湯けむりが立ち上る長崎県の温泉地・雲仙市の小浜温泉。日本一熱く、豊富な湯量を誇る。

湯の町・小浜町はコロナ禍を経て、今、若者を中心に町に活気を取り戻そうとする動きが広がっている。

旅館をリノベした新スタイルの場所

雲仙市小浜町 町の至るところで湯煙が上がる
雲仙市小浜町 町の至るところで湯煙が上がる
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長崎市から車で約40分の場所にある雲仙市小浜町。島原半島西部に位置し、海に面した温泉郷だ。

そんな小浜町温泉街に2024年にオープンした「ととのい処 ゑびす屋」。

もともとは女将の引退で2017年にのれんをおろした旅館「恵比須屋」だ。

オーナーの元村龍馬さんは30歳で、2023年 築70年の旅館と土地を買い取り、友人の協力を得てリノベーションした。

元村龍馬さん:生まれも育ちも小浜町で、昔からあった店が少なくなっていくのを見て寂しいなとの気持ちもあった

紆余曲折の小浜町の歴史

「小浜の昔を偲ぶ古写真展」より
「小浜の昔を偲ぶ古写真展」より

「小浜温泉街」には、昭和初頃、約30軒の旅館が軒を連ねていた。

1990年の宿泊者数は160万5000人ほどだったが、約15年で4割ほどまで落ち込んだ。さらに、新型コロナは湯の町に大きな打撃を与えた。

新型コロナ禍を経た今、小浜温泉旅館組合に所属する旅館やホテルのうち稼働しているのは13軒だ。(2024年4月現在 改装中で1館が休館)

ふるさとに恩返しがしたい

温泉街に店をオープンさせた元村さんは、温泉街としてのかつての姿を大切にしながらこれまで町にはなかった新たなスタイルを提案し、故郷にかつてのにぎわいと元気を取り戻したいと考えている。

元村龍馬さん:昔の雰囲気を味わってもらいたいので天井とかも昔の梁(はり)を残した

元村さんの本業は理学療法士で鍼灸師だ。「癒やしの空間を設けたい」と客室をマッサージやリラクゼーションなどの事業者に貸し出している。

利用した観光客から「静かで空間的にも癒される。1カ所で色々なところを施術してもらえるからあちこち行かなくていいのでうれしい」と好評だ。

事業者側にもメリットがある。

長崎市から出店のセラピスト・濵崎 香さん:個室をいただけるのは恵まれている。静かに自分らしく(部屋を)飾れる。色々な人に試していただきたいからこういう場を提供してもらえるのはセラピスト側も嬉しいこと

(※濵崎さんの「崎」は立つ崎)

ととのい処 ゑびす屋
ととのい処 ゑびす屋

2024年5月中旬からは、1階のカフェスペースでドリンクや軽食の提供も行っている。

元村龍馬さん:色んな方に支えてもらってチャレンジができているので小浜に対して恩返しができればいいかなと。まずは色んな人に知ってもらう色んな人に立ち寄ってもえるような空間がつくれれば

小浜の町と人に魅了されて

小浜の町や人に魅了され、移住してきた若者がいる。

CAFÉ KAION(海音)マネージャー 田中幹人さん(34)初めて小浜を訪れたときに、地元の人と接する中で小浜には人を受け入れる開放的な印象を持った。人や自然・温泉・食べ物すべてがとても魅力的な場所だと思った

CAFÉ KAION(海音)
CAFÉ KAION(海音)

田中幹人さんは大阪や京都の広告会社やホテル業界などで経験を積み、3年前の2021年から小浜町へ。兵庫出身の田中さんは、もともと九州の海辺に魅力を感じていて、京都で働いている時に小浜町内の旅館の社長と偶然出会ったことがきっかけだった。

地元の旅館などで働く傍ら、現在は2024年4月に小浜の海のすぐそばにオープンした「CAFÉ KAION(海音)」のマネージャーを任されている。

地元のモノやヒトの力が集結

店には地元・小浜をはじめ、長崎県内の魅力がぎゅっと詰まっている。

店は農業用の倉庫だった場所をリノベーションし、内装は地元の木材を活用し旅館の内装工事や家具製作を行う地元の木工所が手掛けた。

オーシャンビューの最高のロケーションが特徴で、2階では波の音を聞きながらゆったりとした時間を過ごすことができる。

さらに長崎県内の美味しいものをもっと知ってほしいと、小浜や島原半島をメインに取り寄せたパンやスイーツを提供している。

海が見えるサードプレイスに

ここでいただけるのはコーヒーやスイーツだけではない。毎週末限定で「鮨店」がオープンする。

週末限定の「@wadatsumi_sushi」
週末限定の「@wadatsumi_sushi」

オーシャンビューのカフェ一階部分の一角にあるカウンター席では、地元旅館の料理長が腕によりをかけたお鮨のフルコースを堪能できる。(2日前までの予約制)

CAFÉ KAION(海音)マネージャー 田中幹人さん:移住していろいろな人と関わる中で小浜には若い人を応援してくれる地元の人が大勢いる。開放的でありながらもいい距離感で支えてくれる。カフェでは「海が見えるサードプレイス」として地元の人や観光客など多くの人に町の魅力を知ってもらい、それぞれの時間をくつろげる場所にしたい

小浜の魅力を最大限にいかし、人が集う場所を。

地元のサポートを受けて小浜をこよなく愛する若者たちの挑戦が続いている。

(テレビ長崎)

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