそんなに変わらないです(笑)。

伊東:
5、6個だったら小さい頃ではない(笑)。

三笘:
中学・高校ですね。

ーーサッカー人生でこだわっていること、信念や座右の銘は?
伊東:

いやぁ…、あんまりそういうの無くて(笑)…薫も無いよね?

三笘:
座右の銘とかは無くて。サッカー人生は1回きりなので、その1試合も来ないですし、そういう気持ちで戦うようにはしています。

伊東:
2人とも無いっていうことで…(笑)。

ーーお二人はベルギーで一緒に食事したことは?
三笘:

食事はないですね。

伊東:
こいつ本当に誘ってこないですし…。

三笘:
(笑)

伊東:
しかも、(チームに)シェフとかいるので。あとちょっと遠いっていうのがあって。

三笘:
そうですね、遠いですね。

伊東:
コロナ禍っていうのもありますし、今は意外に交流は無いよね、選手同士。

三笘:
無いですね。

ーー代表活動の時はどうですか?
三笘:

初代表の時に結構仲良くしてくれて、もう何でも言えるようになりました(笑)。

伊東:
(笑) そうですね。みんな良い奴ですし、薫も良い奴ですし…まぁ普通にしていただけですけど。

ーー代表活動中は、伊東選手は普段何しているんですか?
三笘:

何してるんですかねぇ。ゲームしたりしてるんじゃないですかね。あんまりわからないですけど。
ホテルでも交流もできないので、1人部屋なので。

伊東:
そう、今コロナ対策で別々で部屋にいたりするので。

三笘:
ゲームしてるか寝てるかだと思います。

伊東:
そうですね、正解です。

三笘:
(笑)

ーーマンガもよく読むと記事で見かけました。人生に影響を与えた名言があると。
伊東:

いや(笑)。色々な取材で言われるんですけど、言わされた感はありますよ、めちゃくちゃ(笑)。でも本当にマンガって結構良い言葉があって、色々モチベーションになったり、そういうのはありますね。

ーー『ハイキュー!!』 の「ところで平凡な俺よ 下を向いている暇はあるか」という名言も影響を与えたと。
伊東:

カッコイイですよね!

三笘:
いいっすねぇ。

伊東:
まぁ本当に世界に行ったら平凡というか…。

三笘:
日本にいる時に考えたってことですか?

伊東:
そう。なんか、壁に当たったときに、そういう…「下を向いている暇はないな。上を向いて常に挑戦しないといけないな」という気持ちに、マンガを読んだ時になりましたね。

ーーじゃあこの言葉は影響を受けた言葉ということで
伊東:

そういうもので大丈夫です。

ーー今のワードをもう一回…
伊東:

「ところで平凡な俺よ 下を向いている暇はあるのか」ですよね。

三笘:
ここだけ抜かれるなぁ(笑)。

伊東:
今の使われるな(笑)!

三笘:
めちゃくちゃ好きみたいに使われるなぁ(笑)。

伊東:
でも好きは好きですよ。本当にマンガ好きですし、『ハイキュー!!』だけに限らず、色んなマンガに影響されています。
『スラムダンク』も「諦めたらそこで試合終了」とか(笑)。本当にマンガ・アニメも好きですし、そういうのに影響されるところがあるので。

ーー三笘選手は合宿中は一人の時に何を?
三笘:

寝ていますね。寝ているか、携帯いじっているか。本をたまに読んだり映画見たり、その時によって変わります。

ーー本はどういう?
三笘:

最近はもうマンガは読まないですね。

伊東:
マンガは絶対読んだほうがいい。いや、マンガ好きは結構多いですよ。

三笘:
じゃあ、『ハイキュー!!』 読みます。

ーー小説とかも読みますか?
三笘:

小説も読んだり…競技とかサッカーに落とし込めるものを読んだり、そういう色んな本を読んでいます。

伊東:
真面目なんで。

本大会メンバー入りへ、激しいサバイバル

ーーずばりW杯での目標を教えて下さい。
伊東:

自分の目標は…むずいなこれ。チームの目標はベスト8ですけど、自分の目標はスペイン、ドイツに勝つことを目標にやっていますね。
スペイン、ドイツがいるグループを勝ち抜くことができれば、本当に(ベスト8の)チャンスは大きいかなと思います。

ーー三笘選手は?
三笘:

ベスト8以上だと思います。

ーー自身の目標は?
三笘:

それに貢献することですね。出場して、特に前の選手なので結果を残して勝利に貢献することしかないかなと思います。

ーーここから激しいメンバー争いが始まります。選ばれるために必要なことは?
三笘:

結果を出すことですね。毎試合結果を出すことで「こいつやれるな」と思われると思うので、どんな強豪相手にも結果を出すことが求められるかなと。
1試合でW杯のメンバーが決まるか決まらないかわからないですけど、それくらいの意気込みで行かないと、1プレーで選考にも関わってくると思いますし、そういう風な位置づけで考えてプレーしたいと思います。

ーー11月に日本代表として、カタールの地で自分のプレーをする自信は?
伊東:

もちろんW杯には出たいと思っていましたし、まだ決まってないですけど、やれる自信はあるので。このままコンディションを落とさずやっていって、W杯でしっかり結果を残したいと思います。

ーーアジア最終予選第6節オマーン戦、三笘選手のアシストから伊東選手のゴール。そんなシーンをまた見たいです。
伊東:

そうですね。また薫が抜きそうな時はゴール前に入っていって、いいボールもらおうかなと思っているんで。

三笘:
逆もしかりで、伊東選手が入ってきたときにいいところに入れれば、素晴らしいクロスが来ると思うので、押し込むだけっていうところを。

伊東:
押し込むだけのボールを下さい(笑)。

FIFAワールドカップカタール2022
12月2日(金)日本×スペイン
フジテレビ系列にて生中継

伊東純也(29歳) ゲンク所属(ベルギ-)
MF/FW  1993.03.09生  176cm  66kg
今季ベルギーリーグで39試合出場8ゴール16アシスト(プレーオフ2の5試合含む)
スピードを活かしたドリブルやサイド突破が持ち味。日本代表では主に右ウイングをつとめる。

三笘 薫(25歳) ユニオン サンジロワーズ所属(ベルギー)
MF/FW  1997.05.20生  178cm  73kg
今季ベルギーリーグで27試合出場7ゴール3アシスト(プレーオフ1の6試合含む)
緩急を生かしたドリブル突破やスルーパスが武器。日本代表では主に左ウイングをつとめる。

LIFE WITH FOOTBALL
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