スペイン領カナリア諸島で20日、オーバーツーリズムへの抗議活動が行われ、数千人が民泊やホテルの建設ラッシュを止めるために、一時的な観光客の受け入れ制限を訴えた。建設需要の急騰による影響で不動産価格が高騰し、地元住民の生活を圧迫している。

「月収900ユーロで家賃800ユーロ」地元住民に打撃

欧州の人気観光スポット・スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島で、オーバーツーリズムの対応を求めて、数千人が抗議活動を行った。

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ロイター通信などによると、カナリア諸島最大の島・テネリフェ島で20日、オーバーツーリズムに数千人が抗議活動を行い、民泊用住宅やホテルなどの建設ラッシュを食い止めるために、一時的に観光客の受け入れを制限するよう求めた。

カナリア諸島の域内総生産のうち、観光業は35%を占めているが、ホテルなどの建設ラッシュで不動産価格が高騰し、結果的に地元住民が住宅を購入できなくなる事態となっている。

抗議活動は、夏季休暇シーズンのピーク前に20余りの環境団体が主催したもので、カナリア諸島の他の島やスペイン都市部でもデモが行われた。

オーバーツーリズムは日本でも問題に…

ここからは、取材センター室長・立石修が解説する。

このオーバーツーリズムは、日本でも問題になっているが、北アフリカの横にあるスペイン領・カナリア諸島テネリフェ島でも起きている。

テネリフェ島は、気候は乾燥していて1年中温暖で、イギリスやヨーロッパ各国からの観光客が多く、ロンドン五輪の時は、水泳の日本代表が直前合宿を行っていて、寺川綾さんや入江陵介さんもこの地で調整を行った。

テネリフェ島は、カナリア諸島最大の島で、東京都と同じぐらいの大きさがあり、どこまでも広がるビーチが魅力。地元ツアー会社が撮影した最近のテネリフェ島の海岸を見ると、多くの人たちが気持ちよさそうに寝転がっていた。

場所が広いので、京都などのように人が集中して身動きが取れないということはないが、この島では何が問題になっているのだろうか。

テネリフェ島をはじめとするカナリア諸島の人口は220万人で、2023年は過去最高となる1390万人の観光客が訪れており、沖縄の同年の観光客、約820万人と比較すると多くの人が来ていることが分かる。

観光客が増えると宿泊施設が必要になるが、ヨーロッパでは特に価格が安い民泊のニーズが高く、投資用にマンションを買う外国人が増えている。

そのため、住宅価格が上がり、地元の人々が高い家賃に苦しんでいる。

地元紙によると、カナリア諸島の2024年2月の賃貸住宅の家賃は、2023年と比べて10%も上昇しており、ある住民は「月収が900ユーロなのに家賃が800ユーロに上がった、とても暮らせない」と話していて、車中泊なども増えているという。

またビーチ周辺では、大型ホテルの建設が続いていて、こういったことも地価押し上げの要因になっている。

ベネチアでは4月26日から入島税徴収

地元住民はテントに立てこもり、ハンガーストライキを展開して抗議している。

カナリヤ諸島の1人当たりのGDPは、スペインの自治体の中でも2番目に低く、観光客がお金を落としてくれる反面、その利益が十分に市民に行き渡っていない。

地元住民は、観光客が悪いのではなく、それに対する対策というのが非常に緩いのではないかということを指摘しており、外国人による不動産購入を規制する法案を求める声が上がっている。

しかし、町の収入の35%が観光業で非常に重要であり、一概に規制するのは難しい状況で、一般市民の生活費や住居費が急激に増加し、ジレンマに苦しんでいる状況だ。

世界を見渡してもオーバーツーリズムに苦しんでいる街が多くあり、1年に3000万人も観光客が来るベネチアでは、入島税を取る対策が4月26日から行われるが、有効な解決策を示すモデルケースがまだない状況だ。

日本でもコロナ以降もインバウンドで外国人の数は増えており、観光客を増やす取り組みと地元の人たちの生活の両立が、日本でも求められている。
(「イット!」 4月25日放送より)

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