この円安の中、福岡県議会の主要会派の代表らが南アフリカなどへ海外視察に行っていたことが判明した。税金でまかなわれる海外視察が急きょ行われた理由とは…。

海外視察の費用は10人で2000万円前後か

鑓水航記者リポート:
県議一行が大きなスーツケースを持って、到着口から出て来ました

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2024年4月19日。関西国際空港国際線の到着ロビーに現れた団体。海外視察を終えた福岡県議会の議員たちだ。

自民党所属で当選4回の県議会議長、香原勝司県議(52)。自民党県議団会長で当選7回の松尾統章県議(51)。民主県政県議団の会長で当選6回の岩元一儀県議(64)。新政会の会長で当選4回の椛島徳博県議(67)。そして自民党福岡県連会長で当選7回の原口剣生県議(69)だ。

自民党福岡県連会長・原口剣生県議
自民党福岡県連会長・原口剣生県議

「原口さん、福岡のテレビ西日本ですが…」と記者が直撃。すると原口県議は「ちょっと疲れとるけん」と、カメラを避けるようにして足早に立ち去る。

原口県議が「疲れている」と口にするのもそのはず、県議一行は6泊9日の強行スケジュールで海外視察を終えたばかりだった。その行き先とは、ナイロビ(ケニア)、ドバイ(UAE=アラブ首長国連邦)、そしてケープタウン(南アフリカ共和国)。

議会事務局などによると、この海外視察には県議会の主要会派の代表ら県議5人と県職員5人に加え、自民党を中心とした県議が少なくとも5人が同行したとみられている。彼らがアフリカや中東に海外視察に行った理由とは…。

自民党県議団・蔵内勇夫県議(70)
自民党県議団・蔵内勇夫県議(70)

蔵内勇夫県議(2024年3月15日 世界獣医師会会長内定報告会):
世界獣医師会会長選挙に勝つことができました

当選10回を誇り、「県議会のドン」とも言われる蔵内勇夫県議(70)。日本獣医師会会長でアジア獣医師会連合会長を務める蔵内県議は3月、日本人で初めて世界獣医師会の次期会長に選ばれた。そして4月16日、日本から1万km以上離れた南アフリカのケープタウンで開催される世界獣医師会の大会に出席することになり、県議たちもこの大会に出席するため、今回の海外視察が組まれたのだ。

海外視察6泊9日、強行スケジュールの日程
海外視察6泊9日、強行スケジュールの日程

議会事務局によると視察団が日本を出発したのは4月11日、中東、カタールのドーハを経由してアフリカ、ケニアのナイロビに入り、国連ハビタット本部を視察。当時、ナイロビの一部地域について外務省が不要不急の渡航中止を求めるレベル2となっていたため、宿泊せずに中東、UAEのドバイに移動したという。

視察団はドバイに2泊3日で滞在したが視察先などは不明、15日に南アフリカのケープタウンに入ると翌16日に世界獣医師会大会の開会式に出席。17日に現地で開かれたサミットや在日領事館を訪れると、18日にケープタウンを離れ、ドーハ経由で関西国際空港に戻ったという。

県議会の各会派の代表ら5人と県職員5人の少なくとも10人については公費負担、つまり税金で費用がまかなわれる見通しだが、蔵内県議の世界獣医師会次期会長への就任が決まったのが予算編成の後だったため、当初予算には含まれていない。
(その後、原口県議については公費支出を辞退し、自費参加となっている)

番組が依頼した旅行代理店の試算では、1人あたりの費用は1人180万円~230万円に
番組が依頼した旅行代理店の試算では、1人あたりの費用は1人180万円~230万円に

番組独自に旅行代理店に試算を依頼したところ、エコノミークラスを利用し、ホテル代や食事代、現地のガイドの費用なども含めると、何と1人180万円から230万円。10人で計算すると2,000万円前後にのぼる。

街の人からの声は…
街の人からの声は…

この海外視察について、街の人たちからは「めちゃくちゃ税金の無駄遣いだと思う。税金でしょ?県民に説明する義務がある(無職・59歳男性)」、「頑張って仕事して税金を払っているのに、自分たちだけみたいな感じ(主婦・22歳)」、「対費用対効果がどれだけあるのかわからないが、福岡のためにこれがどういうふうになっていくのかというのは、説明が聞きたいというような内容ですね(美容コンサルタント・65歳男性)」と、一様に不信の声が聞かれた。

帰国後の議員を直撃すると…

今回の海外視察、どれだけの収穫があったのか。帰国した議員たちを直撃すると…。

自民党福岡県連会長・原口剣生県議
自民党福岡県連会長・原口剣生県議

■県議直撃(関西国際空港4月19日)
記者「こんにちは、原口さん福岡のテレビ西日本ですが…」
原口県議「ちょっと疲れとるけん」
記者「ひとつだけ聞いてもいいですか?原口さん、ひとつだけ…」
原口県議「…(無言)」

原口県議は、足を止めない。記者は追いかけるようにして後を追う。

記者「原口さん、ひとつだけ…」
原口県議「また、あとで」
記者「『あとで』は、いつになるんですか?」
原口県議「わかりません。20時間、飛行機に乗って来てるけん、疲れとるけん」
記者「南アフリカはどうでしたか?」
原口県議「…(無言)」
記者「今回の視察でどういうことを得られましたか?いかがでしたか?」
原口県議「…(無言)」

記者「どういうことを得られましたか?」
香原県議「ちゃんと議長室でまとめて対応しますので」
原口県議「ちゃんとするから」
香原県議「個別の取材は勘弁していただけますか?」
記者「今回の視察がどうだったか?だけですが…」
原口県議「頭が、ぼーっとしているから、ごめんなさい」
記者「いま、円安が進んでいるが、円安の影響を感じることは?」
原口県議「『まとめてやる』って言いよるやん」

記者「飛行機はエコノミー、ビジネスどちらですか?」
香原県議「それも踏まえて、全部まとめて出させていただきますので、よろしくお願いします」
記者「ドバイの2泊3日は、あまりスケジュールがはっきりしてなかったようですが…」
香原県議「だけん、しっかり報告書を出しますから」

記者「ドバイの3日間はどういう時間だった?」
香原県議「乗り継ぎもあったが、基本的に視察はしている」
記者「必要な海外視察か?」
香原県議「そうですね、そういう意味では、福岡県では感じえない経験をさせていただけるということで、私は必要だと思います」

記者「どれだけ費用がかさんでも必要?」
香原県議「費用ということより、成果を上げていくことが大事だと思いますので」

テレビ西日本が空港で直撃した時点では、現地での具体的な視察内容や視察の成果については明らかにされなかった。ただ今後、何らかの形で報告される
ということなのでその内容に注目したい。

専門家は「十数人というのは多すぎる」

今回の海外視察を、地方自治の専門家はどう見ているのか。

名城大学・昇秀樹教授:
議員の海外出張そのものは否定するものではないが、十数人というのは多すぎると思う。予算の根拠なしに行ってしまうというのは、そもそも議会というのはその予算制度から生まれているのに、議会自らそれを無視する、軽視するというのは極めて不適当

予算の問題に加えて、名城大学の昇教授が指摘したのは「ドバイでの3日間の位置づけ」で、「ドバイでどう過ごすのか、何を学ぶのかを視察前に明らかにしたうえで、帰国後に改めて県民に成果を報告するのが当然の手続き」と話す。

また、福岡県の服部誠太郎知事は4月23日の会見で「出張の成果を公表することが必要」という考えを示した。

いずれにせよコストに見合った視察、そして県民への透明性のある説明は、今後欠かせない。

(テレビ西日本)

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