大阪・天王寺動物園で人気者のカバ「ゲンくん」の性別が違っていることが判明した。ゲンくんはメキシコの動物園から来た際、オスとして扱われていたが、10歳を迎えてもオス特有の行動が見られなかったため、DNA鑑定を依頼したところ、メスだということが分かったという。

動物の性別判定間違い…トラブルに繋がる恐れ

100年以上の歴史を持つ大阪市・天王寺動物園での人気者は、飼育員の間で「美男子」と名高いカバのゲンくん(12)。5歳の時にメキシコの動物園からやってきたが、4月に「美男子」から「美少女」へと性別が一転した。

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天王寺動物園・安福潔副園長は「美男子だなと個人的には思っていたんで、メスと聞いて…」「衛生証明書というのがあるんですけども、オスという意味で証明があったので、我々としてはそれを信じていた」と驚いたという。

現地からの説明や輸入の際の書類にも「オス」との記載があったというが、性成熟する10歳を迎えてもオス特有のテリトリーを示す行動や、鳴き声を上げるといった様子がなく、“いつまでも大人にならない”ことを不思議に思い、DNA鑑定を行ったところ、メスだと判明した。

動物のオス・メス判定間違いは、今、全国の動物園で相次いでいる。

兵庫・南あわじ市の淡路ファームパーク「イングランドの丘」で、お母さんにべったりと離れずにいる赤ちゃんコアラも、当初は「オス」と発表されていたが、健康診断の結果、「メス」だったことが分かった。オスの睾丸とメス特有のお腹の「袋のふちのしわ」を見間違えたという。

さらに2023年、札幌市の円山動物園にやってきたライオンのクレイくんは、愛媛「とべ動物園」で生まれ、生後20日に目視などでオスと判定された。

しかし、オスの特徴であるたてがみの成長が見られず、血液検査をしたところ、メスだと判明。

実際に、オスとメスの赤ちゃんライオンの生後18日目の様子を見比べてみると、一目見ただけでは違いは分からず、持ち上げてようやくオスとメスの違いが分かる程度だ。

なぜ、動物園で性別の判定間違いが相次いでいるのだろうか。

その難しさについて、日本ペット診断所・山川晃平院長は「確定させられるのは性成熟してたときというのが結構ある。メスと確定させるって難しくてただ(生殖器が)見えてないだけでオスかもしれないなと思いながら、メスとなったりとか。取り間違えが起きるとしたらそこかなと思います」と話している。 

今回のカバの場合、性成熟が遅く、その分体格も大きくなるため、目視や触診などでの性別判定は危険が伴う。

一方で、オス・メスを判定する重要性について、山川院長は「オスだったら縄張りをしっかり守らなきゃという意識から攻撃的になったり、メスについてはすごく神経質になっているということが結構ある。一番起こりえるのは飼育員さんがけがをする。場合によっては死亡事故につながるということもあると思います」と話す。

正しくオス・メスを判定することがトラブル防止につながるとしている。

繁殖を視野にゲンちゃん輸入も…若いオスのカバが不在に

性別が一転したカバのゲンちゃんは、5歳の時にメキシコからきて、7年間、オスとして過ごしてきたが、メスだったということで、名前を変更するのだろうか。

確認したところ、名前は「ゲン」ちゃんのまま変わらず、オスとメスで飼育方法も変わることはないという。

天王寺動物園にはゲンちゃんの他にも、オスの「テツオ(40)」とメスの「ティーナ(25)」という2頭のカバがいる。

オスの「テツオ」が高齢ということもあり、将来的な繁殖を視野に入れて、メスの「ティーナ」の相手を探していた中で、メキシコから「ゲンちゃん」を輸入してきたが、ゲンちゃんがメスだったということで、若いオスのカバが不在になってしまうことが問題となっている。

今回、「ゲンちゃんはメスでは?」と気付くきっかけはなんだったのだろうか。

もともと、メキシコから来た時にオスだと説明され、証明書にも「オス」と書いてあったので、全く疑わなかった。

ただ、成熟期を迎える10歳頃にオス特有の、縄張りを主張するためにフンをまき散らす行為やメスに求愛する鳴き声を出す姿などが見られなかったため、担当飼育員が「あれ?」と疑念が抱き、外部の調査機関にDNA鑑定を依頼したところ、メスと判明した。

ちなみに、成熟しても性別がはっきりしない動物もおり、ナマケモノは、そもそも外見ではなかなか判断が出来ず、DNA鑑定をしないと性別が分からないとされている。

ゲンちゃんは、引き続き天王寺動物園で飼育されるという。
(「イット!」 4月25日放送より)

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